第7話 グダグダしてんじゃねぇ!

 ネムは、意気揚々とこう語り出す。


 「じゃあさ、俺たちで”ひらのちゅーな”の頭ぶっ叩いて、目ェ覚まさせてやろうぜ!」


 「んー、あっちは現実見てる顔してるし、夢見てるとはどっちかと言うとボクたちな気もするけど……」

 「まぁ、賛同。ってわけ。」


 そう言い、ラムネとネムは合意した。

 あとは、あんみたのためにもヒラノを、そして創世軍団をとっちめるだけだ。


 真っ先に動き出したのはラムネとネムだ。


 「ぅおーい!ヒラノチューナ!」


 「ボクたちと一戦構えろなわけ!」


 好戦的な二人に対し、ヒラノは飄々としながらこう答える。


 「アハ、ユートピアにご不満でモ?」

 「まぁいいサ。話は聞いてあげるヨ。」


 「ボクたちと戦って、ボクたちが勝ったら2021年に戻してほしいわけ!」


 「そうだぞー!ヒラノ!俺たちを元の世界へと戻せ!」


 「ふぅん……?まぁ、オッケー。」

 「まぁ、とりあえず広いとこ行ってから殺し合おうネ。」


 そう言い、ヒラノは異空間を展開する。


 「”エニグマアリスワールド”!ボクのユートピアよ、ここに来たれ!」


 「ふぅん?態々丁寧に戦場を用意してくれるなんてわアンタ案外律儀じゃん?」


 そういい、三人は二対一で殺し合いを始めることにした。


_____


 「……。」


 「……あんみたちゃん。」


 「…………。」


 「聞こえてる?聞こえてたら頷いて。」


 ……こくり。あんみたは涙ぐみながらそっと頷く。

 未だに傷が癒えておらず、あんみたはすっかり塞ぎ込んでしまった。


 「その……あたしにさ、その創世軍団とか、あんみたちゃんの過去、話せる時に話してほしいな。」

 「できる限りは力になるから。」


 そんなロインの優しい言葉に、あんみたは泣きながら感謝をした。


 「ロイン……ちゃ……」

 「……ありがとう。」


_____


 ヒラノによって展開された異空間。

 殺意半分、勝気半分の二人。


 今、戦いの火蓋が切られようとしていた。


 その時。


 「待てやラジオ!」

 「ちょい、わいら四人で話ある。」


 光と闇の境目をこじ開けて異空間に入り込んだ一人の冒険者だ。

 そう、”樹箱”だ。


 「ちょい不法侵入失礼したけど、恐らくラジオとチビスケがヒラノ殺したところで2021年には戻らないで。」


 「は?俺はドカーンとやって頭冷やさせるだけだよ!」


 「やから、チビスケはその力加減分からへんから怖いんやて!」

 「だっておまい……」


 「かつて創世軍団を封印した英雄の末裔やで?」

 「そんなバカでかい力でヒラノぶっ叩いたら、ヒラノコキャッと殺られちゃうで。」


 「あ?俺がえいゆーのまつえい?どういうことだ?」

 「俺はただのコールドアイ狩りだぜ?」


 樹箱は、ふーむ?という顔をしながらこう呟いた。


 「もしかして……記憶飛んどる?」


_____覚醒したラムネ、自身の存在意義(レゾンデートル)を知ったネム。そして事実と少しずつ向き合おうとするあんみた。彼女らは、今も時空の中だ。

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