第五回 亜人は存在できるのか

   前書き


 予告通り亜人を扱っていくわけだが、あらゆる生物の中で元の特徴を残しつつ、人の形を取れる生物の条件に付いて述べていきたいと思う。

 これはつまるところ、人の形をとるのが難しい生物が存在するということでもある。


   鳥人


 骨格を持つ生物が人の形をとる上で、必要な骨格をすでに持っているので、何かしらの影響さえ受けた上で時間をかければヒト化は可能である。

 問題はどこまで元の生物の特徴が残るのか、これ一点であろう。

 そう言う風に考えた時、骨格を持つ生物の中で最も難しいと思われるのが鳥人である。

 至極簡単な理由で、鳥の手に相当する部分が翼であるからだ。

 一見すると二足歩行なので問題ないように、寧ろやりやすいように見える彼らだが、人化したとしても、翼と手は二者択一状態になってしまう。

 これは進化の過程で元々持っていた骨格構造以上の進化が行われないことに起因する。

 爬虫類の中で蛇の骨格は特殊であるが、実は足や腕の名残であろうと思われる骨格が残っていたりする。これからわかることは退化することは可能だということだ。

 これは『ソニック・ヘッジホッグ』と言う遺伝子にまつわる論文があり、ニシキヘビにはその名残と思われる器官が存在している。論文では手足の再獲得が可能であろうとも示唆されていることからも分かる。

 ただ、骨格構造以上の進化が行われない理由にはならない。とは言っても、至極単純な話で手足に相当する第三の手足を持った生物が見つかっていないことからわかる話だ。

 待てよ、と。手足に相当する第三の手足を持った生物っているよね、と。

 いることにはいるが、それはカニやエビ等の甲殻類、クモや蟻などの虫の話ではなかろうか?

 彼らは甲殻を持っているが骨格は持っていない。

 そこは後に回すとして、鳥人はどうすべきであろうか。

 思うに、正解は三種考えられる。


 ・翼はそのままに人化

 ・翼を捨てて人化

 ・翼のどこかに手ができて人化


 一つ目は、腕はないが翼はある鳥人。

 二つ目は、翼はないが腕はある鳥人。

 三つめは少し長くなる。

 自分の腕と手を見てほしい。想像しやすくするため両腕をまっすぐ伸ばしてみる。これで羽ばたく動作をしやすいのは、小指を下にして手の平を前に向けた時ではなかろうか?

 その小指が発達することで翼は大型化でき、人が飛ぶために必要な大きさの確保がしやすいだろう。

 そうすると、翼の中ほどから少し先の方に四つの指をはやすことができ、物をつかむことができる手が存在できるのではないだろうか。そこに羽があるかどうかは作者次第でよい。

 ただ、これは人基準の話だ。

 鳥の足の指は二~四本、雉のケヅメを入れると五本になる。なので、足と同じ数だろと推定したとしても、元となる鳥の種類によって違うので書き分けが必要だろう。

 足の形は元を準拠するといいが、太くなる可能性があることは頭に入れておきたい気がする。


   獣人の頭


 立って歩けばいいだけの話なので、鳥人以外の獣人はあまり気にする必要はないだろう。必要な骨格は持っている。

 考えなければいけないのは、どこまで人に近くなるのか、頭の構造と全身を覆う毛、そして雌が持つ乳房の数だ。

 鳥人にも関係するので別に考えないでほしい。

 さて、まずは頭の構造だ。

 私が最も納得がいかないのが耳だ。

 動物たちは固有の耳を持っており、人間のように側頭部よりも頭頂部にある印象が強いだろう。現にコスプレ用の猫耳や犬耳のカチューシャは頭頂部に近いところにデザインされている。

