混浴……!?

 予約は彼女がしてあるのでスムーズに部屋へと案内された。

 「汗かいたし、温泉行こうか」

 「そうだね。温泉に浸かってゆっくりしよう」

 「せっかくだし、一緒に入ろうか?」

 「は? 入るわけねえだろ」

 「女子高生の裸見たくないのかー?」

 「せめてバスタオルを巻いてくれよ」

 「バスタオル巻くなら入るの?」

 彼女は真顔で聞いてきた。

 「そんなに君が僕と入りたいならいいけど?」

 「え?」

 自分で持ち込んだ話題で顔を赤らめるのは彼女のお決まりだ。

 「君が持ちかけたんだろ。冗談だよ」

 部屋を出ようとすると、後ろから服をつままれた。

 「……入ろう。タオル巻くからさ」

 彼女は俯きながらそう言った。


 「体洗うからあっち向いてて」

 あのあと嫌とは言えない雰囲気になり、本当に一緒に入ることになってしまった。

 「最初っから見てねえよ」

 高校生がこんなことしていいのか?僕は犯罪を犯しているのではないかと心配になった。

 後ろから彼女が温泉に入ってくる音が聞こえた。

 「なんだかドキドキするね」

 「だね」

 僕も彼女も背を向けながらぎこちない会話をした。

 「私何カップだと思う?」

 「しるかよ」

 「当てたら見せてあげる」

 「興味ないからいい」

 「じゃあこっち向きなよ」

 「君こそこっち向いたら?」

 実はちらちら後ろを確認していたので彼女が後ろ向きなのは確かだ。

 「君が当てたら向いてあげる。タオル外して」

 タオル外して、をやたら強調していう彼女は、よほど自分の胸に自信があるようだ。

 「当てられて怖気づくなよ」

 「興味ないんじゃなかたっけー?」

 彼女はいちいち挑戦的だ。ここの温泉は濁っていてタオルを外しても見えやしない。

 「C」

 答えたが反応がない。まさか?

 「ざんねーん! Dでした!」

 ほっとした自分とどこか残念がっている自分がいる。

 「はいはい。そろそろ上がろう」

 夏の温泉は気持ちいが、長居は出来そうにない。

 「僕、先に出るから」 

 あそこ以外隠す必要がないから別に見られてもいい。立ち上がりちらっと彼女の方を見ると、タオルを頭に巻いていた。

 彼女はにやっと嫌な笑顔を見せてきた。おそらく浸かっている部分にタオルはない。

 「当たってんじゃん」

 そう言って更衣室へと向かった。

 着替えて、彼女を待つ間ソファに大仰に体を預けて座っていた。

 彼女は出て来るとすぐに牛乳を買って、きゅーっと一本飲みほした。

 「いい飲みっぷりだね」

 「いやぁ、風呂上がりの一杯は格別ですなー」

 僕も彼女に続いて牛乳を飲んだ。

 部屋に戻り、食事を終えると、僕たちは外に出た。

 「涼しー」

 標高が高いせいか、夏の山奥は涼しいと言うか肌寒い。

 「頭の中、お花畑な人は体温が高いんだね」

 「君が弱弱しいだけだよ」

 旅館の明かりが見えなくなるところまで行き、夜空を見上げた。

 「……きれい」

 どこまでも続く星空に、つい声が零れた。

 僕たちの頭上には雲一つない、無数の星々が輝いている。

 「これも、リストの一つ?」

 「うん。前に家族でこの旅館に来た時、たまたま散歩してたら見つけたの。私がもう一度見たかったってのもあるけど、一番は君にも見せてあげたいなって思ったからこの旅館にしたの。」

 「……そっか」

 「死んだら私も星になるのかな」

 「君が星になったら主張が激しくて一番光ってるかもね」

 「なにそれひどーい。まあでも私が一番輝くかもね。あははっ」

 薄暗い夜の中でも彼女の笑顔は、はっきりと輝いて見えた。

 「普段パソコンの画面ばっか見てる君の目にはいいリフレッシュになったんじゃない?」

 「誰かさんのせいでその時間がより長くなったけどね」

 嫌味ったらしく言うと、彼女はふけない口笛を吹いて知らん顔をしていた。

 「それにしても、本当にきれいだね」

 「でしょっ」

 彼女は得意げに笑った。

 「そろそろ編集しないと。戻ろう」

 この旅館はWi-Fiが無料で使えるので動画編集が出来る。パソコン持ってきてよかった。

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