第四話: 無慈悲なお願いが剛くんを襲う……!




 それからの日々、試験を受けて、結果が通知され、届いた封筒を開くまでの記憶。


 その間は曖昧で、剛にとっては寝ているのか起きているのかよく分からない期間であった。


 何せ、事前に女王側(つまり、異世界側)から根回しされていた学校側が、剛の自習の邪魔をしないようにと、生徒たちまでをも巻き込んで勉強に集中させるよう動いていたからだ。


 おかげで、4月、5月、6月の間は勉強以外何をしていたのか覚えておらず……そんな日常だから……結果が届いたその日まで、剛の記憶は非常に曖昧となってしまった。


 おそらく、これ程までに勉強(言い方を変えれば暗記と応用)に心血を注いだ事は一度としてないだろう。



 そう、心から断言出来る程に濃密な一時だと、剛は後に考える。



 高校受験の時に感じていた感覚など、コレに比べたらそよ風みたいなものだと言えるぐらいに……苛酷な日々だったと、振り返る。



 ――人間、死ぬ気でやれば不可能も可能に出来るようだ。



 その事を心底強く実感したのは、他でもない。自宅に郵送されてきた封筒に印字された、試験合格を文字を目にした瞬間……その時であった。


 その文字を目にした瞬間、剛は気絶した。脳が、読み込んだ文字列を理解する前に、限界を迎えてしまったからだ。


 元々、剛は優秀な頭の作りをしていない。いや、悪いと言われる程ではないが、けして、要領が良いと判断されるだけの頭脳を持ち合わせてはいなかった。


 それを、死に物狂いで働かせ続けたのだ。文字通り、失敗すれば破滅(肉体的にも、社会的にも)という暗黙の脅しがなければ、達成しなかっただろう。


 故に、次に剛が目を覚ました時、そこは病院のベッドの上であった。


 後になって分かった事(見舞いに来ていた母親から教えられた)なのだが、どうも、意識を飛ばしたその日から二日間、剛は眠りっぱなしだったらしい。


 理由は、兎にも角にも疲労の蓄積。


 気が緩んだ事で押さえ付けていたダメージが一気に表へと吹き出し、その結果、脳が強制スリープモードになった……ということであった。



 これには、剛も驚いた……いや、非常に曖昧な感覚ではあったが、自覚はしていた。



 だからこそ、二日間も寝た事でスッキリしたこそ、剛は改めて自覚した。己が如何に無茶苦茶な事をして、下手すれば命を落としかねないぐらいの事をやっていたのかということを。


 この点については、剛の両親も激怒した。誰にって、異世界人……女王たちに対してだ。


 そりゃあ、自分たちの息子が死にかけた(の、ようにしか傍目には見えなかった)のだ。よほど酷い関係性でなければ激怒して当然だし、憤慨して罵声の一つも浴びせて当たり前である。


 いくら、当の息子が『自分は大丈夫だから』と宥めたところで意味はない。いや、むしろ、そうすればそうするほど、火に油を注ぐかの如く、両親の怒りが燃え上がるのは必然の流れであった。