 これ自体はどこまで人間に近くて、どこまで元の動物に近いかの違いだけだ。

 問題は一対だけしかないと言うことだ。

 人間の耳も動物の耳も持っているように書かれることがあるが、一対しかない物が二つあるのは明らかに不自然である。

 耳の構造には骨も関わってくるので、元々持っていない骨格を獲得していることになり不自然に思えるわけだ。

 ただ、これはとある理由付けをすると不自然ではなくなる。

 『何者かによって作られた存在』と言う設定だ。

 獣人は動物と人間の遺伝子を科学的、魔法的に掛け合わせて作られた存在ともなれば、当然のように歪さと言うのが出てくる。

 その歪さこそが、耳を二つ持つ理由とできるのだ。これによって翼と腕を同時に持つ鳥人も説明ができる。

 このマッドサイエンティスト的な存在が過去存在したことは示唆、あるいは登場すべきであることも分かるだろう。でないと、私のような読者から突っ込まれることになる。

 頭の構造でもう一つ、男性は獣的な顔をしているのに、女性は人間的な顔している場合だ。

 確かに雌雄間の違いと言うのはある。

 ライオンのたてがみ、孔雀の尾などがそれにあたるだろうが、そうなった理由は何であるのか考えるべきだろう。

 混血が可能であると仮定した場合、顔によって多種族にもアピールをする為なのか、主に人間に。

 人間に影響されて進化してきたのならば人間的な顔になったとしても不思議ではない。似ていれば似ている程、万人には受け入れやすい傾向にはあるので、獲得したと考えても不自然ではない。

 だが、それは雌雄間の差の理由にはならない。

 なので、もう一つ考えられることは、人間の女性には獣的な方が受け入れやすいのではないのか。つまり、獣的な強さの象徴として残ったと。

 この理由付けは弱いだろう。

 ある程度元の動物の特徴が残っているのならば、顔に残る必要性と言うのは弱い。

 ただ、獣的な強さの象徴として残ったと言う考えは使える。

 縄張りを守る為に、力が強ければ強い程より元の動物に近くなると考えた場合に自然になるからだ。

 例えば、ライオンの鬣は強さの象徴として、強い程に色濃く長くなると言う研究がある。これはペイトン博士の研究だ。

 ライオンのことしか言っていないのだが、他の動物にあてはめてもいいのかと言うと、これは問題ないと考える。

 種族は違えど、人化することが目的であり、この目的は一つしかない。その過程で同じ選択を取った種族がいるのは当然だからだ。

 ただし、すべての種族が同じ選択肢を取ったのかと言うと、それは違うだろう。違う選択肢を取った種族がいることの方が当然だ。なので、自然な進化をしたのなら多様性の表現は必須であると考える。

