第5話-ネム編 闇が照らすお遊戯会

 「それでは、お遊戯会の始まりですわ!」


 こちむの掛け声と共にネム、ロイン、そして、少年は一気に構える。


 「先ずは此方から、”カオス・ザ・ダークネス”!」


 「うっ……眩しい……けど、逆に暗くて見えねぇ……なんだコイツ……」


 こちむの発した魔法で、ネムたちは”暗い光”を浴びる。

 周りが暗闇一色になり、こちむの姿は見えなくなった。


 そこに少年はやれやれ、という感じで薬を投げる。


 「ロイン!ネム!これを使え!」


 「ありがとう!この魔法の目薬、よく効くね!」


 「うおー!俺の視界も明るくなった!」


 三人の回復の速さにこちむは拍手をする。

 しかし、こちむの攻めは止まらない。


 「次はこれですわ!”ディメンションコラプス”!」


 部屋中に次元の狭間から照らされる閃光が満たされる。

 それはそれは、眩しい程に。


_____


 こちむの止まないお遊戯会。三人は早くも苦戦していた。

 しかし。

 そこに反撃を始めるのはネムだ。


 「うおー!俺もやってやるぜ!」


 ネムの叫び声に感化され、ロインも弓矢を構える。


 「遠距離なら任せて!」


 そして少年も、素早く動き協力する。


 「速さなら任せな!」


 こちむは、これでこそ!という満足気な顔で3人と戦う。


 ネムも、不思議なくらいには懐かしい気分になっていた。


_____


 『銀髪のお姉ちゃん、ここまで導いてくれて、ありがとう。』

 『わたし、そろそろ逝くね。』


_____


 次元の閃光、月の鉾、エルフの矢、盗賊の短剣。

 ぶつかり合いっ子し、パチパチパチと光る。


 そして_____


 「こ、これ以上は死んでしまいますの!」

 「貴方たちの勝ちですわ、お見事でしたの!」


 こちむはそう言い、白旗を挙げる。


 「導きの少年、これが成功報酬の”強化の書”ですわ。」

 「そして、ロイン、ネム。貴女達は全てを成し遂げましたの。」

 「”あの少女”はもう、成仏されましたわ。」


 そう言い、こちむは次元の向こうへと姿を暗ます。


 「そーいえば、戦ってる途中でなんか声聞こえたよーな……。」


 「その入れて、の女の子の声?」


 「ああ、なんか満足したからもう逝く的なこと言ってたぜ。」


_____


 その晩。

 ネムは、夢を見ていた。


 『銀髪のお姉ちゃん、ううん、ネムさん。』


 「あー?お前いつものやつじゃん。」


 『これで私は、天国へ行けます。ありがとうございました。』


 そう言い、茶髪の少女はさらさらさら、と光の粒子になって消える。


 「……なんだったんだろ。」


_____


 翌朝。


 「ぅ〜おはよぉ、あんみたねーちゃんにラムネねーちゃん……。」


 「遅いわけ、今日は来客も来てるんだし、ちゃんと時間通りに起きないと。」


 「へいへい……ってお前!?俺をガキだのバカにした奴じゃねーか!」


 「ハロウ・ホロウ・ヒーロー。久し振りだネ。」

 「2014年の世界は満足したデショ?」


 「あー?なんかこちむってやつと戦ってオワリだったぞ。」


 そのつっけんどんな応答に、マッドハッターはお茶を飲みながらこう答える。


 「ソウ、アレこそがアンタの求めていた”ユートピア”。即ちアンタの理想ってワ・ケ。」


 「まぁ……確かに正直楽しかったし、スッキリもしたな。」


 マッドハッターはそれで良い、という顔をし立ち去った。


 「それじゃあボクは訳あり悪魔のもとの偵察に行くので!」

 「あるじゃあのん!」


_____無意識、夢、ユートピア。なにを語ろっか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る