第4話-ネム編 最深部での夢の出会い

 「よし!いくぞ!」


 少年の合図で、ネム、ロイン、そして少年の三人は一気に扉をくぐる。


 「わ、すげー……王様の部屋みてえ。」


 「玉座まであって……誰の部屋なんだろう?」


 ポカーンとした顔をしているネムとロインの元へ、少年が声をかける。


 「ロイン!あの黒いネズミを倒してくれ!」


 「よく分からないけど、分かった!」


 そう言い、ロインは”誰にも届かない足場”にいるおもちゃのネズミを一匹殺す。


 _____


 その時。ネズミのもとにあった1つの箱が「パカッ」といい音を立てて開く。


 「ネム!ロイン!奴が来るぞ!構えろ!」


 「あ、うん!分かった!」


 「ちゃーりゃあ!ようわかんねぇけどやってやるぜ!」


 その時、玉座に突如青い髪をクルクルと巻き、気高そうな少女が済ました表情でこちらを見る。


 「え、あれ、襲ってこねぇぞ?」


 どうやら、少年の予想とは違う展開になった模様。

 そんな三人を置いてけぼりにするように、少女はネムに語りかける。


 「御機嫌よう。”ペンネン・ネム”。」


 「!」

 「この声は!」


 ネムは、驚いた表情を隠せなかった。

 それもその筈だ、この少女。”こちむ”こそ、ネムをここまで案内した張本人だからだ。


 「ん?ネム、コイツと知り合いなのか?」


 少年は問う。


 「知り合いってゆーか……今日夢に薄ら出てきて、俺をここまで導いてきたやつ。」


 「そうそう。ネム、普段かなりわがままなんだけど、なんか青いねーちゃんが〜……って、今日ここまで来たの。」


 そう助言するのは、ロインだ。


_____


 少年は、驚きを隠せないままポカーンとしている。


 「は……はぁ……早くコイツ倒して強化の書とか欲しかったんだけどなぁ。」


 そんな少年に、こちむは語りかける。


 「まぁ、そう急がないこと。」

 「先ずはお茶をしましょう。殺し合いはそれからですわ。」


 そう言い、こちむは使いの者を呼んだ。


 「クロノス達!この少年少女にお茶を用意なさって!」


 「はい、こちむ様。」


 そうして、世にも奇妙なお茶会は始まる。


_____


 「ネム、よくできましたわ!」


 「よ……よくわかんねーけど……褒められて悪い気はしねーな……。」


 「ふぅん……アンタがネムをここまで導いたのは、なんか理由がある訳?」


 ロインはこちむの目的を探ろうとする。

 こちむは、お茶を嗜みながら冷静に答えた。


 「ネムの夢に、茶髪で兜を被った女の子が出てきてるはずですわ。」

 「その子を、”成仏”させてあげたくて一番素質が似ているネムを導きましたの。」


 「茶髪の……女の子?」


 ネムは、そうそう!という感じでロインに話しかける。


 「その通りなんだよロイン!毎晩その茶髪のガキが入れて入れてー。って叫ぶ夢を見るんだよ俺!」

 「もうわけわかんなくてウンザリしてたけど、青いねーちゃんを殺せばソイツはもう夢に出てこなくなるんだな!?」


 こちむは、少し引いた表情を隠しきれない。

 何故なら、こちむは本気で殺し合いをするつもりなど無いからだ。


 「失礼……わたくしとしたところが、少し物騒な言い方をしてしまいましたの。」

 「殺し合いは撤回。」

 「お遊戯会、に致しますわ!」


 置いてけぼりの少年は、待ちきれなさそうに短剣を構える。


 「おい!二人で話を進めて訳が分からないぞ!早くこいつと戦うんだ!」


 「失礼致しましたの。」

 「では、ネム、準備は宜しくて?」


 「お遊戯会、の始まりですわ!」


_____


 茶髪の少女の夢、ネムの素質、その意図、とは?_____

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