 無論、マッドサイエンティスト的な存在をだして説明するのなら、こんなことは考えなくてもいい。


   獣人の毛


 動物には毛並みと言うものがある。毛が無い動物もいるが、それは人間と同じように考えればいいだろう。

 さて、毛はどこまで残すべきだろうか。

 これはメリットとデメリットを考えてやる方がいいだろう。

 毛があることのメリットは、保温効果や紫外線を遮る効果があることだ。デメリットは、体温が上がりすぎる事。

 毛を持たない動物は日差しの強い区域にいることが多い。象とかサイとか。

 氷河期には象もサイも毛を持っていたとされている。その毛を無くしたのは氷河期が終わり、体温が上がりすぎる為に捨てたのだろうと考えられている。

 これは人間も同じで、住処を森から草原にし始めたころ、強い日差しにさらされ体温を理由に毛を無くしていったと考えられている。

 犬や猫は換毛期がある。所謂、夏毛、冬毛の生え変わり。これは汗による体温調節が苦手なので、毛の種類を変えて適切な体温を保つために起こる。

 近年、室内飼いの犬や猫に換毛期がない種類がいるそうだ。家屋の保温性や冷暖房技術が換毛期の必要性を薄れさせたからだと考えられている。

 これらからわかることは、体温が重要なファクターになっていると考えられる。

 もし、人化することで服を着るようになれば、毛がなくなっても不思議ではない。なぜなら人間は服によって体温調節を行い、紫外線を遮っているからだ。

 これは面白いことが考えられる。

 動物は済む地域がほぼ決まっており、それに適した特徴がある。

 これを利用すると、熱帯から亜熱帯に住む獣人は毛が無い種類が多く、亜寒帯から寒帯の獣人は多くの毛を残している可能性だ。温帯に関してはどっちつかずになるだろう。


 体温を保つために毛を捨て、紫外線を遮る為に服を着る熱帯から亜熱帯に住む獣人。

 体温を保つために毛を残し、紫外線は毛が遮るので服に無頓着な亜寒帯から寒帯の獣人。


 少し極端だが、こういうわけだ。

 これによって世界は自然な色を持つだろう。また、服と言う文化も多様化するだろう。合わせて服と言う文化によって露出しない部分の毛が消えていくことも考えられる。

 毛に関してはその作品の設定によるところでかなり変わってくるので、これ以上は論じることができない。と言うかしなくていい。


   獣人の乳房


 下ネタ的な、エロ的な話ではなく、生物学として捉えてほしい。

 というもの、動物の中には一度に数匹を出産する種がいる。そんな種に限って二つ以上の乳房を持っている。一番身近な犬猫がそうである。

 二匹以上の複数出産が当たり前なのならば、寧ろ無いと困る。

 よくある話として、兄弟姉妹に占拠され、力の弱い子が乳にありつけずに弱っていき、人間の手によって育てられると言うもの。

 一度に三人の出産を行う獣人がいたとして、人間と同じようにその獣人の乳房は二つしかなかったとしよう。

 するとどうなるかと言うと、二人までは同時に乳を与えられるが、三人目からは二人が飲み終わるまで待つ必要が出てくる。

 時代背景としての栄養状態、あるいは個人差によって乳を与えられる量が変わってくる。

 栄養状態が悪い程、乳の出は悪くなると言うのは共通している。これに個人差が加わればどうなるかと言えば、間違いなく一人以上は満足に乳をもらえない上に、最後にもらえる三人目はそうなりやすい。

 もし、同量を三人に与えられた場合、全員が満足した量をもらえないことになる。

 なので、どうやっても発育不良が起こってしまい、同じ一人がずっと最後なら、結果は考えるべくもないだろう。

 では、個人差によって全員が満足した量を与えられたとしよう。これで発育不良は起こらない。

 しかし、与え方次第では序列が生まれてしまう。一度に相手できる人数が乳を与える時期に決まってしまうのは仕方がないのだが、そのままに相手をしてしまうことが考えられる。

 一度に与えられるのは二人まで、同じ一人を最後にしているとどうなるか。

 そのまま相手をしてしまい育てていくと、同じ一人が一対一の相手になって満足してしまうか、二人の相手が大変でおざなりにされてしまうかになる。

 前者は優越感を覚えて我儘に、後者は劣等感を覚えてコンプレックスを抱えることになる。

 これはしっかり者の長男長女、我儘な三男三女と同じ理論だ。

 例え乳房が四つあったとしても発育不良や序列は生まれるだろう。栄養状態や個人差の問題、そして与え方、すべてが絡む。

 ただ、生まれる数以上の乳房があれば、起こりづらいことがある。


 零れ落ちる一人が生まれず、ひどいことになりづらい。

 平等に接することが容易にできるようになり、序列が生まれにくい。


 一つ目は、同時に乳を与えられるので平等に与えることが容易になるので、発育不良は全員が被ることになる。無論、それで三人共に死なせてしまうことにもなるが、三人共に成長していく未来は見えやすい。

 二つ目は、一つ目同様に、同時に乳を与えられるので平等に与えられることで、平等に接する感覚をつかむことができる。これによって、平等な育児が可能になり、三人は比較的に健全に育っていく可能性が高い。

 これらから考えられる獣人ならでは特徴が生まれる。

 一度に生まれる平均的な数以上の乳房を持つ身体的特徴か、複数生まれることで双子以上の育児が上手いと言う特徴、あるいはそのどちらも。

 例えば貴族に双子が生まれた時、この特徴が生かされていたらどうだろう。即ち、乳母が複数出産を行う獣人であるということ。

 多種族混成国家を描く場合、非常に理にかなった描写にならないだろうか。


   エルフ


 エルフの特徴と言うのは、尖った長い耳と森に住んでいる事だろうか。

 人間は森から草原に住処を移したと先述した。

 これから分かることは、人間とエルフのルーツは同じだということだ。そして、人間よりは原始的な種族であることも考えられる。

 草原に進出しなかった者たちがいることは当然考えられるからこう言えるのだ。また、エルフたちが森を大切にすることは当然だともいえる。

 しかし、本当に人間が森から草原に住処を移したのかと言う疑問がある。

 元々森を住処にしていたこと自体は考えられない事ではない。

 なぜなら、森は姿を隠せる比較的安全な場所でもあり、恵み、即ち食料を得られる場所でもあるからだ。

 では、草原に進出した理由は何だろう。

 それは数が増えたからだ。

 森では食料が足りなくなり、草原に食料を求める。これによって草原に進出した種と残った種が出てきて、進出したのが人間で残ったのがエルフ、と言えるわけだ。

 エルフはエロフなんて言って比較的露出の多い服で書かれることが多い。

 実はこれ、理にかなっている。

 森の気温は比較的一定で、場所によっては夏と冬の気温差が少ない。露出が多くても紫外線は木々が遮るので問題はなく、あまり寒くならないのでそれでいい。また、同じ理由で毛を残す必要はなかったとも言えるだろう。

