その美しさに意味はない2

気がついたら、自分の部屋にいた。


服もパジャマだし、特に部屋が荒れている様子はない。


「あれ?昨日のは…夢…?」


そう思ったが、机の上をみると、昨日渡された手紙が置いてあった。


「…夢じゃない」


手に取って厚さを確かめた。


かなりの厚みがある。


ガサガサ


「なにが、書かれているんだ?」


『闇音ちゃんへ

この手紙を読んでいるってことは、無事に△山に来てくれたんだね。

まず、なんで△山だったのかを説明するよ。

△山はね、ぼくが捨てられていた山なんだ。

昔、△山の神社に捨てられていたぼくはその頃の神官さんに助けられて、その親戚のところでお世話になっていたんだ。

闇音ちゃんは突然△山に来たように思ったよね。△山はね、じつは10年前に土砂崩れでなくなってしまったんだ。そして、神官さんも一緒に亡くなってしまった。ぼくはその時とても悲しかったんだ。ぼくにとっての人生の始まりの場所で、思い出の場所がなくなってしまったから。でも、その時はそれだけだったんだ。そのあと、ぼくは2つ隣の街に引っ越すことになったから。

でも、闇音ちゃんと出会って、心がやっと落ち着いて、久しぶりに○○市に戻ろうって思った。

そうして、久しぶりに戻った○○市は何も変わってなかった。不自然なくらいに。

不思議に思ったぼくは、△山のあった場所に行ったんだ。

そしたら、あったんだ。

△山が。

あまりに驚いて、腰が抜けたよ。でも、あまりに懐かしくて、つい、△山に入ってしまったんだ。神官さんにはいつも、不自然だと思うことは無視をしろ、って言われてたのにね。

そうして入って神社へ向かったんだ。そしたらさ、あったんだよ。神社が。でも、神官さんはいなかった。

あ、これ、やばいやつだってその時やっと思った。

でももう手遅れだったよ。

簡単に言えば、悪霊に取り憑かれた。

で、いま死にかけてる。

でも、闇音ちゃん、君のその、右目は…いや、なんでもないよ。でも、もし助けてくれるなら、闇音ちゃんしかいない。これだけは、本当だ。』



「ハルトくん…1人でずっと悩んで…?」


「わたし、ハルトくんのこと何も知らなかった…!」


「ごめんはこっちのほうだよ、ハルトくん。」



「でも、まだハルトくんの所には行けないな。」

「その前にこれ、をどうにかしてくる、から」


そう言ってわたしは右目の眼帯に触れた。



引っ越してくる前にわたしは、この右目の力を使って人を傷つけてしまったことがある。

いや、それのせいで引っ越すことになってしまったのだ。


親友だった友達がある日、肝試しに行ったのだ。そして、わたしも、連れていかれた。


そしたら、そのお墓には、本当に幽霊がいたのだ。


別に、そこまで悪い霊ではなかったのだが、わたしのこの右目のせいで、悪霊になってしまった。


そして、幽霊の見えていない友達が体を乗っ取られてしまった。わたしのことを殺すためだろう。


『や、やめてくれ!!』

『コロ…ス』

『な、なあ、なんで…こんなことに…!!!』


でも、わたしは気づいた。悪霊にできるなら、普通にも戻せるのではないか、と。


それは、上手くいったのだが、遅かった。


友達は、記憶をもっていたので、わたし達の関係は拗れてしまった。そしてわたしは右目を封印したのだ。



でも、ハルトくんのためなら…。



わたしは、ハルトくんに嫌われても救いたい。




こんな醜い姿見せたくないなあ。





ごめんね。







母から言われたのは、『この眼帯を外すのは力を使う時だけ。でも、やってはいけないわよ』


ごめん、ママ。約束、破るね。


そうして、病院へ向かおうとする。


でも、その前に、ママへ書き置きをした。

『探さなくていいよ。ごめんね。闇音より。』


ペンを置き、外へ走り出した。まるで、事故にあった時みたいだった。





「…っ…ハルト…くん!!!」



病室に入ると、ハルトくんは死んでいるようだった。いや、死んでいるのかもしれない。


悪霊に取り憑かれたということは、もう、彼の精神は、ほとんど死んだようなものだ。



覚悟していたのに、余りの生々しさに涙が落ちた。


「ハルトくん…」



寒気がしたので振り向くと、悪霊がいた。昼間なのに、出てこれるとは、余程の未練か生前は霊に関係する仕事をしていたのだろう。


ん?


ハルトくんと関わりがあって、霊関連の仕事??




もしかして、





この悪霊は、







神官さんではないか?!





「っ神官さんか…?」



『ナンダオマエハ…ハルトニチカヅクナ…』



やはり神官だった!!!!!


「無理だな!!なんて言ったってわたしはハルトくんの…」


言うのをやめてしまった。


わたしはまだハルトくんの彼女なのだろうか?



ダメなのではないか?



こんなわたしじゃ…


自信を失い、地面を見る。


でも、

「闇音…ちゃん……好き…だ…よ…」


ボソボソと聞こえたハルトくんの声。


「ハルト、くん。今はまだ彼女で、居させてくれ…」



「わたしは、ハルトくんのためならなんでもできる!!!愛してるハルトくん!!!!!」


そう言って、眼帯を外そうとしたのだが、悪霊によって止められた。



『ハルトハ…アノジコデシンデイル…』


「はっ?そんなことはないだろう!!だって、目の前にいる!!」


でも、もし、ハルトくんが死んでいるとしたら?


それなら、周りの反応も理解出来る。



でも、わたしは、ハルトくんと一緒にいた時間を嘘だとは思わない!!!



「ハルトくんは、生きてる!わたしが証明だ!!!」

「なんで、お前は、ハルトくんに取り付いた?!」



『ハルトハステラレタノデハナイ、カミニササゲラレタノダ』



「…は?」


『ソレヲワタシガカッテソダテタ…ソシタラカミノイカリニフレタノダワタシハハルトノセイデシンダ…』



「だから、取り憑いたのか?自分勝手な理由で??」



「最低だ…!!!」

「ハルトくんは、お前のものじゃない!!!!」



ハルトくんが尊敬していた人がこんな人だったなんて、ハルトくんがあまりにも可哀想だ!!!!!




目の前の悪霊に妨害されるが、気力で眼帯を外した。


そして、わたしは言った。





「バイバイ、みんな」



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