第5話-ラムネ編 だから言ったやろ

 「ヤレのヤレ。」

 「まぁでも……」


 そういい、ラムネは下を向きこう呟いた。


 「紫の天使に会えたのは良かったのかも。」


 その時。


 「す、すすすすみません……!」

 「そこの魔法使いさん……!」


_____


 そういい、小柄な少女がラムネのもとに来る。

 今まで髪を切った事が無さそうなくらいに、髪が長く、赤と青のオッドアイの少女だ。


 「さっき……お兄さん……雫を見ませんでしたか……?」


 「あー、アンタもしかしてあの雫ってヤツの家族?」


 「そうです、妹です……!」


 雫の妹、”氷雨”はおずおずとしながらこう語る。


 「すみません……先程は兄が暴走してしまって……。」

 「兄はお調子者で、すぐ暴走して、さっきも部下に対してハラスメントを行ってしまって……。」


 氷雨はワタワタしながら、兄のことを語る。

 どうやら、氷雨は雫の行動に相当悩まされているようだ。


 「なるほど?即ちアンタは、雫を止めて欲しいわけ?」


 「は、話が早くて助かります……!そういうことです……!」


 返事を受けたラムネは、快くその依頼を引き受けた。


 「おっけー。この天才聖魔ラムネ様に任せななわけ。」


 「ありがとうございます……!」


_____


 依頼を受諾した時、塔から一人の青年が出てきた。

 そう、さっきの”樹箱”だ。


 「また会ったな、アンタ。ラムネって名前だったか。」


 「そうだけど……厳密には”ラムネラジオ”だけど。」


_____


 樹箱はうーむ。と少し考えてからこう語る。


 「さっき、雫という魔族の青年に会ったよな?」

 「あれこそが、”おまいの理想”や。」


 ラムネは雫に会えたことが実は心底嬉しい事を見抜かれてドキッとした。


 「なんで……わかったわけ……。」


 「態度で見え見えやし、”ヒラノ”がそう仕向けたんや。」


 「はぁ、態度。そしてヒラノって誰なわけ。」


 ラムネは唐突に出てきた名前に困惑していた。

 ヒラノ?それは誰だ?そんな気持ちでいっぱいだ。


 「あの、不思議の国のアリスに出てきそうな格好のやつや。」

 「アイツが”ヒラノ・チューナ”……今の、2014年のメイプルワールドを呼び寄せたやつや。」


 「ふーん?アイツ自身はマッドハッターと呼べだの言ってた癖に、そんな名前があった訳。」


 「せや。それがヒラノのやり方やからな。」

 「それにしてもおまい。」


 樹箱はサングラスをちらっと外し、ラムネの顔をじっと見る。


 「おまい、ヒラノそっくりやなぁ。」

 「兄弟姉妹か?」


 「いや、ボクは一人っ子だけど……。」


 樹箱はふーん。と思いながら少し考える。


 「まぁ、せいぜいドッペルゲンガー現象には気ぃつけやな。」

 「おまいの場合。」


 「最悪の場合、死ぬかもしれへん。」


 唐突な言葉にラムネは驚愕していた。

 それもそうだ。いきなり”死ぬかも”なんて言われたら誰でも驚くだろう。


 「どういうわけ?」


 「ドッペルゲンガーと会うと死ぬって都市伝説あるやろ。」

 「早い話それや。」


 ラムネは不服ながらも少し納得した。

 そして、ヒラノの正体を調べよう。と決意した。


_____だから言ったじゃん?これがあんたのユートピアだ。って_____

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