 エルフの肌が白いのも、木々が日光を遮るので日焼けしづらいからと言っても過言ではない。

 問題は耳だ。

 必要があったから耳が尖って長くなったと言っていいのだが、そうなる必要性は何だろうか。

 耳の後ろに手を当てれば分かるように、大きければ集音性は高くなる。耳が大きくなる理由はウサギと同じだと言ってもいい。

 即ち天敵対策だ。森には様々な音がこだましている。

 木々や葉が揺れてこすれる音、鳥や動物の鳴き声、それらをちゃんと集音し聞き分ける為に発達した、と。

 森で獲物を追うのも大変だが、逃げるのも大変だ。

 草原であれば足が速く持続性があればそれでいいが。森の場合はそうもいかない。木々を避ける必要があるからだ。

 むしろ、戦略が大事になる。

 その戦略の為に、相手の位置を音を音で知る為に大きくなったと言えば納得しやすいだろう。

 これらは尖る理由にならない。集音性だけを考えるのであれば、それこそ象のようにただ大きくなればいい。

 では、大きくなることの問題点を考えてみよう。

 大きくなるということは、それだけで不利になる。これは単純に怪我をする場所が増えるからだ。

 怪我をしやすい相手と言うのは、鼻が利く捕食者が天敵になる。

 怪我をすると流血が起こるのはありうる。その血を逃げる道に落としていくと、捕食者は血の匂いを簡単に辿れてしまう。

 ということはあまり大きくできないのだ。

 集音の為に耳を大きくし、怪我を避ける為に尖った形状になったと言っていいだろう。


   ダークエルフ


 エルフとダークエルフの違いは肌の色だ。

 肌の色を決めるのはメラニンだ。日焼けして色が黒くなるのは、このメラニンが日焼けで沈着する為だ。

 メラニンは紫外線を吸収して細胞を守る働きがある。黒人はそのメラニンが多い。そして、黒人は紫外線量の多い赤道下に多い。

 これからダークエルフは二通りの発生が考えられる。

 森から自ら出たか追い出されたエルフたちが赤道下の地域へ移動せざるを得ず、世代を追うごとに肌が黒くなっていった説。

 赤道下に進出した人間の内、一つのグループでエルフと同じように耳を大きくする必要が出た説である。

 どちらであっても体温を上げすぎないよう薄着になる為に、メラニン量を多くしていくことで紫外線に対する耐性を付けていったと考えられる。

 前者の場合、エルフとダークエルフの仲は悪いと考えたほうが良いだろう。集団から抜ける理由は良くない理由であることが多いからだ。無論、増えすぎたので仲間の為に自ら、という理由であれば、仲は悪くなくてもいいが、それ以外を私は思いつかない。

 後者の場合は設定次第だろう。

 形は似ていても色が違うことで起こる不仲や、形が同じだから仲間とみなして仲が良い等が考えられるからだ。いろいろ考えられるので作者次第としか言えない。

 もう一つ描写として考えられることは、光のエルフと闇のダークエルフと言う得意な魔法によって分かれる場合だ。

 そしてこれがめんどくさいのだが、ちゃんと考えよう。

 光と闇と聞いてその連想として昼と夜、太陽と月が思い浮かぶだろう。この連想の場合、光は昼と太陽、闇は夜と月ということになる。

 もしこれがエルフとダークエルフの活動時間であると考えるのならば、肌の色味はどうしても逆転する。

 拡張して考えた場合、エルフが光を操るのであれば、紫外線も光の一部であるということを踏まえれば、エルフの肌が白いのは光を操れるから、と科学的な根拠が出る。魔法で紫外線を無効化できると。

 つまり、めんどくさいのはダークエルフの方だ。

 夜に活動する以上、紫外線とメラニンが使えないので、肌の色に科学的根拠が付けられない。科学的に言うのなら寧ろ白くなければならないのだ。

 闇魔法を使うエルフだからダークエルフ、ではなく、闇魔法の象徴として肌の黒さもあるダークエルフを出したいのなら考えないとならない。

 まず、光と闇は表裏一体をなす概念であることを考えてみよう。

 光がなければそこは闇に包まれしまうわけだが、光と言う概念が存在しないと、その暗さが闇であるとはならない。闇と言う言葉の定義は光がない状態のことを指す言葉なので、光がなければ光と言う概念はそもそも生まれず、闇を定義することができなくなるからだ。

