第二回 精霊と妖精
前書き
予告通りに、精霊と妖精について扱う。
精霊と言えばサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームが有名であろうか。
妖精と言えばケット・シー、ケルピー、ウィルオウィプス、羽を持つ小人当たりであろうか。
そんな彼らの生態はどうなっているのだろうか。
相違と共通
精霊と妖精に共通しているのは、存在が超自然的であり、種族としてみると共通した形のない不定形であることでる。
サラマンダーはトカゲ、ウンディーネは人型、シルフは人型、ノームは小人型と姿の統一感はない。
ケット・シー、ケルピーは動物系、ウィルオウィプスは不定形、残ったのは言わずもがな。
また、エルフやドワーフ、リリス、ゴブリン、妖怪、竜なども、広義では妖精として扱われる。
この為、精霊族、妖精族として見た場合は不定形と言えるだろう。
精霊と妖精には決定的な違いがある。
精霊の体はエーテルのみで構成される擬人的な自然霊、霊と人間のどちらにも似た存在とされている。エーテルは天界、神々の住まう世界を構成する物質とされている。
サラマンダー以外はおおよそ人に近い形で書かれることが多く、当のサラマンダーも時として美しい女性として書かれる。
妖精は広義からわかる通り、精霊のような決定的な定義が存在していない。一説には天使から降格を受けた存在とも言われ、ノームが妖精として扱われることからも、精霊を内包することもある。
つまり、妖精とは、超自然的存在の総称であり、精霊はその一部ということになる。
妖精
妖精を広義で扱うととんでもなくめんどくさい。
ファンタジー世界では、エルフやドワーフは亜人と言う人族の一部として、リリスやゴブリンはモンスターとして扱うことが多いのではなかろうか。
つまり、意図して妖精を出したいのであれば、広義を使おうとするのならば、人族以外の定義を持たない種として出さざるを得ないだろう。
狭義で出すとどうなるのだろうか。
モンスター、即ち魔獣がいる世界であるのならば、ケット・シー、ケルピーと言った動物系とウィルオウィプスと言った不定形は少し出し辛いだろう。超自然的存在であるならば、見た目も含めた生態を外してやる必要がある。
体を大きくした場合、レアリティと言う意味での特別感を持たせるのはかなりつらいので、この方向を使う場合は相当難儀するだろう。巨人族の眷属としてしまえばいいのかもしれないが。
体を小さくすると、数を制限するだけで特別感が出る。
羽をつけてもよいだろう。飛べるというだけで、途端に居場所が確定しなくなる。
魔獣がいなければ、作者のやりたい放題にできるだろう。
羽を持った手の平大の人とすると、作者のやりたい放題にできる。魔獣との住み分けも簡単で、妖精の広義で出てきたゴブリンやドワーフとも容姿が異なり、小人であることに違いないのだが、手の平大では小さすぎる為である。
精霊
四大精霊が有名なのでサラマンダーたちを取り上げているわけだが、結局のところは自然に宿る魂が形を成して意思を持ったものを言う。その為、神道の八百万の神々が割と近く、宗教的信仰を寄せられる特徴を持っている。
なので、実は妖精よりもやりたい放題できる。
そもそも、有名どころの名前を出さなければ、自然に宿る魂が形を成して意思を持つ以上の定義がないので、容姿から名前まで好き放題にできる。
ただ、やりたい放題できる分、説明責任は重くのしかかる。次に上げる分を説明するだけなのだが。
命名の行われ方。
なぜその形をとるのか。
何の精霊なのか。
この三つである。最後は非常に簡単で生い立ちに過ぎない。形については何に影響されたのか考えれば難しくはない。
問題は名前だろう。
主人公と会う分に関しては、精霊自身に名乗らせればいい。あるいは契約で名前が必要で、それまでは名無しだとか、出すだけなら簡単である。
なぜその名前なのか、と言うのは、元々持っていた場合は疑問が残る。
神や管理者がいれば彼らからつけられたと言ってもいいだろう。また、地名の古い呼び名が名前になってもよい。人の名前や動物の名前が地名からくることもしばしばあるからである。
生態
やっと本題に入れるわけだが、生態を考えるうえで最も重要なのは、彼らの体は何で構成されているのかということだ。
まずは妖精から見ていこう。
もし、妖精の体が物質で構成されていたとしよう。
この場合、どこまでが生物でどこまでが無生物なんて議論が必要なる。妖精は生物と言っていいのかも含めて。長くなりすぎるので、これは一先ず置いておこう。
