第27話 アレンvsガイアス
「ガハハハッ! 着いたぞアレン!!」
修練場には屋根がない。ただ高く頑丈な壁で覆われており、中央を囲うように周りには観客席が存在している。かつてここで武闘大会が開かれていた名残りだという。
そしてこのガイアスという男……おじい様はその高さをものともせず上から侵入した。
それも俺を抱えたままで、だ。
「こ、腰が……」
「ガハハハッ! 年寄りみたいな事いうなぁアレンは」
──アンタの持ち運び方が雑なんだよ!!
普段から肉体を強化し続けているお陰でこの程度で済んだのだ、ただの幼児なら上半身と下半身はとうにおさらばしているだろう。
しかし、そうこうしている内に腰の痛みは引いてしまった。最近では、回復速度も異常に速くなってきたようだ。
「いよぉぉし! やるぞアレン!!」
やるぞとか言いながら、既に突っ込んできている。本当にこの人は急すぎるのだ。
「ハハハハッ!!」
──けど……やっぱり闘いとなると……
オラ、ワクワクすっぞ!!
「楽しいかアレン!! ガハハハッ!!」
おじい様は剣を持っておらず、丸腰だ。
そして『身体強化』もしていない。
する必要がないのだ。何故なら……
「うおっ!!」
避けた拳が地面に当たると、地響きと共に全方位に大きな亀裂が走った。
当たればどのみちただじゃ済まないのだ。『身体強化』しまいが、しよまいが絶体絶命には違いない。改めて見ると、本当に筋肉の塊のような身体をしている。これが『神経強化』をし続けた肉体。
「おおー!! よく避けたな!!」
──っ当たり前だ!! 避けなかったら粉々になるからな!! やっぱりこの人に攻撃させたらまずいな。それなら──
「本気で行きますっ!」
魔力を解放し、一瞬で魔圧を最大に持っていく。
「ガハハハッ勿論だ! さぁジイジと遊ぼう!!」
「雷魔法──『
全身に雷がほとばしる。雷の身体強化──『属性強化』だ。
「おお上手に出来とるな!!」
──俺は一秒たりとも立ち止まってなんかいられないんだ。俺はもっと強くなるんだ。だから──今ここで!! 昨日の俺を超えていく!! 見せてやるよ……新しい俺の魔法!!
「雷魔法──『
「むっ! 身体が……」
『
その分威力は弱い。だが、相手を一瞬硬直させる事が出来る。この魔法はリオンの
『
──辺りに漂う魔素の利用……感謝しなきゃな、リオン!! アンタのおかげで俺はまだまだ強くなれる!!
さぁ、この一瞬の隙を逃すなよ!!
剣を引き抜き、雷速で突っ込み、眼前に迫る。そして剣にありったけの雷魔力を込めて放つ。
「雷魔法──『
これは元々、雷魔法を刀身に収束させて飛ぶ斬撃として放つ魔法だ。しかし『零式』には斬撃を飛ばす効果は無い。その代わり斬撃を飛ばす際に消費していた魔力を無駄にする事なく、込めた雷魔力全てを直接身体に喰らわせる事が出来る。
ぶつかり合う刀身と鋼の様な肉体。
ここまでの一連の攻撃はまさに一瞬。
目にも止まらぬ凄まじい速さによって大気が圧縮──衝撃波を起こし、小さな俺の身体は勢いよく吹き飛ばされた。しかし空中で体制を整えた俺は着地に成功する。
吹き飛ばされている際も相手から片時も目を離さない。
「これでどうだ……!!」
巻き起こった土煙の中から……未だかつてないほど大きな雷鳴。
「ガハハハッ!! 成長したなアレン!! ワシに『属性強化』を使わせるとはな!!」
土煙から出て来たのは触れたもの全てを破壊する豪雷──それを見に纏う大男。
「良い魔法だったぞ!! 特にワシの動きを一瞬止めた魔法……なんと言ったか?」
「……『日雷』です」
「そうか、『日雷』か。うむ、器用な事をするもんだ!! ガハハハッ!!」
──くそっ……ほんの少し間に合わなかったか。
「そう、落ち込むでないぞアレン。仮にそのまま受けていたら……皮が切れていた」
──やっぱりか……お爺様の筋肉って鋼みたいだからな。この剣じゃ、まるで切れる気がしない。って剣身がボロボロになってるし。はぁ……これで何本目だ。
実は俺が腰に差している剣は業物でもなんでも無い。剣は魔力を通して使い続ければすぐ壊れてしまう。なので俺はなんの変哲もない普通の剣を差している。
「ガハハハッ!! やはり孫の成長は嬉しいものだな!! ほれ、アレンもう終わりか?」
──あぁ終わりだ……俺の勝ちで終わらせてやるよ!!
「風魔法──『
風魔法で上空へ飛翔する。
「おお!! アレンは風魔法も使えるのだったな!!」
更に上へ飛び上がり、停止し見下ろす。
──いくぞ……
「風魔法──『
この魔法は俺の魔力で発動させたが最後、辺りの魔素を食い尽くすまで止まらない。
今回は俺の全魔力を注いで、特大のものを作ってやる。
──正真正銘、俺の全力だ!! 喰らえジジイ!!
「はあああああああ!!」
豪風がまるで滝の如く真下に吹き下ろされる。これは風魔法により辺りの空気を超圧縮し、ぶつけ続ける……触れる者全て圧死させるほどのものだ。そして、発動させれば辺りへの被害が計り知れないので、普段使う事はできない魔法だ。
魔力で纏め超圧縮させた空気の塊をぶつける魔法……この魔法の効果は魔力による攻撃ではない。
──魔法はダメでも……物理攻撃なら効くんだろ?
「はあああああああっ!!!」
「ガハハハッ!! 凄まじいなアレンッ!! ガハハハハハハハッ!!」
吹き下ろされ続けている暴風によって生み出された轟音を突き抜け聞こえてくる馬鹿笑いを耳に最後、俺は意識を手放し地上へと落下した。
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