7.二人の言い分
声がした方を振り返ると、ユーゴとミシェルが立っていた。
やっと交渉がまとまったのに……面倒くさいことになったわね。
「陛下、私はそこのフローラに騙されていたのです!私は彼女に無理矢理聖女のフリをさせられていたのです。それを告発するために、今回の騒ぎを起こしたのです。彼女を罰してください!」
ミシェルが潤んだ瞳で国王に必死に嘆願している。その言い訳は少し苦しいんじゃない?
「父上、僕もミシェルもフローラに踊らされていたんだ!彼女は、僕たちが騒ぎを起こすように仕向けたんだ。僕たちのことが気に食わないから、追い出そうとしているんだ」
……バカバカしい。第一王子ってこんなに頭が弱いのね。こんな人が国王にならずに済んで良かったわ。
「私がそのようなことをする理由がありませんわ。ミシェルに聖女のフリをさせて、私に何の得があるというのでしょう。王子のことが気に食わないというのも、言いがかりです。婚約してから、ほとんどお会いしていませんでしたのに。……陛下、誰の言い分が正しいか明白ですよね?」
黙って聞いていた国王は、静かに口を開いた。
「これ以上聖女様を侮辱するのは、この私が許さない。そのような稚拙な言い訳をするのは見苦しいぞ。聖女様は、お前達を国外追放するだけで許してくださるそうだ。さっさと下がりなさい」
「そんな……」
「父上……」
がっくりとうなだれる二人を兵士が連れて行こうとする。
「ユーゴ、お前には失望したぞ」
国王が第一王子に投げかけた最後の言葉は、それだけだった。
「フローラ、絶対に許さないわ!私を裏切るなんて……。覚えてなさい、復讐してやる!」
連れて行かれる時、ミシェルは私に向かって叫び倒していた。
本当にうるさいわね。自分がしたことをもう忘れてしまったのかしら?
「国王に信じてもらえなくて残念だったわね。あなたが先に裏切ったから、こうなったのよ?本当はもっと酷い目に合わせあげたかったけど、追放だけにしてあげる。……私は聖女だからね」
ミシェルに近づいて耳元で囁くと、彼女は暴れ出した。兵士達に押さえつけられて、無理矢理連れられていった。
やっと終わったわ。帰るとしましょう。
「では私も失礼いたします」
「最後に邪魔が入って申し訳ない。また日を改めて他の王族に紹介しよう」
「はい、よろしくお願いします」
国王にも少し疲れが見えていた。それもそうか、国の危機回避と愚息の処理を同時にしたのだから。
私も慣れない交渉で疲れてしまったわ。さっさと帰って休みましょう。お父様への報告もあるけれど、上々の結果なので、すぐ済むはずだしね。
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