その美しさに意味はない3
「ん…?」
気がつけば、知らない街にいた。
まわりを見渡すと、見覚えがあった。
「ここは、ハルトくんのいた○○市だ…!」
なぜ、ここに来たのだろう。
どうしようもないが、なんとなく△山へ向かった方が良い気がしたので向かった。
♡
△山にて
「あれ、普通にある。」
前来た時は突然現れた△山がしっかり目の前にあった。
「これは夢か?」
「…多分夢だな!!」
自分の中で夢だと確定した。なので、山の中へ入っていった。
しばらく歩いて、神社が見えてきた。
少年が居る。
小学校低学年だろうか。
「なあ、君はどうしたんだ?」
何も言わないではいられず、つい声をかけた。
「おねえさん、だあれ?」
かなりイケメンになりそうな少年だった。
「わたしか?わたしは…」
ここで、本名を告げるのはダメだと本能が言った。
「…闇子だよ」
「…?このへんのひとなの?」
「いや、かなり遠いところから来た。」
「ふうん。ここ、あまりこないほうがいいよ。おねえさん、みえるんでしょ?」
「っは?!なぜ、それを?!」
「だって、ぼくもおなじだもん!」
そう言って少年は笑った。
その笑顔は、ハルトくんに似ていた。
「…そうなのか…!!」
「でも、君は大丈夫なのか?」
「…ここにいなきゃだめなんだ。」
「ぼくはこの力をこの神社の神に捧げられたから。」
なんてことだ!!あの神官は人の力をそんなことに使っていたのか!!!
でも、気づいた。
ハルトくんの力だけを神に捧げることにしたのか。
そう考えると、あの神官にも人の心はあったのだろう。
「くっ…でもわたしは…君を、救いたい…」
「ダメだよ。まだ」
「おねえさんが救うべきなのは、この時代のぼくじゃないでしょ?」
「え…?君はやっぱり…」
「しー。秘密だよ。」
「でも、もうわかるでしょ?おねえさんがするべきことは。」
心は決まった。
「ああ。ありがとう」
『ハルトくん』
♡
目の前が発光した。
また別の場所に移動したようだ。
真っ白い空間で、わたしと神官しかいない。
それを認識してすぐに口から言葉を発した。
「『成仏しろ!!!!』」
「ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
神官が消えていくのと同時に、自分の何かも失われていくのがわかった。
死ぬのだろうか、でも、いいや。ハルトくんを救えるなら。わたしは、ハルトくんのことを考えながら、意識を失おうとしたが、
「闇音ちゃん!!」
「ハルト…くん…?!」
たしかに聞こえたハルトくんの声。
もしかしたら、ハルトくんが目覚めたのかもしれない。
ハルトくんの声に集中する。
すると、段々真っ白な背景が病院に戻っていった。
横には、眠る、ハルトくんが。
「ハルト…くんっ。ハルトくん!!!」
声をかけたが、起きない。でも、確かに生きていた。先程までに比べてかなり顔色がいい。
「よかった…!!!!!」
しかし、ある事に気がついた。
右目が見えないのだ。
「あ…」
やっぱり、力を使った代償だろう。死に比べればだいぶ軽いものだが。
「…神と戦っても勝てそうだな、わたし。」
ぼそっと呟く。
ありえないが、ありそうな話だ。
♡
あの事件から1週間。
ハルトくんはまだ目覚めない。
医者によると、精神的なものらしい。
「ハルトくん…わたしのこと、やっぱり、もう…」
部屋に塞ぎ込んでいると、ハルトくんからのあの時の手紙が見えた。
よく見てみると、なにかが封筒に入っている。
「なんだろう…?!」
開けてみた。
「…これは!!」
「わたしが無くしたはずの、ものだ。」
「なんで、ハルトくんからの手紙に?」
メッセージカードも入っていた。
『ごめんね。闇音ちゃん。実は闇音ちゃんをいじめてた人達から奪い返していたんだけど、返すタイミングを失ってたんだ。』
『少しずつ返してはいたんだけど、限界みたいだから、この手紙の中にいれるね。バイバイ。ハルトより』
すべてが、一致した。
あの時の、何故か叶った願い事はハルトくんのおかげだったのだ。
「ハルトくん…ありがとう…」
「わたし、決めた。ハルトくんに会いに行く!」
♡
「ハルトくん!!!」
病院に行った。
ハルトくんは、まだ眠っていた。
「ハルトくん、起きて…」
声をかけるが、やはり反応は無い。
ふとキスをしてみたらどうなるのだろうと思い、ハルトくんに近づく。
まるで、おとぎ話のようだ。
そして、そっとキスをした。
すると、ハルトくんの瞼が開いた。
「…おはよう、闇音ちゃん。」
「ハルトくん…っ!!!」
泣いてしまった。
「わたし、ハルトくんと、まだ、一緒に居てもいい…???」
「…うん。…ぼくも、まだ、闇音ちゃんと一緒にいたい。」
そして、わたし達はお互いを抱きしめあった。
しばらくそうしていたのだが、ハルトくんはそっと言った。
「ねえ、闇音ちゃん。」
「なんだ…?」
「ぼくが退院したら、ある所に行きたいな。」
♡
ハルトくんはあれから数日で退院した。とても頑張ったらしい。
でも、旅行に行けたのは、数ヶ月後だった。神官を弔ったりと忙しかったのだ。
連れていかれたのは、この町1番の観光スポットと言われている場所だった。
「ハルトくん!!ここって…?」
「ここは、夜景で有名な山だよ。星空も見えて、人気なんだ。」
「どうして、ここに?」
「闇音ちゃん、ぼくが目覚めてから、ずっと気にしてたでしょ?」
「ぼく、知ってるんだ。闇音ちゃんの右目がもう見えてないことも。」
「それに、もう幽霊も見えてないんでしょ?」
「夜を怖がってたのに、今は怖がってないから…」
ハルトくんは、わたしのことをそんなに知っていたのか。
嬉しくて泣きそうだった。
「だから、闇音ちゃんにこの景色ーーぼくが好きな、この景色を見て欲しかったんだ」
そう言われながら、夜景のベストスポットへと向かう。
それまでの道で、わたし達はこれまでの話をした。
お互いに知らなかったことも多かった。
でも、やっぱり、ハルトくんは最高だ。
そうしているうちに山頂に着いた。周りには人があまり居ない。きっと時期的なものだろう。
でも、わたしと彼はできるだけ近付いた。
手を握りながら。
そして前を見ようとすると、ハルトくんに目隠しをされた。
「ほら、闇音ちゃん、」
目隠しを外された。そして、彼は言う。
「綺麗でしょ?この景色。」
そっと目を開け、手を引かれながら、夜景を見た。
「わあ…!!!!」
しばらく、こんな景色は見ていなかった気がする。
力を使って引っ越してからはいじめられ、ハルトくんに出会い、彼の恋人になり、彼の命を救い、力を失った。言葉にすれば、それだけだが、そのことがわたしには負担だったのだろう。でも、今はもう違う。
「ハルトくん、綺麗だな…」
「そうでしょ?」
「よかった。闇音ちゃんも気に入ってくれて。」
夜景もいいが、そう言って笑うハルトくんも綺麗だった。
「ああ…本当に、綺麗だな」
この美しさにきっとーー
意味は、無い。
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