その美しさに意味はない3

「ん…?」


気がつけば、知らない街にいた。


まわりを見渡すと、見覚えがあった。


「ここは、ハルトくんのいた○○市だ…!」



なぜ、ここに来たのだろう。


どうしようもないが、なんとなく△山へ向かった方が良い気がしたので向かった。


△山にて


「あれ、普通にある。」


前来た時は突然現れた△山がしっかり目の前にあった。


「これは夢か?」


「…多分夢だな!!」



自分の中で夢だと確定した。なので、山の中へ入っていった。



しばらく歩いて、神社が見えてきた。


少年が居る。


小学校低学年だろうか。



「なあ、君はどうしたんだ?」

何も言わないではいられず、つい声をかけた。


「おねえさん、だあれ?」


かなりイケメンになりそうな少年だった。


「わたしか?わたしは…」


ここで、本名を告げるのはダメだと本能が言った。


「…闇子だよ」


「…?このへんのひとなの?」



「いや、かなり遠いところから来た。」


「ふうん。ここ、あまりこないほうがいいよ。おねえさん、みえるんでしょ?」


「っは?!なぜ、それを?!」


「だって、ぼくもおなじだもん!」


そう言って少年は笑った。


その笑顔は、ハルトくんに似ていた。



「…そうなのか…!!」



「でも、君は大丈夫なのか?」



「…ここにいなきゃだめなんだ。」

「ぼくはこの力をこの神社の神に捧げられたから。」



なんてことだ!!あの神官は人の力をそんなことに使っていたのか!!!

でも、気づいた。

ハルトくんの力だけを神に捧げることにしたのか。

そう考えると、あの神官にも人の心はあったのだろう。


「くっ…でもわたしは…君を、救いたい…」


「ダメだよ。まだ」


「おねえさんが救うべきなのは、この時代のぼくじゃないでしょ?」


「え…?君はやっぱり…」


「しー。秘密だよ。」

「でも、もうわかるでしょ?おねえさんがするべきことは。」



心は決まった。


「ああ。ありがとう」



『ハルトくん』



目の前が発光した。


また別の場所に移動したようだ。


真っ白い空間で、わたしと神官しかいない。


それを認識してすぐに口から言葉を発した。


「『成仏しろ!!!!』」


「ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


神官が消えていくのと同時に、自分の何かも失われていくのがわかった。

死ぬのだろうか、でも、いいや。ハルトくんを救えるなら。わたしは、ハルトくんのことを考えながら、意識を失おうとしたが、


「闇音ちゃん!!」


「ハルト…くん…?!」


たしかに聞こえたハルトくんの声。


もしかしたら、ハルトくんが目覚めたのかもしれない。


ハルトくんの声に集中する。


すると、段々真っ白な背景が病院に戻っていった。



横には、眠る、ハルトくんが。




「ハルト…くんっ。ハルトくん!!!」


声をかけたが、起きない。でも、確かに生きていた。先程までに比べてかなり顔色がいい。


「よかった…!!!!!」


しかし、ある事に気がついた。


右目が見えないのだ。



「あ…」


やっぱり、力を使った代償だろう。死に比べればだいぶ軽いものだが。


「…神と戦っても勝てそうだな、わたし。」

ぼそっと呟く。

ありえないが、ありそうな話だ。



あの事件から1週間。


ハルトくんはまだ目覚めない。


医者によると、精神的なものらしい。



「ハルトくん…わたしのこと、やっぱり、もう…」


部屋に塞ぎ込んでいると、ハルトくんからのあの時の手紙が見えた。

よく見てみると、なにかが封筒に入っている。



「なんだろう…?!」


開けてみた。


「…これは!!」


「わたしが無くしたはずの、ものだ。」


「なんで、ハルトくんからの手紙に?」



メッセージカードも入っていた。


『ごめんね。闇音ちゃん。実は闇音ちゃんをいじめてた人達から奪い返していたんだけど、返すタイミングを失ってたんだ。』

『少しずつ返してはいたんだけど、限界みたいだから、この手紙の中にいれるね。バイバイ。ハルトより』



すべてが、一致した。


あの時の、何故か叶った願い事はハルトくんのおかげだったのだ。



「ハルトくん…ありがとう…」

「わたし、決めた。ハルトくんに会いに行く!」


「ハルトくん!!!」


病院に行った。



ハルトくんは、まだ眠っていた。


「ハルトくん、起きて…」

声をかけるが、やはり反応は無い。

ふとキスをしてみたらどうなるのだろうと思い、ハルトくんに近づく。

まるで、おとぎ話のようだ。


そして、そっとキスをした。


すると、ハルトくんの瞼が開いた。



「…おはよう、闇音ちゃん。」



「ハルトくん…っ!!!」


泣いてしまった。


「わたし、ハルトくんと、まだ、一緒に居てもいい…???」


「…うん。…ぼくも、まだ、闇音ちゃんと一緒にいたい。」


そして、わたし達はお互いを抱きしめあった。

しばらくそうしていたのだが、ハルトくんはそっと言った。


「ねえ、闇音ちゃん。」


「なんだ…?」


「ぼくが退院したら、ある所に行きたいな。」




ハルトくんはあれから数日で退院した。とても頑張ったらしい。


でも、旅行に行けたのは、数ヶ月後だった。神官を弔ったりと忙しかったのだ。


連れていかれたのは、この町1番の観光スポットと言われている場所だった。



「ハルトくん!!ここって…?」


「ここは、夜景で有名な山だよ。星空も見えて、人気なんだ。」



「どうして、ここに?」



「闇音ちゃん、ぼくが目覚めてから、ずっと気にしてたでしょ?」

「ぼく、知ってるんだ。闇音ちゃんの右目がもう見えてないことも。」

「それに、もう幽霊も見えてないんでしょ?」

「夜を怖がってたのに、今は怖がってないから…」



ハルトくんは、わたしのことをそんなに知っていたのか。

嬉しくて泣きそうだった。



「だから、闇音ちゃんにこの景色ーーぼくが好きな、この景色を見て欲しかったんだ」



そう言われながら、夜景のベストスポットへと向かう。


それまでの道で、わたし達はこれまでの話をした。

お互いに知らなかったことも多かった。

でも、やっぱり、ハルトくんは最高だ。


そうしているうちに山頂に着いた。周りには人があまり居ない。きっと時期的なものだろう。

でも、わたしと彼はできるだけ近付いた。

手を握りながら。


そして前を見ようとすると、ハルトくんに目隠しをされた。


「ほら、闇音ちゃん、」


目隠しを外された。そして、彼は言う。


「綺麗でしょ?この景色。」



そっと目を開け、手を引かれながら、夜景を見た。



「わあ…!!!!」


しばらく、こんな景色は見ていなかった気がする。


力を使って引っ越してからはいじめられ、ハルトくんに出会い、彼の恋人になり、彼の命を救い、力を失った。言葉にすれば、それだけだが、そのことがわたしには負担だったのだろう。でも、今はもう違う。



「ハルトくん、綺麗だな…」


「そうでしょ?」

「よかった。闇音ちゃんも気に入ってくれて。」



夜景もいいが、そう言って笑うハルトくんも綺麗だった。


「ああ…本当に、綺麗だな」


この美しさにきっとーー



意味は、無い。

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