第12話 今度こそ冒険者ギルドに行きたい

いや、フラグなんてものは現実には存在しない!! それは本の中だけなのだ!!

俺はこの日を何年も待った。ようやく夢に一歩踏み出すのだ! さぁいくぞっ!!


「どこに行くんですか?」


「うわぁ!」




俺はアレン。邪魔者のアリアを母様に押し付ける事で、排除に成功した。

考え事に夢中になっていた俺は、背後から近づいてくるもう1人の邪魔者に気づかなかった。そして俺はその邪魔者に……


「ア、レ、ン、様っ!!」


「なんだよ……エレナ」


今いい感じの冒頭のナレーションしてたのに……。もうすぐ名探偵になれたのに……


「誰が、邪魔者なんですか?」


コイツもか……


「お前もなのか」


「何がお前もなのかは分かりませんが、私はアレン様の専属メイドですよ?アレン様の心くらい読めます」


絶対分かってんだろ……。

というか、どんだけ屋敷に俺に特化しているエスパーが居るんだよ。そのうちあのヒゲ庭師にさえ読まれるんじゃないだろうか。

いや、読まれる前にってしまうか、

今度こそ証拠を残さず……。

なんてね、もうどうでも良くなって来たよ。


「エレン、これから俺は出かけてくるから。それじゃあな」


こういうのはサラッと言ってサッと消えるに限る。


「分かりました。いってらっしゃいませ」


「え?」


おや?すんなり行かせてくれるのか。珍しいな。


「では私も準備が済んでいるので、出発しましょうか」


「……」


「?どうされました?」


「行かせてくれるんじゃないのか?」


「はい。私も付いて行きますが」


来んなよ!何でどいつもこいつも付いて来ようとするんだよ!


「あのな、エレナ。俺は1人で行きたいんだ。だからついて来るな」


「アレン様、何をおっしゃっているんですか。私は専属メイドですよ?ついて行くに決まってるじゃないですか」


ダメだ、エレナも話が通じる相手じゃない。

だが、しかし! 俺も2年でだいぶ成長している。その成長を見せてやるよ!


「エレナ」


「はい、なんですか?」


「俺お前に見せてやりたいんだ。1人でも外出出来るってさ。いつも俺の事を想ってくれる大切なエレナにな」


「え……」


イケる! このまま畳み掛けるぞ!!


「あーなんか今日はエレナが作ったご飯が食べたいなぁー。大好きなエレナが作ってくれたら嬉しいなぁー」


すごく恥ずかしいが、背に腹はかえられん!

今は恥を捨てるんだ!!


「エレナ……だめかな?」


必殺! 幼児の上目遣いだ!!

これで落ちないヤツは居ない!!


「あ、アレン様。そんなに私の事……

わ、分かりました。今日の所はここでお見送りします。その代わり、すぐに帰ってきてくださいね。お料理作ってお待ちしてますから。フフッ忙しくなりそうです! 

では、いってらっしゃいませ、アレン様っ」


そう言い残したエレナは鼻歌まじりで走り去っていった。

これで今度こそ邪魔者はもう居ない。

今の俺には羞恥心など屁でもないのだ。

こうして俺は使命を果たすべく歩み出した。


「よし、いくか!!」

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