第5話-あんみた編 ただいま、偽りの家庭。

 あんみたは、少し怖い気持ちもあったものの地元へと翼を広げた。

 もしかしたら、本当に家族に会えるかもしれない。

 そんな気持ちいっぱいで。


_____


 『カランコロン』


 実家のドアのベルが鳴る。


 「あんみた〜遅いわよ。シチュー冷めちゃうわよ〜。」


 「あんみたは努力家なのはいいけど、遅く帰ってくるのは良くないぞー?」


 「ねーちゃん!待ってた!おかえり!」


 まさかの光景、夢に見た光景にあんみたは驚きと感動を覚え、涙を流す。


 「え……え……」

 「パパ……ママ……がとーくん……生きてたの……。」


 その様子に、あんみたの父はガハハと笑いながらこう語る。


 「生きてたも何も、俺たちはずっとここであんみたを待っていたんだぞー?」

 「創世の為の研究のために家を出てったのはあんみたじゃないか!不思議ちゃんだな〜」


 ここでこそこそとノレ姫はあんみたに問う。


 「そそそ、創世の研究……覚えてますよねぇ……?」


_____


 そうだ。私は世界をより良きものにする為に創世軍団に入って……

 そうだ、あの時上司からの命令で村ごと燃やしてしまったんだ。

 だから……だから……


 この光景、は


 『過去の光景で、偽りの現代だ。』


_____


 あんみたはプツン、と心の中で何かが切れた音がした。

 その瞬間、あんみたは泣き崩れる。


 「あああああああ!パパ!ママ!ごめんなさい……ごめんなさい……がとーくんも……巻き込んで……」

 「全て私が悪かったんだ……創世軍団なんて入るから……う、うっ……うぅ……」


 崩れ落ち、泣け叫ぶあんみた対しノレ姫は恐る恐る寄り添う。


 「ぁ、あんみた……さん……。」

 「あんみたさんは、何も、悪く……ないです……ぅ。」


 「でも……村を燃やしたのも……家族を殺めたのも……」

 「全部……思い出しちゃった……」

 「私が……死んで償いをしないと……」


 そんな所にやって来るのは”ヒラノ・チューナ”だ。


 「ハロウ・ホロウ・デーモン。だからいったダロウ?」

 「この”2014年”に居続けたら、家族ともまた過ごせるんダヨ。」


 その声は、今のあんみたには届かない。


 「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 「どうして……どうして……」


_____


 ノレ姫は、ヒラノにこう聞く。


 「あのぅ……本物の現代に家族を連れてくことって……その、できないんでしょうか……?」


 「フーム。興味深い。」

 「理論上は可能だケド、アダムのリンゴ。」


 「時間と運命のズレが発生し、最悪の場合世界ごと」


 そう言い、ヒラノは一つのティーカップを割った。


 「このティーカップみたいに粉々サ。」


 ノレ姫は、悲しい顔を浮かべながらこう言った。


 「それってつまり……」


  「そうダネ。あのピンク悪魔に現実を受け入れて貰うしかないんダヨ。」


_____あんみたに突きつけられたのは、残酷”すぎる”事実だった。

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