6.偽りと真実

ユーゴが言っていたように、翌日国王の使者がやって来て、私を再び宮殿に呼び出した。


到着すると、謁見の間ではなく庭園に通された。そこでは国王がお茶を飲みながら座っていた。


呼び出されたのは私一人のようね。それにしても、今日はお茶会のお誘いだったかしら?こんな暗闇の中でお茶会だなんてごめんだけれど。


「こんな場所に呼び出してすまない。謁見の間には貴族達が集まってきて、騒がしくてな」


なるほど。闇がこの国を覆ってから何日も経つのに、一向に原因が分からないから、貴族たちが話し合いに来ている訳ね。


「構いません。私も煩わしいのは苦手ですので」


座るように促されたので、私も席につく。国王とお茶を飲むことになるなんてね。


「呼び出したのは聖女の件に他ならない。聖女を名乗っていたミシェルは、この闇を晴らせないそうだ。愚息からはフローラ・クレマンこそが真の聖女であったと報告があった。レディフローラ、直接話してくれないか?聖女とこの闇について」


もうミシェルは音をあげたのね。


「私がこの闇を呼び出しました。偽りの聖女と第一王子に侮辱されましたので、自分の潔白を示すために聖女の力を使ったのです」


「そうか……それでレディ、いや、聖女様はどのような結末をお望みかな?」


直球な質問ね。ここが勝負どころかしら。幸運なことに、ここには国王と私しかいない。良い印象を与えやすいだろう。


「陛下、私は何も望みません。陛下がお望みなら、すぐにこの闇を晴らします。もちろん私は今まで通り聖女としての役目を果たしましょう。……第一王子と偽りの聖女、主席神官の処分はお任せしますわ」


「なるほど。……ではユーゴとミシェルは国外追放、主席神官は資格剥奪としよう。どうかね、すぐに闇を晴らしてくれるか?」


国王が私に頭を下げてきた。あの二人は追放すると言うし、このあたりで手打ちかしら。


天に手を掲げると、闇が手に吸い込まれていく。国王に見せておけば、もう偽聖女が現れることもないでしょう。


あと少し、念押しだけしておきましょう。


「私がこれまで顔や名前を公開せずにいたのは、私が公爵家の人間でもあるからです。クレマン家の権力が増せば、貴族間のバランスを崩すことになります。それを危惧していたのですが……このようなことが再び起きないとも言い切れません。やはりフローラ・クレマンが聖女だと、公表しましょうか?あまり気乗りはしませんが」


「レディ、心遣い感謝する。聖女の件については、これまで通り公表しないように。ただし、王族には周知させておこう。そして、クレマン公爵には宰相の地位を与えよう。そうすれば、このようなことは二度と起きまい。いかがかな?」


そう来ましたか。確かに王族が知っておけば問題ないでしょう。それにお父様が宰相になれば、いざという時、罪人にされることもないわね。


「問題ありませんわ。では、私は今までと同じようにいたしましょう」


そう言って席を立とうとした時、聞きたくない声が聞こえてきた。




「父上、お待ちください!私とミシェルの話をもう一度聞いてください!」

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