 しかし……この場合、相手があまりに悪かった。



 何せ、相手は『異世界人』。この世界の頂点に立ち、政府を裏で操る事すら容易くやってのける相手で、既に世界各国は『異世界人』に逆らえない状況なのだ。


 実際、両親が警察に頼ったところで無駄だった。


 二言目には『自分たちに出来る事は何も無い』と追い返され、マスコミに訴えようにも『報道する自由』の権利を建前に無視され……無力感に、両親は涙する他なかった。



 ……ただ、そんな両親の気持ちを和らげる事が、一つだけあった。



 それは、原因を作った異世界側が……『課題』を見事にやり遂げた時田剛という少年に対して敬意を持ち、将来的な事へのバックアップを行うと明言したからだった。



 ……いや、そもそも……と思うかもしれないが、単純な損得で考えてみよう。



 まず、剛は死んではいない。


 入院する事態にはなったが、点滴療養と睡眠によって回復し、後遺症も一切残っていない。もちろん、入院費などの諸々を雑費は全て女王たち……『夢華屋』が負担した。


 他にも、見舞金という名目で口座に3000万円が振り込みされた。


 それは剛が進学し、大学を卒業してから生活が落ち着くまでを含めた分であるのは明白で……突っぱねるには躊躇するぐらいには、両親は現実を見る事が出来た。



 次いで、純粋に学力が上がった。



 これは、退院して迎えた7月の期末試験の時。事情が事情なので対策もほとんど出来ないまま行う事になった学校のテストだが……なんと、学年で2位を取ったのだ。



 1位を取れなかったのはケアレスミスが原因だが、重要なのはそこではない。



 どうにも自覚はないが、命がけ(比喩抜き)で行った勉強が脳の奥深くに刻み込まれたようなのだ。多少なりとも細かい部分は違うが、国公立入試を突破できる学力を得た副産物であった。



 これには……さすがに剛の両親も、振り上げていた拳を下さざるを得なかった。



 何せ、結果的には3000万円と学力を息子は得られたのだ。



 過程に問題が有ったにせよ、何事もなく回復したうえに、当の息子が反抗に否定的となれば……そう、長くは怒りも続かなかった。






 ……。


 ……。


 …………そうして、期末テストも無事に終わって終業式も終えた、7月末。相も変わらず親しい友人など一人もいない剛は……女王に呼び出され、例のホテルへと向かっていた。



 前日の夜に連絡が来て、早朝より出発したとて、猛暑日の前では些細な抵抗でしかなかったのだろう。


 タクシーを使って(曰く、時は金なり、だとか)道中の暑さから逃れられたとはいえ、午前9時を迎えた時点で気温は32℃に達している。



 ――『夢華屋・日本店』



 そう、達筆(少なくとも、剛にはそう見えた)に記された大きな看板が目立つ、これまた新築の空気を漂わせている、風俗店には見えない冗談のような風俗店の入口前に、タクシーは止まった。


 運転手の……最初の頃は訝しんでいた運転手も、さすがに5回もここへ訪れれば、慣れてくるのだろう。まあ、慣れるというよりは、会社内で雑談程度に話が回っているのだろうが……で、だ。



 ――支払いを済ませて車外に出た途端、むせ返るような熱気に剛は顔をしかめた。



 薄手のシャツに、薄手のズボン。真夏日だからこそ許されるギリギリの恰好だというのに、それでもなお暑い。とてもではないが、人間が耐えられる暑さではない。


 ただ息をしているだけで、玉のような汗が噴き出してくる。息苦しさすら、感じる。背後の方で急かされるようにタクシーが遠ざかってゆくのを感じながら……自動扉を通って店内へと入る。



「――はああ……」



 瞬間、全身へと降り注ぐ冷気に、堪らず剛はため息を零した。寒すぎない程度に冷やされたソレが、剛の全身に纏わりついていた熱気を押しやる。


 どのような技術を用いて行われているかは知らないが、この建物内を循環している冷気(暖気、問わず)は、外気に漏れることは全くない。


 まるで見えない壁で仕切られているかのように、内と外とが隔てられているのだ。それでいて、人間などは自由に出入り出来る……出入り出来ないのは、不快感を覚えるモノだけ。


 故に、心地良く調整されているだけでなく、清浄器を通してクリーンになった空気が循環している。ここはある意味、地球で最も空気が綺麗な場所なのかもしれない。



 だからこそ、なおさら混じりっ気のない冷気が骨身に浸みる。



 まるで、我慢に我慢を重ねた後で、ようやく新鮮な空気を吸ったかのような気分で……風呂上りのさっぱりとした感覚すら覚えるぐらいの、何とも言えない心地良さすら感じられた。


 まあ、我慢も何も、道中はタクシーの中で外の熱気には振れていないのだけれども。



(……夏は嫌だが、この熱気が冷やされていく感覚は嫌いではない。でも、やっぱり暑い)



