9.結末の処理
「ノエル様はその件についてご存じなのですね。それで相談とは?」
「どうやらあの二人がこの国に戻って、一波乱起こそうとしているようなんだ」
まだ諦めていなかったのね。そのやる気を他のことに使ってほしいものだわ。
「具体的には何をしようとしているのですか?」
「ミシェルに加担していた主席神官がいただろう?彼の手引きで国に戻り、結界を破壊しようとしているらしい」
「そんなことですか?彼らに破壊されたりしませんよ」
たかが主席神官だった彼に、魔力で負けることなんてあり得ないわ。ユーゴとミシェルと三人がかりでかかってきても、負ける気がしない。
「普段の君なら負けないだろう。だが、国外の魔獣を引き連れてくるとしたら?」
「魔獣ですって?そんなにすぐに捕まえられるものですか?」
「彼はたびたび国外で魔獣を手懐けていたようです」
なんて面倒な人。神官を名乗っておきながら魔獣に手を出すなんて。だけど主席神官と魔獣に同時に攻撃されると、面倒なことになりそうね。街の人々を危険にさらすかもしれないし。
「それは少し厄介ですね……。ではこちらから先手を打ちましょう」
「先手?」
ノエル様とともに、国外の森に足を踏み入れた。おそらくこの森に魔獣をかくまっているのだろう。彼らが国に戻るより先に、魔獣を討伐してしまいましょう。
「ノエル様、魔獣の気配を感じたら、すぐに下がってくださいね」
「何言ってるの?僕が女性を盾にする訳ないでしょ。……っと、あれじゃない?」
ノエル様が指し示した方向には、狼のような魔獣が大木に繋がれて眠っていた。魔法で隠してもいないなんて、彼は油断し過ぎね。
「あれのようですね。私が討伐しますので……ってノエル様?!」
横を向くと、ノエル様はすでに魔獣に向かって走って行ってしまった。止めなきゃ……と思ったのもつかの間、彼はあっさり魔獣を切り刻んでしまったのだ。おそらく魔剣を使っているのだろう。切られた魔獣は光を放って消滅してしまった。
「はい、討伐完了~」
「……ノエル様、なぜそのような力があるのに、私に相談しに来たのですか?」
それだけの力と情報網があるのなら、一人で対応してくれれば良いのに……とまでは言えなかった。一応第二王子だし、不敬を働いてはいけないものね。
「まあまあ、いいじゃない。無事討伐出来たんだし」
まったく第二王子はよく分からない人だ。確か私より少し年下だけれど、頭は切れそうだし、魔力や剣の腕もかなり強い。あのユーゴの弟とは思えないわ。
まあでも、こんな弟がいるならこの国も安泰ね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます