最終話 これが我々のユートピア!

_____三本のナイフは、ラムネ達をかするどころか、うわの空へと飛んで行った。


 「おやおや、どうしたわけ。」


 「どーした、調子でも狂ったか?ヒラノねーちゃん!」


 「どういうこと……?」


 困惑する三人を見て、ヒラノはくすっ、と笑いながら語る。


 「もう、ネ。アンタ達の熱意には負けた。ってワケさ。」

 「望み通り、2021年の世界を返してアゲル。」


 そう言い、ヒラノは大きな時計を懐からだす。


 「ラムネ、ネム、あんみた。そして付き添いのお二人さん。」

 「さぁ、手を取っテ。少し揺れるから酔わないように、ネ。」


_____


 「シズたちは、またいつかおまえたちと合うですよ」


 「あの子を成仏させてくれたこと、感謝致しますわ」


 「その……現実を……受け止めて、ありがとうですぅ……」


_____


 時空は歪み、空も大きくズレる。

 当然、ヒラノのの作った結界はガラスのようにわれる。


 「うっ……凄い揺れ……俺ゲロ吐きそう……。」


 「時空を飛び越えるって……こんなハイリスクなことなのね……。」


 「アハ……悪い戦いじゃなかったよ。ヒラノ・チューナ。」


 揺れと歪みが治まる。

 そう、帰ってきたのだ。

 「2021年の世界」へ、と。


_____


 「いやぁ……こんなにも世界って変わるんだネ、7年間の間デ。」


 「あん?もしかしてヒラノねーちゃん、2021年を知らねーの?」


 「そうともさ。ボクはずっと向こうの時空に潜んでいたからネ。」


 そう雑談していたら、ヒラノの身体が透けてゆく。


 「おや、ちょっとばかり魔力を使いすぎてしまったみたいだネ。」


 「ちょちょ!?せっかく和解した訳なのに、お別れなわけ!?」


 ラムネは寂しそうな顔をして言った。

 それもそうだ、やっと己の感情と和解できたのに、ここでお別れだなんて、寂しすぎるから。


 「アハ、ボクの本体サン。ちょっと向こうに戻って回復すればまた来るさ……。」

 「それ、じゃ……」

 「ある……じゃあ……のん!」


 ヒラノはそう言うと、霧のように身体が消え2014年の世界へと戻った。


 「わたし……もうちょっとお話したかったな……」


 「俺も、少し心寂しいよな」


 「わかる。結構良い奴だったわけ」


 そんな雑談をしていると、雲の隙間から声が聞こえた気がした。


_____


 またいつか会えるから、サ。

 そう感傷に浸らないでほしいネ。


_____


 それから役一年、ラムネラジオ達は新たな居場所を見つけた。

 ギルド「ケーキ屋”シャルドーネ”」。


 「……って話が、去年あったわけ。」


 「そんなことがあったんだぜ!俺たち頑張ったんだぞー!」


 「ふふっ、今では笑い話ね〜」


 シャルドーネのメンツは、またまたご冗談を。という表情で話を聞いていた。

 しかし、どこかその表情には”確かに”と事実を受け入れてる感じはあった。


_____改めて、あるじゃあのん!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぽーちどえっぐ! ノア @noa_zarusoba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