第2話 挨拶

 俺は普段どうり、萌えラノベを猫背で読みながら猫目を細めてラノベを読む。


 そして一花はなぜか俺の隣で歩く。


 「あのう……」


 「なに」と冷たげな眼で見る一花。


 『猫八様の声、今日も渋くてかっこいいですわ。んひぃ♡』という心の声。


 「どうして俺の隣を歩いているのでしょうか、他のファンクラブからの視線が痛い」


 「…………別に私の勝手でしょ」


 「それもそうですけど」


 『もう、私はあなたのファンですのに、私のファンなんてどうでもいいじゃない、ぷんぷん』


 「ぷんぷんって、子供っぽいなおい」


 「!?」と彼女は驚く。


 『どうして、私の心の声が聞こえたとでもいうの?』


 あっやべ。思わず心の声を復唱してしまった。


 「このラノベのヒロインはないな」


 『なんだ、本の話でしたの、よかったぁ』


 といいつつ彼女はふんすといって前を向く。


 凛々しくスタイルの良い体を見るわけにもいかないので、そのまま特にこれという会話もなく、過ごした。


 まぁ途中で、『どうして、このわたくしに話しかけないのですかぁあああああああああ!?』って言っていたけど。


 いやあなたと私、共通の話題ないじゃないですか。


 『次こそは、猫八様の御心をわしづかみにしてやりますわ」


 学校の校門前でものすごい真顔でそんなことを決意すんなよ、怖いよ。


 そしてやっと俺は教室の自分の席に座る。


 俺に片思いの彼女の心の声が聞こえるから誰か、助けてほしい。


 そう切実に思ったのである。


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