第2話 侵入と浸食

それは、空から落ちてきた

それは邪悪なるマモノを次々と屠り

我々は感謝した。


だが、それは次に我々を襲い始めた。

鉄の獣たち…


マキニの書 第二章2節



『ハァ…ハァ…なんだったんだアレは…』


息が、動悸が なかなか収まらない


『あんな魔物、この辺で見た事なんかないのに…』


黒い歪な奴だった…腕なのか、触手なのか伸ばして来て

とにかく早い。


怖い、魔物も怖いが、それよりも何か心の奥底から震え上がるモノが


『うっ…くっ』


そうだ、自分の事だけじゃなく、彼女も


『大丈夫ですか? 隊長さん…』


『…生きてはいるが、なかなか深手だ これは、少しマズイな…』


出血が多い…、長時間は持たないぞ


『すみません、僕を庇ったから…』


『いや無我夢中だっただけだ、冷静に対処したかったが…他の隊員は…?』


『ほとんど、わかりません…何人か奴に襲われて、血が凄く出ていて…』


そしてパニックになった。


『‥‥救助を待つしかないか、オギリ副隊長を村に残してきた 我々が戻らなければ異変に気付くだろうが‥‥』


それでは、隊長さんは間に合わない


『君は、魔術や魔道 何か使えるか?』


僕は首を横に振る。


『わかった、少し肩を貸してくれ』


肩を貸し、彼女は起き上がる

そして、何か呪文のようなモノを囁く


一瞬、辺りが明るくなる

小さな光の小鳥のようなモノが現れた


周囲を軽く飛び回ると、それは隊長さんの指にとまった。


『頼むぞ…』


彼女の囁きと共に、光の小鳥は飛び立ち

壁を突き抜け、消えてしまった。


『内側からの結界が無くて良かった、メッセージを届けてくれる…』


簡単な魔法だよ、彼女はそう言い横になった 顔色がどんどん悪くなっている。



謎の怪物の襲撃を受け、案内をしていた僕

北天馬騎士団の人達は散りぢりになった。


どこを走ったか、正確には覚えていない

庇ってくれた隊長の馬に乗り、闇雲に逃げた


しかし、方向が良かったのか

森は急に開け、目的の遺跡へと辿り着いた


馬が転んでしまい、僕は隊長さんを支え とにかく遺跡を目指す


前に何度か見かけた程度の森の遺跡だ、そこに入れば助かるという保証も無かった


『そうだ…、なぜ僕たちはここに入れたんだ?』


扉は、開いていた? しかし、今は閉まっている。


普通なら気付く違和感に、パニックで全く気付いていなかった。


『ぐ‥‥うっ』


今はそんな事考えてる場合でもない、隊長さんの傷の手当て 何かしないと


自分の持ち物の中に、何か使えるモノはないかと探してみる


布キレとか、そういえば薬を持っていたような

ああ、でもあれは 腹痛用だったか…


『あれ?』


辺りを見回す、自分の背を確認する


僕のバックがない…!


『逃げていた時、落としたのか!?』


あるいは、敵の攻撃を受けた時 何回か躱したというか

たまたま動いてたら当たらなかったが

その時に…


そういえば、服のあちこちに斬られた跡が

ゾッとする


大したモノが入っていた訳ではないが、水だって入っていた

バック、正確にはリュックすら失ってしまった。


塞ぎ込む…。



だが、その場に座り込んだ僕の目線に それは飛び込んで来た。

あれは…?







● ニエナレポート


この文書は、第二世代型封印装置Bシステム乙式の内部についての

記述がある為


第一級極秘文書とする。



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