初夜

 夕食を済ませたオレ達は、明日からの狩りに備えて繁華街の1本裏手の、武器屋と同じ通りに有る宿屋で早めに休む事にしたのだが…


「ちょっとぉー!何で一緒の部屋なのよぉ!」

「仕方ないだろ、2人とも金欠で個室に泊まれないんだから…」


 と、言う訳で、幾らか割安の2人部屋に泊まる事になった。オレ達の泊まる部屋は2階の一番奥に有り、多少、大きな声を上げても大丈夫なのだが、残念ながらベッドは別々である。


 実は、オレ達に限らず、金欠になるのは、このゲームでは珍しい事では無い。

 モンスターを倒しても得られるのは経験値と装備品やアイテムだけで、お金は落とさない。

モンスターは買い物などしないので、お金を持っていないのは当たり前と言えば当たり前なのだ。

 で、戦利品を武器屋等で換金するのだが、これがなんとも渋い。

仮にソロなら半日ビッチリ、モブ狩りをして良くて1万円くらい。あ、日本限定版だからなのか通貨の単位は円なのだ。

 そのくせ、全回復ポーションが2,000円、半回復ポーションが1,200円、1/3回復ポーションが1,000円というビックリ価格なのだ。

ポーションをストックするだけで、1日の稼ぎを持って行かれそうな勢いだ。


「ちょっと、聞いてんの?変な事しないでよ!この線からコッチに来たら責任取って貰うからね!」

「ん?責任取ればイイの?」

「なんか間違ったじゃない!」


なんか、かわいいっ!


「さっさと寝るわよっ!」

「はいはい、おやすみ〜。」

「おやすみっ!」


もともと1メートルくらい離れていたベッドを移動して、さらに1メートル程間隔を広げたベッドの中で、アズキの言う通り、2人ともスヤスヤと寝ていたのだが…


人間、生理現象には勝てないのだ。


「んー、ビール飲んだからかな?オシッコしたい。トイレっと…ん?電気点いてる…」


 尿意で目が覚めたオレはなかば寝ボケたままトイレに入ったつもり、と言うか間違いなくトイレに入ったのだが、まぁ、よく有るバスとトイレが一緒なタイプなのだ。我慢も限界だったオレは速攻、ズボンを下ろして放尿しようとしたその瞬間…


 シャー!


 バス側のカーテンが開いた。

そこには下半身まる出しの男と、バスタオルを取ろうとしている全裸の女がいた。


なんというハプニング!無言はマズいと思ったオレの口から出た言葉は…


「あの、その、責任取るから…」


 アズキは放心状態だったのか、数秒後…


「要らないわよぉ〜!早く出てけぇー!」

「やっ、あの、まだ出してない…」

「何出す気よ!この変態!痴漢!露出魔ー!」

「分かった、分かったから!早く替わってくれよ、ホント限界だから。」

「うるさいっ!」


慌てバスルームを飛び出したオレだった。


 どうやら、アズキはオレが寝入るのを待ってシャワーを浴びていたらしい。


カギ掛けとけよ。うん。オレは悪くない!


 しばらくして出て来たアズキはプンスカしたまま一言も話さず寝てしまった。


 入れ替わりにトイレに入り、用を足したオレはスッキリしたのだが、思わぬラッキースケベに遭遇そうぐうしたお陰で、興奮して眠れぬ夜を過ごしたのだった…

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ALL MY THINGS 〜耳鳴りが止まるまで〜 はいとく @gre

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