第20話 アレンvsアフォー

「さぁ始めようか、最後の模擬戦を」


火傷を負い倒れたニーナとメイは既に回復していた。


「フフフフッ良い勝負だったね。キミの実力……ぼくの永遠のライバルに相応しい!! さぁ皆んなに魅せてあげよう! 僕たちが織りなす甘酸っぱいハーモニーを!!」


 ──甘酸っぱいってなんだよ、このアホやっぱり苦手だ。


アフォーの気持ち悪さにその場の皆んなが引いている。しかし、その状況を楽しむものが一人。


「うんうん、青春だねー。僕そういうの嫌いじゃないよ! さぁ、最後の模擬戦……

ぷふふっ……あ、甘酸っぱいハーモニーを始めようか!」


リオンだ。言われた当事者ではない事をいいことに、俺の反応を全力で楽しむつもりのようだ。


 ──っ言い直さんで良いわ! リオンめ、面白がりやがって! なんでこんな変態と……あ、甘酸っぱい……ハ、ハーモニーなんか!! くそっ、口にするだけで恥ずかしい!


「フフフフッ、マスターも見たいようだね」


アフォーはリオンを理解者だと思ったらしく、嬉しそうにしている。


 ──もうお前は黙ってろ!!


「さぁ、永遠のライバル……アレン!! りあおうか!」


 ──もう反応するのも疲れた……無視して早く始めよう。


「ううぅ〜、アレン君が変態に汚されちゃう……」


「シエラ君?」


シエラはリオンの声で正気に戻る。


「は、はいっ! で、ではアレン君と変態クソ野郎……じゃなくって、アフォーさんとの模擬戦を行いますっ!」


そんなシエラの様子を見た変態はニヤッとして言った。


「フフフフッアレン以外にも素直じゃない子がいるねぇ。僕に全てさらけ出して楽になれば良いのにねぇ……」


そう言ってアフォーは舌舐めずりして、シエラを見つめている。


 ──本当に何言ってんだ、コイツ?


その視線をぶつけられた当の本人は本気で引いており、リオンの背後へと逃げるように隠れた。


「ひ、ひぃ……あ、アレン君! そんな変態ぶっ飛ばしちゃってねっ! 始めてください!」


 ──もうシエラが限界みたいだ。けど……この変態野郎は言われなくてもぶっ飛ばす予定だよ!


「フフフフッ! アレンッ超愛りあおう!」


アフォーはレイピアを鞘から抜き構えた。

俺もそれに続き剣を抜く。


「相手が変態なのは不服だよ!!」


俺は剣を構え、地を蹴り飛ばしアフォーに斬りかかった。


「フフフフッ! あぁアレンッ! 僕の胸に飛び込んでおいでぇ!!」


「黙れ変態!!」


アフォーもレイピアで迎え撃つように突きを繰り出してきた。


 ──けどまぁ、戦い自体は面白くなりそうだな。初めは……剣術勝負!! ハハハハッ!! さぁりあおうか!!





「うんうん、アレン君も十分変態だと僕は思うんだけどね」


アレンはアフォーに負けずと劣らない狂気的な笑みを浮かべている。


「私……アレン君の将来が心配ですっ」


シエラにとって弟のように思っているアレンがいつかあんな変態の様になってしまうのではないかと思うと、心配してしまうのは何もおかしな事ではないのだろう。


「……僕は楽しみで仕方がないよ」


いつもの様なニヤケ面はそこにはない。二人の戦いを見ていたはずのリオンの瞳に映るのは、五つの幻影。


「私、私……どうしたら」


アレンへの心配で一杯のシエラにはリオンの声は届かない。


「果たして君は届くのだろうか……」


その瞳に映る幻影を消すように瞳を閉じる。そして、しばらく目を瞑り続けたリオンだったが、ゆっくりと目を開く。

開かれたその眼に映っているのは、剣を紡ぎ合う二人の姿。アレンとアフォーであった。


「フフッ……君の進むその先を僕に見せてくれ」


先程の真剣な顔をした男の姿はそこにはない。いつものニヤケ面を浮かべたリオンの姿がそこにはあった。

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