 そう、幾度となく思う事を今も考えながら……開店前の、人の気配が感じられない店内を通り、受付横の暖簾が設置された通路を通り、指定された部屋へと向かう。


 ……照明は点灯し、空調は正常に動いていて、店内は埃一つ汚れ一つ見当たらない。本当に、見た目だけならホテルにしか見えない。それも、高級なやつ。



(……ここにも、もうすぐ客が来るようになるんだよなあ)



 そう思えば変な話(気分の問題である)だが、すっかり見慣れた景色を横目に、通行止めの看板が置かれたスタッフ用の通路へと入り……『スタッフのみ』とプレートが張られた部屋の扉を叩いた。



 ――一拍遅れて、どうぞ、と返事が来た。



 許可が出たので、「――失礼します」剛も倣って返事をしてから室内に入る――そうしてすぐ、「あれ、アビィさん?」予想していなかった人物の姿に、剛は目を瞬かせた。



 室内には、ソファーに座った二人の女性が向かい合うようにして座って居る。



 1人はこれまた見慣れた(ドキドキしないわけではない)スーツ姿の女王で、1人は官能的な肉体を官能的な下着で覆い隠しただけの……アビィであった。


 こっちは、見慣れてもドキドキしてしまう恰好である。


 いや、早々お目に掛かれないレベルの美女(スーツ姿)も、それはそれで思春期真っただ中の剛にとっては目のやり所に困るのだが……まあ、それはいい。



 二人に共通しているのは、二人ともがスタイルの良い美人であるということ。



 そして、いくらこうして何度か顔を合わせ、親睦会と称して昼食を御馳走になった剛とはいえ、二人の傍に居るのは……いっこうに気が落ち着かない事でもあった。


 何せ、スタッフ用のこの部屋とて、1人で入るには些か気後れするような豪華さだ。


 小市民というか、そういった世界とは無縁な人生を送って来た剛にとって、けして居心地が良い場所ではない。


 加えて、その部屋に見合う美女が二人も(片方は、艶やかな下着姿だ!)居れば……緊張するなという方が、無理な話だろう。



「……ふふふ、やはりそちらに座るか」



 けれども、そんな剛の内心を他所に。


 促されてソファーに腰を下ろした剛は、え、と目を瞬かせ……アビィを見やった。


 すると、アビィは意味深に目を細めただけで何も言わない。


 いったいどういう事なのかと思って隣の女王を見やれば、その女王もニマニマとふやけた笑みを零すばかりで……どういう意味だろうか?



「なあに、童貞を受け止めてくれた相手に絆されているなあ……ってね」

「ぶふっ!? げほ、げほ、げほ!?」

「あははは、君は実に良い反応を見せてくれるね」



 気になって率直に尋ねてみれば、返された答えがソレであった。


 爆発的にこみ上げた羞恥心に、剛は堪らず咽る。


 直球といえば直球な言い回しに、剛はほとんど反射的に先日の……退院して初めて呼び出された時の、生まれて初めて体感する女体の柔らかさと匂いと温もりを思い出してしまった。



 ……あの時はまあ、その……いや、そこはいい。



 要は、『頑張ったご褒美』というやつであった。


 どれだけやさぐれてしまっていた剛も、思春期真っただ中の元気が有り余っている高校生男子に過ぎなかったのだ。


 最初は、剛も突っぱねようとしたのだ。


 けれども、特にそういう気持ちになっているわけでもないのに隆起してしまう年頃の剛の意地も不信も、そう長くは耐えられなかった。何せ、肉体的には健康体なのだ。


 剛は、17歳。良くも悪くも一番体力が漲っている時期だ。


 中学時代のトラウマから異性(若干、同性に対しても)に対して不信感を抱えていても、若い衝動を減退させる程ではない。



 いや、むしろ、興味自体はある。少しばかり当てはまらない部分はあるが、いわゆる『むっつり』という状態であった。



 おまけに、何だかんだ言いつつも悪い人ではないという前置きと、3ヵ月にも渡って続いていた禁欲と、心身を蝕む程の緊張感から解き放たれたという、トリプルアクセル。


 そして、トドメと言わんばかりの、早々お目に掛かれないレベルの美女から向けられる、親密感たっぷりなスキンシップの数々。


 どこか鬱屈とした想いを抱えていた青少年が、テレビでも中々お目に掛かれないレベルの美女から優しく手招きされるだけでなく、向こうから柔らかく迫って来たとなれば……結果は、考えるまでないだろう。



