地蔵の独り言 (ほのぼの)
私は裏山のてっぺんへと続く道に、ぽつんと立っている地蔵である。
そう。
地蔵にも心があるんだよ。覚えておいてね。
裏山のてっぺんには高校があり、毎日そこの生徒たちが私の前を登下校していく。休日や夏休みも部活があるから、彼らの顔を見ない日はない。
彼らにとってみれば「毎日地蔵見てる」となるのだろうが……。
「おはよー、にこにこ地蔵ちゃん! 今日も可愛い~。私も可愛いでしょ? 今日のヘアスタイル、かなり決まった! これでテストも頑張れちゃう! それに昨日可愛いサンダル買ったんだー、履くの楽しみー。じゃあねーにこにこ地蔵ちゃん」
「ああ、泣き地蔵か……。今日もいつも通りしけた顔してるね。僕も一緒さ。テストのヤマはきっと外れるし、彼女とはうまくいってない、近いうち振られるだろうし、部活もどうせレギュラーになれない僕さ……じゃあね」
「よお、怒り地蔵! くそつまんねー毎日だな! どうしてつまんねえ学校なんか行かなきゃなんねえんだ? 家でゲームしたいのに親がうるさいし、どいつもこいつも俺のこと、まったく分かってねー! はー、腹立つわ」
「おはよう、のんびり地蔵さん。毎日私たちを見守ってご苦労様。山の空気が気持ちいいねえ……、はっ。いけない、遅刻しちゃう」
私の名前は「百面地蔵」。
見る人の心持で、私の表情は変わる。
いつもポジティブなあの女子生徒はにこにこ顔に、逆にネガティブなあの男子生徒は泣き顔に。
いつもイライラしていれば怒りの顔に。のんびりマイペースな人には穏やかな顔に。
私自体は、毎日毎日微笑ましく、君たちの姿を見ているんだけどね。
地蔵だから、心はあっても顔に出ないらしい。
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