第7話 才能の片鱗

相対するのはあの時より背が伸び、成長したアレン。手に持つ長剣は様になっており、凄まじい威圧感を放っている。


いつからだろうか……アレンの才に気付いたのは。いつからだろうか、その才に魅せられたのは。

アレンに魔法の才がある事は誰が見ても一目瞭然だ。

齢2歳で既に無属性魔法を習得、それを僅か1年でさらに高いレベルまで押し上げた。

そして属性適性は私の雷、シルフィアの風の二つだ。適性は一般に遺伝すると言われているが、絶対ではない。ましてや二つの適性を宿すのは人間ではごくごく稀な事だ。


そしてアレンの才は魔法だけに止まらない。

あの時の戦闘を開始した瞬間から、いや……もっと前。そう、始まる前から感じていたんだ。私の威圧に対し、アレンは臆するどころか闘志をむき出しに斬りかかった。何度も死線を超えて来た私の威圧にだ。度胸という言葉では言い表せない。そうだ、アレンには戦闘そのものを楽しんでいる節があるのだ。計り知れぬ戦闘の才だけでなく、戦闘を行うに適した精神を持って生まれたのだ。

アレンはこれからさらに強くなっていくだろう。近いうちに俺すら簡単に飛び込えていくだろう。どうして、どうしてこうも期待してしまうのだろうか。それは私がアレンの親だからなのか……。

どうして、こうも心が躍るのだろうか。

それはアレン……お前が私の息子だからなのか。それとも……

いや、深く考えた所で意味はないのだろう。

私はお前の成長が楽しみで仕方がない。

ハハハッ息子よ! 見せてくれ!!

さぁ、私にお前をもっとせてくれ!!

あの時のように…………!!




目の前にいるのは小さな身体で精一杯、剣を支え構えるアレン。


「いきますっ!! 無属性魔法──『身体強化』!」


緻密ちみつな魔力制御が必要な『身体強化』を高速展開出来る技術……


「はあああああああ!!」


そして1撃目で頭を狙い、振り下ろしてくる度胸……


「良いぞ。もっとだ、来い!!」


身体の動きや剣捌き、まだまだ隙が目立つ。だが攻撃の一つ一つは力強く、その場その場で最適な場所を狙って来ている。

アレンには言ってないが、既に私は内側の『身体強化』は発動している。それでもなお、力強さを感じる。


「雷魔法──『身体強化』」


そして未だ不完全ながらも、たった一度で雷属性の『身体強化』の発動に成功。

ハハハハッ!! アレン!! お前はどこまで魅せてくれるんだ。まずい……まずいな、どこまでいけるか試したくなった。


「防いでみせろ」


やり過ぎなのは分かっている。まだ幼き子供に撃つべき技ではないのは分かっているのだ。だが……試さずにはいられない。


「雷魔法──『崩雷ホウライ』」


豪雷を長剣に込める、そして圧縮。それを雷の刃として解放する。対象の破壊のみを目的とした魔法だ。さあ……どうする、アレン。


「あーもう!! やってやるよ!!」


突如アレンの魔圧が跳ね上がった。

さあ……何をしてくる。


「はああああああ雷魔法──『雷一閃イカヅチイッセン』!!」


凄まじいな。

今まさに攻撃が迫っているこの状況で、固有魔法を創り出したのか! そしてその技を真っ向からぶつけてくる極度の負けず嫌い。


「はあああ!!!!!」


絶対絶命のこの場面でアレンは笑っている。楽しくて仕方がないようだ、まるで小さな子供が大好きなオモチャで遊んでいるかのように。さぁ、アレン……そろそろ決着の時だ。

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