第5話 新たな旅へ
「大丈夫。私が全部どうにかする。だからナギサはもう少しだけ眠っていて」
私は精一杯の笑顔でナギサを見つめながら、ナギサの首に手刀を打った。
恐らくだけど、ナギサはこれじゃ納得しない。
それだと私が危険な目に遭うかもしれないと言って反対していたと思う。ナギサは優しい女の子だ。アリシアの事もあり、他に頼る事はもうしたくないとそんな事を考えるはずだ。だけど私はナギサを諦めたくない。だから、こんな卑怯な方法で話し合いを終わらせたんだ。
「全く、酷い事するね。キミは」
やっぱりか、ナギサは自分に主導権があるだろう言っていたが逆だった。ナギサの出てくるタイミングがあまりにも良すぎだ。ナギサの意思がそれだけ強かった。そう考える事もできるのかもしれないが、私にはそうは思えなかった。それよりはヘルが敢えて主導権を譲った。こう考える方が良いと思った。もし、ナギサに主導権があれば私に最初にあった時にナギサの人格が現れていたはずだ。そうならなかったという事はやはり、ヘルに主導権があるという事なんだろう。だから、今ヘルが現れた。
「ヘル……」
「どうしたんだい。メイタンテイさん」
私は、彼女にどうしても伝えなければならない事がある。
「ありがとう。5年間ずっとナギサを守っていてくれて」
これはナギサからのメッセージではない。私の、私個人が伝えたい事だ。
「私の親友を守ってくれてありがとう」
「一体、なんの話かな」
ヘルが少しななめ前上の方向をみている。照れ隠しなのかな。
これ以上はナギサを取り戻してからだ。
「ヘル、私はこれから」
ナギサと約束した事をヘルにも伝えようとしたが
「分かってるよ。ずっと聞こえてた」
もうすでにヘルには伝わっていたようだ。
「ご主人様はどうか分からないけどボクは人格が表面化していない時でも五感はしっかり働いてる」
流石の私もこれは予想してなかった。もしかしたらこれも種の影響なのかな。これも後々役に立つかもしれない。そんな事を考えているとヘルが話を続けた。
「キミもあんな無謀をいうものだね。それとも何か考えがあるのかい?」
「望みは薄いかもしれないけどね」
当たり前だ。これはある意味でもう1人の人間を作るという事なんだ。そう易々とはできはしないだろう。それでも彼になら何かできることがあるかもしれない。
「≪発明家≫」
≪調律者≫の1人である彼ならば。
「≪調律者≫……か」
「知ってるんだ」
「≪聖典≫に書かれてあったからね」
ヘルも知ってたんだ。なら丁度いい。説明する暇が省ける。早速、彼のところへ向かおう。
「じゃあヘル。私についてきて」
「ボクがいうのもアレだけど。彼のことはいいの?」
そう言ってヘルは助手の方を指刺した。
「あっ、忘れてた」
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