第12話 髪は20代!!

「おはようございまーす」


「おはようございます」


朝の職場に飛び交う「おはよう」の挨拶の声・・


『さむ~!こんなことならパッチ履いてくるんだった・・(涙)』


と心が後悔の声を叫ぶ・・・


そんなおばちゃん臭いことを考えながら、


おもむろにひざ掛けを巻きつけていると、隣の先輩が


「あ~海外旅行行きたい!」


と天井を見上げるようにしての賜った。


「え~!海外旅行ですか~!何回も行かれてるんですか~。すごいなあ」


「いやいや、そんな、ちょっとよ。ほんのちょっと、数回よ・・」


「韓国とか、マレーシアとか、中東とか・・」


照れるように口ごもりながらも、


何度も海外旅行に行っているということが分かる口ぶりはさすが・・


いやあ・・リッチだ!実に優雅!


なるほどそういえば、以前にも外貨による投資信託で少し


(こんな場合の少しは絶対にかなりという意味だ・・


想像もできないけどきっと10万や20万ではない気がする・・)


利益が出たとポロリと言われていたっけ。


「海外って行ってみたい気もしますが、なんだか怖い気もして・・」


「何だろう・・私の場合は単なる現実逃避よ」


「現実逃避ですか~?」


「そうよ、誰も知った顔に会わない、違う文化、違う景色、違う人間・・


それだけでワクワクするじゃない?


ホテルでは一切おさんどんなし、


好きなときに寝て、好きなときに起きる!」


「そういうもんですかね~」


「そうよ。それに一人だから気も使わないし・・」


「え~!一人で海外なんてそれこそ危険では?」


「あ、こっちを出るときは一人でも、向こうで一緒になる人がいるのよ。


ケチで食事なんかはファーストフードでいいから色んなとこ回りたいとか、


そういう価値観がよく似た人が・・」


「なるほど~。旅仲間がいれば心強いし、楽しいそうですね~」


「あ~、早くこのコ○ナ生活が収まってほしいわ。」



制約された生活には、慣れてきたけれど、


大好きな仲間とのバーベキューの参加をつい最近も

断念したところだった。悲しい。


海外旅行なんて、夢のまた夢~。



そしたら、先輩が私の方をみて言った。


「あなた、髪は20代よね~」


え?これって褒められてる?


突然のことだから、どう取るべきか分からん・・・と戸惑いながらも・・


正直、嬉しい!


が、ここは謙遜するところか・・・というか、20代って、あり得ない褒め方だよねー普通なら。


「え~!20代はちょっと、厚かましいですよね~」


「艶があってほんと、20代といっても大丈夫」


100%お世辞と分かっていても、なんだかいい気にになっちゃって有頂天になる単純な私は、


途端にパッチを履いてこなかったことなど忘れて


若くなった気分になったのだった。


それにしても、髪を褒めるなんて、さすが先輩!


実際、顔にはシワやシミなど現れて、あり得ないってなるけど、髪なら、たとえそんなことはあり得ないとしても、そんなこともあるかも、と思えるギリギリ?


さすが先輩、分かってらっしゃるというところ。


相手も嬉しくなるし、髪限定で褒めるなんて高等テクニックだ!


先輩から、学ぶことは多い!


日々勉強、日々修行!

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