第4話-あんみた編 悪夢の中で会った気がする

 「うふふ、人助けしちゃったわ〜。」

 「さて、調査に戻らないと〜。」


 そう呑気にあんみたは、鉱山へと羽ばたく。

 その時だった。


 あんみたの大きな翼に、紫の蝶の羽がかする。


 「あら、誰かしら〜?」


 「ひぅんっ!?」


_____


 蝶の羽の主は、おどおどとした表情であんみたを見る。


 「あ、あ、はわわわわ……。」

 「どうしよう……この人の夢の中ではしっかりしなきゃ行けないのに……!」


 そうおどおどしている少女に、あんみたは冷たい言葉を投げた。


 「そう、貴方だったのね。」

 「毎晩毎晩。わたしに悪夢を見せているの。」


 そう言われてしまった少女……”ノレ姫”は、びくびくしながらあんみたに平謝りする。


 「ごごご、ごめんなさい……!」

 「上の者からの命令だったんですぅ……!」


 「上の者?」


 「その、ノレは”ヒラノ”様の命令で、あんみたってあう悪魔さんに悪夢を見せて真実のユートピアへと導けって頼まれていたんです……!」


 あんみたはあまりにも情報量が多い事情に困惑が隠しきれない。


 「悪夢を見せてユートピア?ちょっと訳が分からないわ。」

 「そもそも、そのヒラノって人は誰?」


 困惑するあんみたに対し、ノレ姫はおどおどしながら説明を続ける。


 「あのぅ……先日、空がズレているのを実感しませんでしたか?」

 「アレをやったのが、その、ヒラノ様なんです。」


 あんみたは、ハッとした表情で何かを思い出したようだ。


_____


 「もしかして……そのヒラノって人……。」

 「不思議の国のアリスに出てくる、いかれ帽子屋みたいな格好した人?」


 ノレ姫は、驚きながら頷く。


 「あああぅ、あんみたさん、ヒラノ様に会ったんですか!?」


 「会ったも何も、よく分からないこと言われてこの世界は2014年になったー。だの……終始意味不明な事を言って去ったわよ。」


 「あぅ、ヒラノ様はそういう人なんですぅ……。」


 ノレ姫は、おどおどしながらも冷静さを取り戻してきたようだ。


 「ところであんみたさん。」


 「何かしら?」


 「貴方の家族、実は生きてるんですぅ……。」


 「ふぅん……。」


 「えっ?」


 ノレ姫は驚いているあんみたに、あたふたしながらも説明を続けた。


 「ヒラノ様が時間をズラした時に生き返った。が正しいですねぇ……。」

 「要するに、一度死んだけど生き返った。ってことです。」


 あんみたは、複雑な表情を浮かべる。

 確かに家は焼け、家族は死んだはずだ。

 なのに何故?何故時空がズレた時に生き返った?


 そもそも一度家族を殺したのは誰?

 あんみたに多数の疑問が押し寄せられる。


 「その……。」

 「一度家族を殺したのは。」


 「あんみたさん、貴方ですよ……。」


 ノレ姫は、言いづらそうにそうボソッ、と口をだす。


 「……え?」

 「わたしが……家族……を?」


 「そんな……。」


 「あんみたさん、貴方にはどうやら記憶が無いみたいですね……。」

 「ノレ、その辺詳しいので……心がもつ限り、説明しますぅ……。」


_____あんみたの意図、記憶、全ては胡蝶の夢となってしまったのか?_____

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る