 我々は光と言う概念も持っているのでこの言い回しはわかり辛い。

 この言い回しを例えるのならば、外国語がわかりやすい。特に発音だ。

 英語に置いて『R』と『L』の発音は分けられる。『Light』と『Right』を日本語で表記した場合はどちらもライトだが、発音が存在しないので日本人は勉強しないと聞き分けられない。しかし、アメリカ人は聞き分けられる。

 発音の仕方が違うと言う概念がないので、聞き分けると言う概念がなくできないのだ。私も習いはしたがあまり英語に触れないので、パッと聞いただけでは区別ができない。

 これと同じことだ。

 これを使うことで、光のエルフは肌が白いと言う概念があれば、闇のダークエルフは肌が黒いと言う概念が存在できると言えるだろう。

 ただ、概念は存在できても根拠にはならない。

 これは科学的に考えようとするからできないのだと考えよう。つまり、ファンタジー的にアプローチしよう。

 ここで、エネルギーとしての属性ではなく、カテゴリーとしての属性を考えてみよう。

 即ち、火属性、水属性と。

 この属性に対して色を与えて考える場合がある。火属性なら赤、水属性なら青|(水色)とか。

 こう考えた時、多くの場合は、光属性に与えられる色は白、闇属性に与えられる色は黒だ。

 もし、魔力が得意な属性の色を持っていたとすると、光のエルフの魔力は白で、闇のダークエルフの魔力は黒となる。

 魔力は多く場合、体内で生成される。

 魔力が肌の色に影響を及ぼしていると考えるのならば、そう、光のエルフは自身の魔力によって肌が白く、闇のダークエルフは自身の魔力よって肌が黒くなる。

 これをまとめると、エルフは自身の魔力が持つ色に影響されて肌の色が決定づくということになる。

 これは魔素|(マナ)が存在する世界でも通用する。

 一例として、魔素が魔力に影響されて魔法となった時に、その魔法の属性に関係する色素を放出し、エルフはその影響を受けて肌の色が変わってしまうことが挙げられる。

 これらはダークエルフが後天性である可能性が高いことには留意すべきだろう。

 先天性だとしたいなら、例えば突然変異によって魔力の属性が闇になってしまったエルフが生まれたとすればいい。成長するごとに肌が黒くなってしまうのか、生まれた時から肌が黒いのか、そしてその先起こることは作者の好きなようにできるだろう。


   人魚


 さて問題です。人魚の呼吸はエラでしょうか、肺でしょうか。

 答えはどっちでもでもいいのですが、肺呼吸であればいつまでも水中にいることはできず、エラ呼吸であればいつまでも陸上にいることはできないのは頭に入れておきたい。

 無論どちらも持っているハイブリッドでも特に問題はない。ハイギョと言うハイブリッド呼吸ができる魚がいる。

 さて、人魚の多くは上半身が人間で、下半身が魚として書かれる。

 魚の持つ鱗は皮膚が変化したもので、鱗を持たない魚もおり、鱗が完璧に全身を覆っているわけでもない。

 また、鱗を持つ哺乳類もいるので、特に問題がある描写とは言えない。

 気を付けたいことと言えば、色素細胞|(色素胞)の存在であろうか。

 人間とは違って魚が様々な色を持つことができるのは、光吸収性色素胞、光反射性色素胞、光散乱性色素胞を持っているからである。

 人間の肌はメラニン|(黒)、ヘモグロビン|(赤)、カロチン|(黄色)によって決まり、皮膚のもっとも外側であるケラチノサイト|(角化細胞)がメラニンとカロチンをどれだけ含有し、真皮の血管密度がどれくらいかで決まる。

 どちらが基礎となるのか、あるいは境目があるのか、で下半身部分の色はかなり変わってくるので注意したい。

 勘違いしない方がいいことが一つ、尾鰭に相当する部分が足かと言うと、実は違う。

 イルカ、ジュゴン、マナティは人魚のモデルと言われことが多い、水中で生活する哺乳類だ。実は彼らの足は退化していてないか名残があるだけで、実際のところは所謂しっぽだ。

 魚も同じで足に相当するのは腹びれで、尾鰭はしっぽなのだ。

 あとから詳しい話はするが、足と尾鰭を魔法で変化させられる場合、骨格構造から変わってしまうことになるので、下手な設定はしない方がよい。

 自然に設定したい場合は、人間が海に移り住んで、下半身の魔法によって変えているとした方がよい。その方がコストは安く済むからだ。

 上半身がそのままなのは、地上での生活様式上変える必要がなかった。下半身、特に足が大きく発達して水かきができ、そろえる為に魔法かスキルで魚の尾鰭を模した膜で覆っているだけとすると、魔法かスキルを解除するだけで地上での生活も可能だと言える。