生物のように、有機物や無機物の物質を主体とした構成ならば、おのずと細胞が存在し、器官がありなんていう話になる。
この場合考えられることは、
物理的接触が可能
維持の為のエネルギー摂取が必要
寿命がある
何らかの生殖方法がある
鳴き声か言語
姿隠蔽に魔法は必須
このあたりだろう。
妖精の代名詞と言えば『いたずら』だ。
物理的接触が行えなければ『いたずら』すら魔法で賄う必要が出てくる為、説明すべきことが増える。分かっていないとごまかすことはできるが。
その代わり、体を維持する、即ち生きていくためのエネルギー摂取が必要になるので、『いたずら』はここを中心に展開することができる。
同様の考えから寿命が存在し、体が物質からできている以上は、いつか崩壊する時が来る。
その為、種族維持が必要となり、無性生殖か有性生殖による子孫を残す構造を持っていると考えられる。
言語はさておき、鳴き声に関してはあったほうがいいだろう。虫からの派生ではかなり厳しいのだが。鳴く虫として有名な鈴虫やコオロギは羽を震わせて音に変えているので、鳴き声とはいいがたい。
物質的な体を持っている以上は、開けたところで姿を隠したいのなら魔法は必須だろう。その際、光を屈折するなどした光魔法で十分とは言い難く、サーモグラフィによる看破に対抗するための魔法を持たせておきたい場合もある。
さておいた言語に関してだが、それよりも高度な知能を持てるのかどうかをまず考えたい。
手の平大の妖精であるのなら、当然それだけ頭は小さくなる。知能と頭の大きさ(重さ)が比例関係にあると言う報告はあるのだが、一方では、それを反証するような例もある。また、人間は脳の十パーセントほどしか使えていないと言う研究結果もある。
つまるところ、自分の脳をどれだけ使えるかによるので、深く考える必要はない。
それだけ使いこなせるのであれば、相応の栄養が必要になるので、甘いものが好きと言った描写はしておきたい。
では、妖精の体が物質からできていない場合はどうなるだろう。
考えられる構造は
エネルギーの集合体
魔素(マナ)の集合体
物質ではないと言っている以上はこの二つしかないだろう。
エネルギーの集合体である場合、エネルギーはどうやって集まっているのか、何のエネルギーなのかを解決する必要がある。
静止エネルギーを除いてエネルギーは基本的に霧散する性質がある。その為、エネルギー自体を打ち出す構造は未だ開発されていない。
素粒子を使えばできないことはない。人間の目で素粒子を見ることができないのはあまりにも小さいからにすぎない。とは言え、素粒子は物質なので疑似的な物でしかない。
ということは新たにエネルギーを生み出すしかない。
魂の下に集まる疑似生命エネルギーと定義するとよいだろう。生物を形作るような働きを持ったエネルギーと。
魔素(マナ)の集合体は、私が魔素を物質、粒子として扱った上で使った設定である。物質と言っているので該当はしないが。
魔素(マナ)自体が架空の存在なので、定義次第になるだろう。
この方法は正直なことを言えば思いつかない。
魔素(マナ)の正体が自然エネルギーだとするのならば、エネルギーの集合体と大差はない。
それ以外の非物質は精神ぐらいしか思いつかないので、魂そのものが魔素(マナ)の影響を受けたぐらいだろう。
では、精霊はどうだろう。
最初の方で、天界を構成するエーテルと言う物質で構成されていると言ったので、物質的存在だとわかる。
世界を、天界を構成する物質なので、天界が存在し、神も存在することになる。
エーテルは変形せず永遠に回転し続ける性質をもつとされ、実際に観測された物質ではないので、作者の自由に扱ってよいだろう。
そもそも、精霊自体は架空の存在なので、私がそうしたようにこの定義自体は外してやりたい放題にしてよい。
生態については、エーテルのみで構成されているのなら、エーテルが崩壊しない限りは死なないし、天界に行って構成するエーテルを入れ替えて寿命を延ばせるし、そうしていることは考えられる。
永久の時を生きる、ある意味では全知存在に最も近いと言えるだろう。
定義を外した場合は妖精と考え方は同じになる。精霊も広義では妖精である。
後書き
本項に関しては単純にめんどくさかった。
妖精を生物とするのかそうでないとするのかで扱いが全く変わるのだ。
次回は、ファンタジー世界に頻出する生物、モンスターの代表格、スライムについて扱う。
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