第23話 え?私が痩せ?
言葉の選び方一つで相手に与える印象も受け取る印象も随分と変わるものだ。
私は、素直といえば言葉が良いが、物事の裏を考えないで受けとってしまう脳天気なやつである。
こんな感じの人は得てして、世渡りが下手で損をすることが多い気がする。
訳あって、保険のきかない健康診断を受けなければならなくなって検診ができる病院に行った。
腕を自分で突っ込んで測る血圧測定機で自分で測定、骨董品のような身長体重計で身長と体重を測り、尿検査、
X線、聴力、心電図、血液検査、超ベテランという域の看護師さんにお世話になった。
しかも、古くて歴史ある病院の設備は、進化を遂げることなくあり、いらっしゃるのはご老人ばかりだった。
検診に来る病院を誤ったかも・・と思ったけれど、仕方がない。
検診で死ぬことはない。
最後は、問診。
やけによくおしゃべりをする医師は、きっと、検査代金14,320円がそれなりだと言う気持ちに
させるために配置されているのではないかと思うほど愛想のよさげなおっちゃんな感じの人だった。
もちろん私もおばちゃんだけど・・・・。
「いやあ、言いたくなければいいのですけれどね、なんで健康診断を受けられるのですか」
「あ、ちょっと」
「なるほど、答えたくなければいいのですが、これまではどのようなお仕事を?
いやあ、私もあなたと同年代なもので・・ははは」
と。弾丸のように質問が続く・・・
そして、
「いやあ、すみませんね、無駄話ばかりして・・じゃ、本題に・・血液検査の結果は・・」
「一つHがついていますが、こんな数値は全く気にしないでいいです」
「BMIは理想的な数字ですし、腹囲はお腹が出ているというほどでもないし、全く問題なしですね。」
次に出てきた胸部X線の写真を見ながら、
「いやあ、レントゲンを見る限りでは痩せ体型ですよね。ん〜。痩せですよね」
痩せてると言われることのない私にはちょっと嬉しい言葉だけど、そこはかとなく違和感が漂う。
「はあ」
「レントゲン上では痩せ体型です」
この人はなんで3回も痩せというのだ?
確かに私は男性顔負けの骨太で、
骨格が非常に立派なタイプである。
なので、「痩せ」という言葉とは無縁の生活を送ってきた。
で、思い当たった!
この人は、私の胸が貧弱だと言っているのだ!
3回も「痩せ」を強調して・・・
流石の私だって気がつくでしょ。
この後の聴診器は服の上からだったので、許すことにはするが・・・。
「あなたは女性的魅力に欠けますね」
と言いたかったわけなのね。
なんと失礼な医者!
だが、私は大人だ!
診察が終了したときには笑顔で
「ありがとうございました」
を忘れない。
偉いぞ!自分!
簡素な健康診断の割にはたっぷり2時間半もかかった・・
殆どは待ち時間だったけど・・
帰宅後は思いっきりお昼ご飯をかき込み、
なんだか気持ちが収まらなくて柿とオリーブの花(関西に売っているお菓子)をヤケ食いしてしまった。
これじゃ、痩せるわけないわねー
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