第6話 初めての戦闘

「さぁ剣術について大まかに説明していくぞ。お前にこれから教える剣術はエルガルド家初代から受け継がれている。名は『雷神流』だ。ある時は雷光の如く素早い剣撃で攻め、ある時は稲妻の如く力強い剛剣で叩き切る。そして相手の攻撃は往なし、躱す柔剣をも持ちあわせている。他の剣術と比べて欲張った剣だ。それ故に、これを扱うには条件が存在する」


「条件ですか?」


「ああ、雷の魔力を見に纏い身体を強化出来ることだ。属性魔法にはそれぞれに『身体強化魔法』が存在する。だが、『身体強化』において雷魔法は断トツだ。身体の外側からだけでなく内側からも強化することで、雷の速度での反射や思考加速、肉体強化を行える」


何それカッコいい!


「外側の『身体強化』は、お前はもう無属性魔法で経験があるだろう。問題は内側の強化だ。これは下手を打てば身体が崩壊する。完璧に扱えるようになるまで私の目の前以外での使用は禁止だ。いずれは常時、内側の『身体強化』を無意識下で行えるようにする。そうする事で魔力の体内からの放出を防ぎ循環させることで魔力を減らすことなく、常人を超える身体能力を維持することが出来る。不意打ちにも反射で対応する事が可能になる」


おおっ! 雷の魔力って凄いな!!


「説明はこのくらいで良いか。よし、剣を構えろ。これは遊びじゃない、真剣勝負だ。

殺す気で……本気で打ち込んでこい」


おっやっと戦える、ワクワクが止まらない!! あー楽しくなってきた!!

俺は魔力を解放し、剣を握りしめる。

そして全力で地面を蹴って突っ込んだ。


「いきますっ!! 無属性──『身体強化』!」


小細工は無しだ!! 全力で叩っ斬ってやる! 顔の高さまで跳躍し、切先を天高く上げ全力で剣を振り下ろす!!


「はあああああああ!!」


渾身の一撃は呆気なく長剣に弾かれる。


「良いぞ。もっとだ、来い!!」


急いで空中で体勢を整え、着地と同時に魔力を足下に集中、発散。地面との接触は僅か1秒にも満たない。すぐさま剣で胴体を狙い横一文字に振り切る。そして絶えず、息つく暇のない連撃を浴びせる。


くそっ!!

全力で打ってるのに、剣先すら揺らすことが出来ていない。『身体強化』していても、

やっぱ3歳児の力では限界があるか。

このままじゃ何も出来ずに負ける。

何か打開策はないか……あるは、あるな。

いや、今悩んでる暇はない……ぶっつけ本番でやるしかないか。俺は絶えず打ち続けていた剣撃を止め、距離をとった。

よし、いくぞ。

魔力を高め、感覚を研ぎ澄ませる。


「雷魔法──『身体強化』」


全身を覆っている魔力を雷に変換させる。

魔力に属性が宿り、雷がほとばしる。

全身に行き渡ると、突如髪が逆立った。

雷が身体を巡っているのが分かる。


「はっ!!」


「ほう……まだまだ荒削りではあるが、紛れもない雷の『身体強化』だ。ふむ……

よし、良い機会だ。今教えておこう。

いいか、魔導書に載っている魔法は万人に合わせて作られた『基本魔法』と呼ばれるものだ。そしてそれを会得し、自身の本質を魔法に投影させる。つまり自分だけの魔法に創り変える。それが『固有魔法』だ。『固有魔法』に昇華させる事で魔法の効果は何倍にも膨れ上がる。どれ、手本を見せてやろう」


ほー固有魔法かぁ。って俺は出し抜くつもりで雷魔法使ったのに、父様にも使われたらこれ以上差が開いちゃうよ!


「え、いやちょっ」


「いくぞ」


聞けよ!!


「雷魔法──『雷光之鎧ライコウノヨロイ』」


父様から放たれていた魔力による威圧、

魔圧が跳ね上がったのを感じる。

それと同時に目を開けられぬほどの光が辺り一体を埋め尽くした。


「これが固有魔法の『身体強化』だ」


やばいな、これ。明らかに俺とは別物だ。

魔力の質、量、威圧感。全てにおいて俺の上位互換だよ。ってあれ?姿が……消えた?


「後ろだ」


背後からかけられた声に反応し、即座に距離を取る。 


「ハハハッ良い反応だ。まぁお前が驚くのも無理もない。この魔法は少し特殊で、普通の『身体強化』ではない。この魔法の特異たるは速さだ。それも最速魔法と謳われる光魔法と同等の速さだ」


やばい……いや、俺が思っている以上にもっとやばい!! 大事なことなので2回言いました!!


「ここらで終わりにするぞ、お前の力も十分見れた事だしな。予想通りに予想以上だった。アレン、今からお前に攻撃魔法を放つ」


正直……敵いそうにない。だけど、ここで簡単に終わるなんて出来るわけ…………ん?今なんて?集中し過ぎて話聞いてなかったよ。

なんか大事な事聞き逃した気がする。

気がするっていうか、本能が全力で警告鳴らしてるんだけど。


「防いでみせろ」


「え?」


「雷魔法──『崩雷ホウライ』」


戦闘では瞬きの1つとて大きな隙となる、

そんな事は誰に習わずとも本能で理解している。しかし驚きや焦り、これらが一瞬の瞬きを生んでしまう。瞬きを終えた刹那、雷の刃は目の前まで迫って来ていた。

あれ?これ……殺す気じゃないですか、父様?ってそんな事考えてる暇もないな!!


「あーもう!! やってやるよ!!」


集中力を研ぎ澄ませろ……もっと、もっと魔力を引き出せ!! 湧き出した魔力! 全て剣に込めろ!! チャンスは1度だ、タイミングを間違えれば死ぬぞ……多分! 

ここだ!!


「はああああああ雷魔法──『雷一閃イカヅチイッセン』!!」

 

俺の全魔力を込めた雷の斬撃と父が放った『崩雷』とをぶつける。もしもここで軌道を逸らすことを目的として、角度を考え攻撃を放っていたならば、高い確率で成功していたのかもしれない。

だけどそれじゃあ……最強じゃない!!

最強目指すなら真っ向からいくしかないだろ!! 限界超えろよ、おれ!!


「はああああああ!!」

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