 この設定だと見た目は美しく見せることも可能だが、あまりロマンはない。よくある容姿のルーツ的なところに無理がない。


   獣化


 亜人、特に獣人として外せないのは獣化と言うスキルだろう。

 どこまで獣に戻るのかは、それぞれ作者次第ではあるので、獣化で考えるべきは、体への負担と質量の変化だ。

 獣化の利点は力の増大と戦術の変化だ。

 人の形、二足歩行を残したまま獣化では戦術は変化しないが、力の増大は起こる。

 この時、体の一部、あるいは全身の獣化だが、たいてい元の動物を模した変化する。狼であれば、毛が生えるか長くなったり、顔がより狼らしくなったり。場合によっては体格も変化するだろう。たいていは筋骨隆々とした方向で。

 動物の形に獣化した場合、戦術が大きく変化する。力の増大に関しては何とも言えない。

 この時、全身の骨格構造から変化が起こる頃になる。筋組織や脳などの内臓器官にまで及ぶ。

 動物の形に獣化する場合、体への負担は相当なものとなる。それこそ数十世代では済まないような変化を、戦闘でも使いたいなら一瞬で行わないとならない。

 痛みだけで済めばそれでいいが、凄まじい速さで代謝が進むわけで、寿命を縮める行為でもある。

 ということは、獣化のスキルでは寿命が縮まない何らかの秘密と、変化による痛みを抑制するか感じなくする秘密があるということでもある。

 そして、獣化した以上は元に戻る為の人化もあり、これも同様のことが言えるだろう。

 寿命に関する回避方法は魔法あれこれの第四回にヒントがあるのでそれを読んでもらうとして、痛みはどうだろう。

 と言っても痛み止めの薬は存在するし、そもそも痛覚神経を麻痺させるか信号を止めてしまえばいいので特に問題はない。

 問題は質量の変化である。

 筋骨隆々とする変化だとしても、毛が伸びる生えるの変化だとしても、明らかに増えているので何かで補完する必要がある。

 消費されるエネルギーは魔力を使えばいいので、どうとでもなるから私は初めから考えてないが、小説に落とし込む場合は無視していい問題ではないので頭に入れておきたい。

 筋肉の発達は一瞬で行われ、本来の毛の伸び方からすると明らかに早く、物によっては生えてくる。

 スライムのように魔素|(マナ)での補完も考えたのだが、設定次第では使えない場合がある。

 だとすると成長|(進化)条件を与えて時間操作するスキルと言うのが、獣化の本質となるだろう。

 ということは獣化ができる獣人は時間操作と言う相当高度な技術、魔法を使えるということになる。原理が分かって応用できる天才ならと言う話だが。

 質量の変化は動物の形になる場合も同じことを考えておきたいだろう。


   成人と寿命


 人間は時代によって成人とみなす年齢が違い、体の成長度合いに個人差があるので一概に言えないのだが、十八から二十歳で大人となる。ここは二十歳としよう。

 身近な動物を人間にあてはめてみると、犬猫は一歳半、馬は四歳、兎は一歳あたりが二十歳に相当すると言われている。

 平均寿命は人間が七十から九十、犬猫は十五から十八、馬は二十五から三十、兎は五から八くらいと言われている。

 人間は人生の二十二から二十九パーセント、犬猫は八から十パーセント、馬は十六から十三パーセント、兎は十三から二十パーセントが子供の期間ということになる。

 あまり年齢評価していいものでもないのだが、必要なので調べて計算してみた。

 これらから、獣人として人間と同じ平均寿命を手に入れたと仮定すると、成人とみなす年齢が人間と比べてどこまで早くなるのかざっくりわかる。

 元が犬猫なら七歳以上、馬なら十一歳以上、兎なら十一歳以上である。

 エルフは長命として書かれることが多い。

 仮に三百年生きたとして、人と同じであるならば成人年齢は六十六歳以上である。遅く感じてしまうが計算するとこんなものだ。

 先にも言ったようにこれらの成人年齢は人間と同じ寿命になったら、という話である。ということは寿命が違う可能性も出てくるだろう。

 成人年齢を横並びにした場合の寿命を考えてみよう。計算としては二十歳で人生の何パーセントを使ったのか|(人生における子供の期間の割合)と考えて割り出す。