(だからって、だからって、ここでソレを言いますか!?)



 まあ、だからといって、無事だった純情な部分が頑丈になるわけでもない。


 何で、アビィがそれを知っている――いや、そこも、疑問に思うまでもない。


 喋ったのは隣で変わらずにふやけた笑みを浮かべている女王であり、この二人相手にそういった反応は逆効果である事は、もう分かっていた。


 だから――剛は紅潮した頬を叩いて気を取り直すと、改めてアビィを見やる。


 睨みつけるつもりではなかったし、「おや、怖い怖い」アビィも特に怖気づくことなく両手をあげて形だけの降参のポーズを取った。


 それを見て、今度は隣の女王を見やる。


 けれども、こっちは絆されてしまった弱みというか、初めての弱みというか、「この後、また……ね?」嬉しそうにそう言われれば……もう、剛の方から言える事は何もなかった。



「……本当は女王である貴女が話をするのが筋というものだが……まあ、いいか」



 ポツリと零されたアビィのため息に、剛はピクリと肩を震わせる。



「そろそろ、本題に入っていいかな?」


 ――貴女からこの話題を振ったんでしょうが!



 そう、剛は言い掛けたが、止めた。


 口で勝てる相手でないのは分かっていたし、剛も、場の空気を変えたい意味もあって、さっさと話を始めてほしかったから。



「それじゃあ、念の為に前置き。話は聞いているけど、もうこっちに来ている皆とは顔合わせを終えたんだよね?」

「皆って、この前挨拶に言った皆さんのことですよね?」



 尋ねられて、剛も改めて気持ちを入れ替えた。「そうだよ、人数は15人……全員の名前は憶えているかな?」続けて尋ねられたので、剛は素直に答えた。



「いちおう、その時に頂いたプロフィールカードで、その15人はある程度覚えましたけど……でも、顔合わせの後は一度も会っていないので、自信はないです。特に、一緒に頂いた名簿に記載されていた、在籍予定の『夢華嬢』の人達は……」

「ああ、別にそこまでいきなり覚えなくていいよ。そういうのは追々覚えていけばいいわけだし、特殊な訓練も経験も積んでもいない子に、一度顔合わせしただけの嬢の顔を覚えておけって無茶を言うつもりはないよ」

