第29話 初依頼?
あれからジィジ達は暫く滞在した後、帰っていった。そして本日俺は冒険者ギルドに来ていた。そう、初依頼を受ける為だ!
だがしかし、俺は依頼が貼られた掲示板を見て、悩んでいた。
「うーん……」
今のは俺ではない。隣にいるスキンヘッドのムキムキなオッサンのものだ。
「ふむ……今日も俺に相応しい依頼が無いな」
目の前に貼られているのはB級からF級までの依頼である。それ以上のクエストは上級冒険者であるA級以上だけしか、上がることのできる2階にしか無いのだ。
この状況から考えると、このオッさんは中級冒険者以下という事になる。
「坊主、お前も冒険者なのか?」
ずっと掲示板を眺めていた男だったが突如として話しかけてきた。
「うん! それと俺は坊主じゃない! 名前はアレ……」
「そうか、坊主。俺はな……」
自己紹介の途中だったが遮られてしまい、
そして勝手に話し出してしまうのだった……。
「俺に見合った依頼でなければ受けないと決めているんだ。だが、ここには俺に相応しき依頼がないでは無いか……」
──はぁ……どうして俺の周りには話を聞かない人が多いのだろうか。
取り敢えず自分ならどの依頼を受けたいか、それを紹介しようする。
「んー?じゃあ、あのオーガの群れ討伐はどう?B級の依頼なんだけど」
ここにあるいちばん高いランクのクエストだ。
「フッあの鬼っころか……一瞬だな」
そうハゲが言った瞬間、男の魔力が高まりをみせた。それを確認したと同時にその場を飛び退き無意識に戦闘態勢に入ってしまった。今のこの一瞬の間で、目の前にいる男に
対して初めに持っていた印象は大きく改められる事になったのだった。
未だに信じられず驚く俺に、男は話しかけてきた。
「ほう……坊主なかなか見所があるな」
だが、その言葉は脳の奥には届いていない。
ある事が気になりすぎて仕方がないのだ。
──なんだこの男の……雰囲気は。
強者だけが纏う、まるで命が握られているように感じさせる雰囲気をコイツは発している。だが、それと同時に俺は違和感を感じているのだ。
「そうだ、俺の名を言ってなかったな。
俺の名はロドリゲスだ。22歳から冒険者を始め、今年で20年目の大ベテラン冒険者だ」
見た目は年相応だ。
ただ、気になるところが一つ……
「フッ何か聞きたいことがある様だな」
ロドリゲスは俺の顔をチラッと見ると、鼻を鳴らした。
──チッ……俺のポーカーフェイスを見破るなんて侮れないオッサンだ。
「そのーえーと……その頭は自前ですか?」
少しデリカシーが無いだろうか?だが自分は子供なのでこれ位は許される範囲だ。
「フッ良いところに目がいくな坊主」
──フッ俺の目は誤魔化せないよ?
「自前だ!」
──やはり!!
「なるほどー……凄くいいと思うよ」
特に感想も思い付かないので適当に答えておく。しかし、男の反応は意外で……
「ああ、俺も最近全部無くなってからそう思う様にしたんだ。気が合うな、坊主。俺のことはロドリゲスと呼んでくれ」
適当に言ったんだが、何故かいつの間にかハゲと俺の気が合うという事になってしまっている。取り敢えず、頭の話から戻さなくてはいけないと思い、別の話題を振る事にした。
「分かった! それでさ……依頼は何受けるか決めた?オーガとか良いじゃん、強いらしい。」
「ああ、鬼っころなぞ俺に相応しく無い。今回もパスさ……」
何故か一々格好つけた様な言い方をしてくるので、この男にムカついてしまうのは仕方ないだろう。
だが俺にはこんなことしている暇はない。このハゲとは適当に話を切り上げて、今すぐ俺が持っている疑問に答えてくれる人に会いに行かなければならないのだ!!
「ふーん、まぁ良いや! 俺ちょっと用事が出来たからもう行くよ!」
出会いは突然、別れも突然なのだ!
「あぁまたな、坊主」
急ぎ足でその場を離れた。
俺に突然出来た用事は何なのか。誰に用事なのか。それはリオンに、だ。緊急な用事なので今すぐ会わなければならない。
会うためにはまず……
「シエラお姉ちゃーん」
「あっアレン君ー! 来てたんだね! 今日は人が多いから見えなかったよっ! あっ!アレン君が小さいからとかじゃなくてね、
えっとえっと……」
どうやら失言だと思ったのだろう、しかしそんな事で怒る俺では無い。
「別に良いよ! シエラお姉ちゃんなら……ね?」
逆にこの状況を利用する事ができるのがおれだ。俺必殺の上目遣いを使う事で歳上の人は簡単に落とす事ができるのだ。
「あぁアレン君っ!!」
シエラは勢いよく抱きついてきて、頬擦りを繰り返している。
──こう来れば俺のお願いは絶対聞いてもらえるだろう! チョロいもんだ!
「それでね、俺リオンに会いたいんだ。
だから連れてって……」
出来るだけ可愛く、を心がけた。
しかし……
「え、マスターのとこに?」
「うん!」
「うーん、マスターなら居ないよ」
──え?
「マスターは基本的に居ないの、あの人サボリ魔だから。普段仕事なんかしてないの」
──何してんだアイツ……。
頭の中にヘラヘラしたリオンの顔が出てくる。取り敢えずぶん殴って消しておく。
「えーうそ……聞きたいことがあるのに……」
これにはショックを隠せない。てか仕事をサボるなんて最低だ!! リオンはやっぱり碌でも無い奴だったのだ。
「残念だね……でも大丈夫っ! 私がその分抱きしめてあげるからっ」
シエラが意味の分からない事を言ってるがそれは無視しておく。
──うーん、何か方法が……あっ『
ついにはシエラに抱き上げられ、頬擦りをされ続けている俺だが、頭は中々冴えているらしい。
「雷魔法──『
リオン自身の魔力はうまく隠されていて、感知できないが、恐らく存在しているはず。
なので辺りの魔素を適当に刺激してあげると……
「呼んだかな、アレン君?」
突如、リオンが姿を現した。
「サボり魔め……」
強い怨念を込めて、睨みつける。
「フフッ失礼な、ちゃんと見てたよアレン君のこと」
だが怨念や睨みなど、そんな事を意に介さない様子でリオンは衝撃の事実を言い放ったのだ。
──コイツ!! 俺が会いたがってるの知ってて、今もなお頬擦りを喰らってるのを知ってて黙って見てたのか!!
「フフッそんな怒らないでくれよ。質問には答えてあげるからさ」
そう、いつも通りのニヤケ面を浮かべた男──リオンが目の前にいた。
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