 一様に二十歳で成人した場合の寿命は、元が犬猫なら二百から二百四十歳、馬なら百二十五から百五十歳、兎なら百から百六十歳である。

 意外と長い。

 これは成人してから過ごす時間が元々長いからこうなるということだ。これと同じだと考えればエルフは長命だと言っても違和感はない。

 もし、エルフのルーツが人間と同じだとしても、進化の過程が同じだということにはならない。むしろ環境に左右されるので同じにはならない。


   人化の条件


 ここまで長々と亜人を扱う上で考えることを述べてきたが、根本的に人化がどのように起こるのか、起こったのか分からなければどうにもならない。

 ここでは特に獣人について取り扱う。エルフは既に先の条件でいい。

 人化のもっとも簡単な発生は、何者かの手が入ったこと、即ち作られた存在であること。

 まずは科学的に発生させる方法を考えてみよう。

 人化を促すための平和的な解決法は、共生によって長い時間をかけて人と同じ生活をすることである。生活様式に組み込まれる家畜化やペット化ではなく、完全な生活様式をさせる事である。

 言語、食べ物、行動まですべてである。

 失敗等もあるので軽く千年は必要だろうと推察されるが、これが最も平和的だろう。

 数世代で生み出したいのであれば、遺伝子操作が手っ取り早いか。

 人間の染色体数は四十六、これに対し、犬は七十六、猫は三十八、馬は六十四と乖離があるので単純なかけ合わせは無理だろう。もし同じだったとしても、更に条件は必要になる。

 なので、遺伝子配列の操作、組み換えに行きつくことになるだろう。

 そうなると、まんまホムンクルスになるので、科学だけなら現代よりいくらか進んでいる必要はあるだろう。

 今度は魔法的に発生させる方法を考えたいと思うのだが、設定次第でやりたい放題できてしまうのだが、行きつくところは遺伝子になるので論じるつもりはない。

 では、自然に発生する可能性を考えてみよう。

 人へ進化するにあたり、ほとんどの動物は二足歩行に変化する必要がある。

 二足歩行の利点は視点が高くなることだ。

 体が小さな種類に多いのだが、周囲の警戒の為に後ろ足で体を支えて立ち上がる種類がいる。

 視点が高い程、遠くを見渡せるので警戒を行う為に取る行動としては正しい。そうして二足歩行になっていっても、まぁおかしくはない。

 ただ、体を支える場合、その足は多い方が有利であったりする。足がある分だけかかる負担が分散し、安定するのだ。

 つまるところバランスが悪くなる。視点が高くなることで重心も高くなり、伴うように更なる身体能力が必要となる。また、急所を全面にさらすことになり高い危機管理能力も必要だ。

 二足歩行になることでまず直面する問題だ。

 身体能力は時間をかければ一世代で解決可能な問題ではあるが、世代ごとで習得が必要な継続性が必要である為、それにかかる安全性の確保が必要になる。

 その為、世代を経る途中で諦める可能性を考える必要がある。ただ、ある程度世代を経た段階で戻ることが難しくなる。

 二足歩行によって体が直立することで頭の肥大化が起こり、脳も相応に大きくなって高度な知恵と理性を手に入れる。重量物を支えることが容易になる為で、首が細くなっていくほど余裕があったりする。

 頭が大きくなることによってそれまでの四足歩行に今度は問題がでる。

 動物の頭は体に対して小さくならざるを得ない。これは、支えている足を直線でつないだ方形よりも外にある為、バランスの問題で大きくできないのだ。また、相応の首の太さも必要となる。

 つまり、大きくなった頭を、細くなろうとする首で支えるとこになる。

 これがある程度世代を経ると戻るのが難しくなる理由だ。

 このほかにも利点難点は存在するが、二足歩行になっていく過程で直面するのがこういった問題だ。

 さて、生存戦略の中で資源の確保は重要なファクターとなる。二足歩行はこの資源の確保という点においてかなりの利点となる。

 四足歩行では口で加えて運ぶのが限界となる一方、二足歩行ではさらに手を使っての持ち運びができるようになる。頭にのせてしまうとかなりの重量物を運べるので、運搬と言う利点が資源確保を容易にしてくれる。

