8.つかの間の休息

この間と違って暗闇ではないから、帰り道はとても歩きやすかった。


「ただいま戻りました」


家に帰ると、前と同じようにお父様が待ち構えていた。


「どんな見返りで闇を晴らしたのだ」


やはり挨拶なしですか。よっぽど気になるのね。


「これまで通り、私が聖女として役割を果たすことを約束して参りました。また、第一王子と偽りの聖女については、国外追放となるようです。それから……お父様を宰相の地位に就かせるようです。今後このようなことが起きた時、すぐに対応できるように」


「なるほど……中々良い条件じゃないか。よくやった。だが、今回のような失態は二度と起こさぬようにな。あまり他人を信じすぎるなよ」


「ありがとうございます。今後、気をつけますわ」


お父様は思った以上に上機嫌ね。まさか宰相にまでなるとは思ってなかったみたいだし、国王様々だわ。


「だが王子との婚約が無くなったのだから、また新たな相手を探さねばな」


もう変な人との婚約は懲り懲りよ。まともな人を紹介してほしいものだわ。


「お願いします。……ですが、次回は問題のない方を是非」 


これくらいの皮肉くらいは許されるでしょう?今回のことはミシェルも最悪だったけど、婚約者がユーゴでなかったら別の結末になっていたはずだもの。


「そうだな相手は入念に調べてから決めるとしよう。……今日はもう休め」




お小言が少なくて助かったわ。もうヘトヘトだもの。まだ王族への周知が残っているけれど、今日はもう何も考えたくない……。




気がつくと翌日になっており、朝食の時間も過ぎていた。どうやら自室に戻った後、すぐに眠ってしまったようだ。久々にぐっすり眠ったおかげで、すっかり疲れはとれていた。いつもなら起こされるが、今日は寝かせてくれたのだろう。


今日は予定もないし、のんびり過ごそうかな。そう思いながら部屋を出ると、使用人に呼び止められた。


「お嬢様、ルーファス様という方がいらっしゃっていますが、お会いになりますか?ご学友とのことですが……」


ルーファス?そんな友人いないけれど……。昨日の今日だし、怪しいわね。


「一応会うわ。ただ、扉の前で待機していてちょうだい」


「かしこまりました」




客間に入ると、黒髪の見慣れぬ男がいた。小柄だし、いざとなれば勝てそうだけど……何の用かしら。


「お待たせしました、ルーファス様。私にあなたのような友人はいなかったはずですが」


「急な訪問で申し訳ありません、時間がありませんでしたので。……それと、僕はルーファスではありません」


ルーファスと名乗っていた男が髪の毛に手を当てると、髪の色が金色に変化した。この方は……!


「お久しぶりです、フローラ。僕のこと、覚えていますか?」


「ノエル様!第二王子がなぜ?」


我が家にやって来たのは、第二王子ノエルだった。


「ユーゴとミシェルの件で、謝罪と相談が……」


どうやら、休息はもう終わりのようです。



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