分身
分身
作者 茶介きなこ
https://kakuyomu.jp/works/16816700426206387316/episodes/16816700426206440590
コピーの俺は仮面男にそそのかされて本体を殺すも、コピーのコピーであった仮面男に殺される物語。
シンプルだが、タイトルが物語を示唆している。ホラー作品に限らず、オチがわかってしまうのはよくないので、長いタイトルよりもシンプルなものがいい。
一人称で、描写より説明的。
街を歩いていて、一人の男に声をかけられるところからはじまる。「背は俺よりも少しだけ高いが、それ以外の情報は得られない。なぜなら彼は仮面をかぶっているからだ。顔が描かれているのではなく、奇妙な柄が施された仮面」だから、年も人相もわからないという。
服装は? 体格は? 仮面をしていても、肌が露出している首、耳、頭髪、手、足首などは? とくに喉仏をみることで性別は判別できる手がかりになるし、骨格や肉の付き具合などからも読み取れることはある。声の高低差、訛り、イントネーション、歩き方や仕草。見るべき点は多い。
厚底ブーツを履いていることが本作の中ほどで出てくる。このブーツがラストで重要となってくるので、出会ったときに見えるはずなので、冒頭に仮面男の描写をしておくとよかった。
それらをしていないということは、分身男である俺は、仮面をつけた不審な男が声をかけてきても、ちょっと警戒するのにその程度でしか相手を見ていないという性格なのだろう。
だとすると、ラスト近くの仮面男のセリフ「……あなたは、かなり用心深い」は、どういう意味になるのだろう。
仮面男はラストでコピーのコピーだとわかる。つまり、分身男のコピーが仮面男だったのだから、性格は似てるはず。
仮面男は自分が用心深い性格だから、自分の元である分身男も用心深いにちがいないと警戒し、正体がばれないよう仮面をかぶり、厚底ブーツを履いてきたのだ。
分身男の用心深さを伺える行動が冒頭からあってもおかしくないのに、それがない。ということは、「……あなたは、かなり用心深い」は、思ったほど用心深くなかったので、嫌味を込めていったのかもしれない。
もし分身男が用心深いなら、主導権を握った仮面男が身を翻して先に歩いて行く後ろを、ついて行くふりをして反対方向へ逃げ出せばよかったのだ。なにも、自分がコピーだと言い当てられたからといって、のこのこと着いていかなくてもよかった。
仮面男の言いなりになって、ナイフを受けとって本体を殺してしまうのだから、分身男のどこに用心深さがあるのだろう。
なので、仮面男のセリフは嫌味だったのだ。
自分はコピーのコピーで用心深いんだけど、本体といいコピーといい、「ちっとも用心深くない」と、コピーのコピーは、うまく行き過ぎて仮面の下でせせら笑っていたのかもしれない。
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