 この為、一度二足歩行に進化していくと、恐らく止まらないだろう。

 体に起こる変化として、多くの四足歩行動物の後ろ足のつま先立ちがどうなるかだ。

 つま先立ちの利点はその分足が長くなるので素早い動きが可能となり、足音を消しやすい。

 かかとを付けることで直立時の安定性がまし、場合によってはつま先立ちに変えてつま先立ちの利点を得ることができる。

 その為、基本的には踵は着くことになるだろうと思われる。

 進化の過程、途中経過としてはとある狩猟ゲームが参考になるだろう。素早く動く時には四足歩行に戻り、道具を使う時やゆっくり移動する場合には二足歩行しているのでわかりやすいだろう。


   虫や甲殻類の人化


 長々とここまで引っ張ってきたが、彼らは骨格ではなく甲殻構造なので、考え方を少し変える必要があるだろう。

 まずは虫の人化だが、総じてお腹が大きく、基本的に胸から足が生えているので、最後尾の足がお腹を超える大きさになることが求められる。でないと引きずることになるので。

 昆虫は成長の過程で変態を挟むことがあり、動物とはかなり異なるので、単純には考えられない。

 手足を除いてある程度は可能性のある構造をしており、二足歩行が可能となった時、彼らはかなり有利な存在となるだろう。小さいから分かりにくいが、相応の大きさとなると外皮は相当硬くなる。

 エビやカニなどの甲殻類も、有利性は変わらない。

 カニは頭と体が一体になっているので、人化する為には相当な時間を要する。これはエビも同じである。明確に分かれている部分があるだけましだろうが。

 骨格構造がないわけだはないが、かなり乖離があるので、かなり難しいのではないかと言うのが私の考えだ。

 ただ、二足歩行するところまでは難しくないと考えている。骨格構造はないが、足の外見はそれなりに似ているからだ。

 あとは彼らがなぜ二足歩行が必要だったのかだが、正直なことを言うと思いつかない。

 ジャンプ力が高い種もいれば壁を登れる種もおり、空を飛ぶことも可能だ。子育ては割と放任、唯一言えることがあれば資源の確保の為だろうか。


   胎生と卵生


 胎生は哺乳類のように体の中で一定期間子供を育ててから生む動物を、卵生は卵を産んで卵の中で子供が育って出てくる動物を言う。

 基本的に元の動物がどうなのか、で決めてしまえばいいが、進化の過程で変わることは十分に予測できる。せっかくなので、一度に産む子供の数についても考えよう。

 胎生と卵生はそれぞれ一長一短で、混在しているということはそう言うことである。また、卵胎生と言って、卵だが体外に排出せずに親の体の中で生まれてから外へ出てくる形をとるものもいる。

 胎生の場合、親は長期的にまんべんなく栄養が補給できればいいが、その分身重になるので安全性の確保はある程度必要になる。ただ、直接的な脅威から子供は守られている。

 卵生の場合、親は卵に栄養を溜める必要があるので、時期が来ると大量の栄養が必要となる。胎生と違って安全性の確保はそれほど必要ないが、子供は直接的な脅威にさらされている。

 人化することによって安全性の確保が容易になり、食料が安定的に確保できる場合、子供の保護という観点から、卵生は卵胎生を経て胎生に変わる可能性は否めないわけだ。

 なので、特に鳥人や竜人あたりが卵ではなく子供を産んでも特に問題はなかろう。

 さて、一度に産む子供数だが、傾向として生まれてくる子供が大きいと一回一匹となっている。つまり、どれくらい未熟なのか、ということでもある。

 多産の良さは一匹が生き残る確率の高さである。これは、生存に有利な子供が生き残りやすいので、選別的でもある。

 種の繁栄に置いて、生き残ってくれなければどうしようもない。そこで、きっちり育ったうえで産むために一匹を生むことにしたのか、生き残る確率を高める為に多産にしたのかという違いだ。

 人化してどうなるかは正直分からないが、多産だと爆発的に数が増える可能性が出てきて、資源の枯渇を招くので一度に産む子供数は制限していく可能性はあるだろう。


   後書き


 長すぎとは思ったのだが、分けることを前提として書いていないので、このまま公開に踏み切らせていただいた。申し訳ない。

 擬人化文化がある以上、割と真面目に考えてみたが、説明さえちゃんとしていれば、亜人はいてもおかしくはないなぁと言う感想だ。

 まぁ、その分、納得のいく説明のない物語って結構多いなぁと言う感想もある。

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ファンタジーの為の異世界解体新書 紫隈嘉威(Σ・Χ) @Siguma_Kai

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