第30話 ロドリゲスの正体

「さぁ聞きたい事は何かな?何となく分かるけどね」


 ──ずっと見てたんなら、ハッキリ分かってるだろ……


「あのハゲ……じゃなくて、ロドリゲスの事だよ。アイツ何者なんだ」


あのスキンヘッドでムキムキ、冒険者歴20年。そして、強者の雰囲気を醸し出す事が出来るあのハゲは一体……


「フフッ君が知りたいのは……ずばり!  彼が使っている魔法の事だね?」


 ──そう!! 何なんだ、あの魔法は!!


「うん、教えてよ!」


「うーん、冒険者の情報を勝手に言うのは本当はダメなんだけど……彼の場合は既に皆んなに知られている事だから大丈夫かな」


 ──皆んな知ってる? もしかしてシエラも?


「シエラ君は知らないさ、彼女は新人さんだからね。ある程度経った冒険者や職員は嫌でも知ることになるさ。なんたって彼は毎日掲示板の前に立っているからね」


当然のように心を読んでくる所は気にしたら負けだ。


それはそうと、リオンが彼女と言ったシエラはどうしているのかと言うと、今も俺に頬擦りをしているのだ。そろそろ火がつきそうで怖いのだが。


「ふふぇ、ふぇふぇふぇっ! アレン君〜」


 ──えぇ……


俺の知ってるシエラはどこに……これではまるでアフォーの変態野郎と同じではないか。


初めてアフォーを見て、シエラに似ているという発言はあながち間違っていなかったのかもしれない。この間も話も聞いておらず、ただ頬擦りを繰り返しているシエラはほっといて話を進めよう。


「それで、彼の魔法なんだけど……」


 ──ゴクリッ……こう言っておけばそれっぽくなるよね。


「特有魔法というものなんだ」


 ──特有魔法?


「固有魔法じゃなくて?」


「うん、固有魔法は自身の本質を投影させた属性魔法の事。特有魔法は属性外の魔法の事だよ」


「属性外って……」


「そう。例えば有名なのでは、空間魔法や重力魔法だ。重力魔法の使い手はこのアースガルド王国にいるね」


 ──特有魔法……へぇそんな面白い魔法を使える奴がいるのか……闘ってみたいな!!


「うんうん、落ち着いてね。気持ちは分かるから」


「うっ……ごめん」


「フフッ君らしくて良いけどね。それで、ロドリゲスも特有魔法の使い手だ。ここまで言えば、もう分かるだろう?」


「うん、恐らくあのハゲの魔法は…………」


「君は溜めなくていいよ、それは僕の仕事だ」


 ──ちょっとやってみたかったんだ。


「雰囲気……だろ?」


「正解だよ!! さっすがアレン君だね!」


 そう、あの時感じた違和感。それはなんでこんな弱いのに、強者の雰囲気を醸し出しているのかだ。


「やっぱりか、めちゃくちゃ弱いでしょ、あの人」


「まあね、彼は『万年F級冒険者』と呼ばれているよ」


「やっぱり……オーガ討伐勧めてみたら、急に強者の雰囲気纏い出したからビックリしたんだよね」


「フフッ彼は毎日掲示板を眺めているせいか、新人冒険者にとっては強そうな冒険者に見えるんだよね。それに加えてあの『雰囲気魔法』さ。そんな彼の異名は『掲示板の番人』だ。異例なんだよ?F級冒険者に異名がつくなんて。それも二つだ」


「番人……ちょっとカッコいい」


「そ、そうかな?」


「あっ、あの人一回も依頼に行ってないんでしょ?どうやって生きてるんだ?」


「うーん、彼は飲食店を複数経営しているみたいだから、生活費には困らないみたいだね」


「おー凄いな……ってロドリゲスの事はもういいや。そんな事より特有魔法か……うん、良いこと聞いたな!」


「フフッ大抵の特有魔法の使い手は厄介で手強いから気を付けなよ。特に君は闘う相手に見境がないんだから」


「うん、ヤバそうってのは分かるよ。ロドリゲスが弱いって分かってても、つい反応してしまったんだ。凄い魔法だってのは身に染みたよ。でも『雰囲気魔法』に良い活用法とかって無いのかな?掲示板の番人する以外に……」


「フフッどうだろうね。魔法っていうのは己の投影みたいなのだからね。彼自身が望む様にしかならないよ」


「うーん、そっか……色々ありがとリオン! あっそうだ! 俺早く昇格したいんだよ! なんか良い依頼ないかな?」


「フフッ君はゆっくりなんて出来ないよね……分かった。君には僕オススメの依頼を受けて貰おうかな。前提として、昇格にはギルドへの貢献度、そして実力の二つが必要だ。今の君に必要なのは貢献度だよ。緊急性の高い依頼ほど貢献度は高い。よって君に受けて貰うのは……」


受けて貰うのは……?


「オーク集落の調査依頼さ」

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