「そうですか……えっと、それなら……?」



 目的が読めずに首を傾げる剛に、「いや、なに、簡単な事さ」アビィはそう言ってニヤリと笑った。



「君の努力と誠意によって、私を含めて16人の夢華嬢がここにやって来ているわけだ。そこまでは、いいね?」



 一つ、剛は頷く。



「それに伴って、雑事を担当する者もここに配属されてくる。人数は7人、受付を始めとした、清掃業務も行う者たちだ。いずれは、両方とも増やす予定だよ」



 言われて、そういえば、そうだよなと剛は内心にて納得する。色々な意味で女王より教えられている事の一つだが、それを改めて剛は認識した。



 ……そう、風俗というのは何も、嬢が居れば良いという話ではない。まあ、サービスをとことん切り詰めればそれも……話を戻そう。



 違法か合法かは別として、実の所、風俗もまた数ある仕事の一つでしかない。『夢華屋』もまた、他の風俗店と同じく市場の原則が働いているのだ。


 客が来て、性を提供し、報酬を得る。


 それは、『夢華屋』とて例外ではない。つまり、質(評判)が悪ければ風俗店も潰れるのと同様に、『夢華屋』もまた潰れてしまうのだ。


 それを防ぐ為に、『夢華屋』もまた、他店と同じく様々なサービスを提供している。


 綺麗な外観と内装には空調が行き届いていて、整えられた寝具に洗浄された室内、並びに、客たちが不快と思わない心遣いが、正しくそれだ。


 それに、そういった心遣いというやつは、巡り巡ればそこで働く嬢にも良い方向に働く。普通に考えれば、汚い場所よりも綺麗な場所で働きたいというのは当たり前の話なのだ。


 誰だって、埃とヤニがこびり付いた所よりも、カビ一つない掃除の行き届いた部屋の方が良いに決まっている。そこでなくてはならない理由が無い限りは、まず後者を選ぶだろう。


 特にそれが、精神的にも肉体的にも負担が掛かるだけでなく、素肌を晒して……それこそ隠してある部位を露わにして行うともなれば、尚更で。


 だからこそ、専属のスタッフを置くのだ。



「で、君には……勧誘をしてもらいたいんだ。ああ、言っておくが、嬢の勧誘じゃないよ。君にしてもらいたいのは、客の勧誘だ」

「え、俺がですか?」



 思いがけない話に、思わず剛は困惑気味に目を瞬かせた。



 客の勧誘……それって、街中でやっているような呼び込みみたいなやつだろうか。



 それなら……正直、断りたいなと剛は思った。


 だって、剛は学生だ。いくら学校側が『異世界人』に配慮して目を瞑ってくれているとはいえ、限度はある。


 成人しているならまだしも、高校を卒業していない学生が、風俗の呼び込みの真似事なんて……抵抗感を覚えずにはいられなかった。



「――いやいや、気が早いよ。勘違いしないでくれ、私が言う『客』というのは、店の前を通る人を捕まえるのではなく、指定した者どもを連れてきてくれってことさ」

「……あの、仰っている意味が分からないんですけど?」



 本当に、ワケが分からない。


 そう思って尋ねてみれば、「……もしかして、こっちにはそういう風習はないの?」逆に、アビィも困惑した様子で小首を傾げて……えっと、女王さん?



「あ~、うん、剛くんは知らないと思うわね。ごめん、これは私のミスだわ」



 視線を向ければ、そう言って女王は軽く頭を下げ……説明してくれた。



「えっとね、剛くん。向こうでは……というか、『夢華屋』では、開店前日に行う祝い事……というか、験担ぎ、みたいなものがあってね」

「試験を前にカツ丼を食べるとか、そういうやつですか?」

「そうそう、でね。地方によって異なるけど、一番多いのが『若い客か、年配の客を取る』っていうのがあってね。『若い子が年配になるまで、年配になっても客として来てくれるように』っていう、そういう意味があるのよ」

「へー……で、なんでそれを俺に?」

「居るじゃないの、貴方の身の回りに」

「え?」



 ……俺の?



 思わず、剛は当たりを見回す。当然、室内には剛を除けば麗しい女性が二人だけ……て、ことは?



「若ければ、年配であれば、誰でも良いってわけじゃないの。色々と条件があってね……でも、それを差し引いても……100人以上も候補が居れば……ね?」

「あの、もしかしなくても、それって……」

「年配者が無理でも、若い子なら……そう、今なら部活で学校に来ている生徒も多いし、授業自体は休みだから……狙い目だよね?」

「いや、あの……」

「私たちの間ではけっこう重要な験担ぎなんだよね。日数は跨いでもいいし分割でもいいから、最低16人……そう考えれば、実にタイミングが良いと思わない?」



 ……。


 ……。


 …………しばし、剛は言葉を失っていた。そして、ようやく彼女たちが言わんとしている事を察した剛は。



「……同級生を風俗に招待って、気まずいってレベルじゃないんですけど……!」



 詰まりに詰まったナニカを絞り出すように、苦悶の顔でそう零したのであった。






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