5.ユーゴの言葉
暗闇が国を覆ってから三日後、ユーゴの使者がやって来て、宮殿に来るように言われた。国王からではなかったので無視しようとも思ったが、念のために応じることにした。
「私は国王に伝言を頼んだはずですけど、何故あなたに呼ばれたのでしょうか」
「君に話があるんだ……。父上と話す前に、俺の話を聞いてくれ!」
必死の形相で頼み込んでくるユーゴは、この間とはまるで別人のようです。私のことをあんなに蔑んだ目で見ていたのに。
「聞くのは構いませんが……私はいつ国王とお話ができるのでしょう?あれからもう三日も経ちますのに。この国は聖女が必要ないのかもしれませんね」
「そんなことを言わないでくれ。明日にも父上から使いが来るだろう。だからその前にどうしても君と話したいんだ」
どうせユーゴがギリギリまで伝えていなかったのでしょう。それに、今日の話はきっとユーゴの独断なんだわ。……面倒ね。
「分かりました。それでお話とはなんでしょう?」
「聖女について、ミシェルから本当のことを全て聞いた。俺も彼女に騙されていたんだ!だから……許してくれ」
まあ!ユーゴも騙されていたのね!可哀想に……なんて私が思うとでも?おめでたい方ね。
「ミシェルに何を聞いたのか知りませんが、私に確認も取らず断罪したのはあなたの意思なのでしょう?本当に悪いと思うのならば、国王のいる場で正式に謝罪してください」
「そんなことをしたら……僕は……」
要するに、自分の過ちをなかったことにしたいのでしょう。誰もいないこの場で許してもらって、公の場ではミシェルだけを罪に問おうという算段ですね。
「あなたにどのような処分が下るかは、国王陛下がお決めになることですわ。私はこの場で謝罪を受け取る気はありません」
「……っ!君だって皆を欺いていたじゃないか!ミシェルを祭り上げたのは君だ。君も罪に問われるぞ!でも僕を許してくれるのなら、僕も君を許そう。お父様には君に罪はないと助言してやる。」
見苦しいですね。ユーゴに許してもらわなくても別に構いませんのに。
「その通りです。それに関する罰があるのならば、受けましょう」
私がそう言うと、ユーゴはがっくりとうなだれた。
「そんな……君は僕の婚約者だろう?助ける気はないのか?」
「あら?おかしいですね。三日前は『元』婚約者だとおっしゃっていませんでしたか?てっきり婚約は破棄されたのだと思っていましたわ。……それに、最初から私のことを鬱陶しがっていたじゃありませんか」
もうユーゴは何も言わなかった。
「お話はそれだけなら、帰らせていただきます。明日以降の正式な場でお会いしましょう」
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