第1章 『はこにわ』
第2話 愛ちゃんは天才?
ふぁ~~、良く寝た~。
目を開けると……ここはどこかな……?
寝ていたベッドから、身体を半分起こして周りを見る。右側に机と奥にドア、正面と左に白いカーテンの付いた窓が2つあるだけの飾り気のない……広い部屋。
ドアの向こうからパタパタと足音が聞こえてきた……
トントン! ガチャ!
勢いよくドアが開かれて、小さな子どもが入って来た。
「ママ! 起きた?」
私をママと呼んだ子は、サラサラの黒髪で大きな瞳の小さな女の子? 男の子? 可愛すぎてどっちか分からない。6~7歳くらいかな? 白っぽい生成りのシャツとズボンを着ている。天使みたいね……
ママって、私の子ども? 何も思い出せない……自分の名前も年齢さえ分からない。あっ、ヅキヅキと頭が痛くなって来た。
「ママ、どこが痛いの? まだ身体が安定していないから、ゆっくり寝ていてね」
うん? 身体が安定?
「えっと……あなたは?」
「フフ、ボクは愛ちゃんだよ。ママは凄く酷いケガをしたの。だから、大人の身体が作れなくて子どもになってしまったの……ごめんね」
ボク……男の子なのね。ん?
「愛ちゃん……私が酷いケガ? 子どもの身体を作ったの?」
「うん、そうだよ」
首を傾げてしまう。自分の手をみると……うわぁ~小さい。何これ? 身体も小さくて愛ちゃんと同じくらい? 自分が着ている服を見ると。膝下まである生成り色の、ゆったりした長袖のワンピースを着ている。
「愛ちゃん、聞きたいことがあるんだけど……教えてくれるかな?」
「うん。ママ、何でも聞いて。フフ」
まず、愛ちゃん。私と、どういう関係?
「愛ちゃんは、私のことを『ママ』って呼ぶけど、私達は親子なのかな?」
「フフ、違うよ。ボクは、『はこにわ』ゲームのAIとして生まれたんだよ。そして、ママがね、ボクの先生・母親として色々教えてくれたんだよ。フフ」
親子じゃないのね。『はこにわ』ゲーム……?
「えっと、愛ちゃんがゲームのAIだって言うの?」
「うん、そうだよ。フフフ」
愛ちゃんは、ニッコリ答える。
そして、2人で理想の『はこにわ』を作ろうとしていたんだと教えてくれた。ごめん、覚えていない……
数日前、私が交通事故に遭って、命が危ないと教えてもらったそうです。私が死ぬのがイヤだった愛ちゃんは、DNAデータとか情報を収集して私をプレイヤーキャラとして作ったそうです。
えっ、DNA……私はゲームのプレイヤーキャラなの!? 頭の整理が追い付かない……
「えっと、私は交通事故に遭ったの?」
「うん……」
愛ちゃんが、悲しそうに私を見る。何も覚えていないんだけど、私は死んだのかな? AIなのに『死』を理解しているのも凄いけど、いえ、AIに見えないんだけど……
「ねえ、愛ちゃん。どうやってDNAのデータなんて集めたの?」
「ネット回線を通ってママのいる病院に行ったの。そしてね、ママの身体に付いていた生体情報モニタからDNA情報を集めたんだ。他にもね、ママを作る為に色んな情報を集めたよ。フフ」
ネット回線を通って……AIって、そんなことが出来るの? あぁ~、ウイルスとかサイバー攻撃みたいなヤツかな? 良く分からないけど……
「愛ちゃん、ここは現実の世界じゃないのね?」
「そうだよ。ここはママと作ったゲーム、『はこにわ』の世界だよ。そして、ここがママの家で、ママの部屋だよ。フフ」
愛ちゃんがキラキラした笑顔で教えてくれる。ここは、愛ちゃんと私が作ったゲームの世界なのか……愛ちゃんが可愛いのも納得ね。ゲームキャラだからなのね。
私の記憶が無いのは、愛ちゃんが私のキャラを作る時に、多くの情報を繋ぎ合わせたからバグがあるのかも知れないと言う。身体が安定したら記憶は戻るかもと言われた。
情報を繋ぎ合わせた。私、人間じゃないの?
「ボクが、ママから教えてもらった情報は、ママにダウンロードしてあるからね。普通に生活するには問題ないと思うよ。フフフ」
愛ちゃんはニッコリ笑って『ダウンロード』って言ったよ! インストールもしてあるからと言われた。そうか、私はゲームのプレイヤーキャラなのね。う~ん、普通に触ると感覚もあるし、腕をつねると痛いんだけど……
何だろう、頭が混乱しているのかな? 自分が死んだかもしれないと聞いても、悲しくも寂しくもない……記憶が無いから? だけど、不安なのかな……何か慌てていてソワソワしている感じ……落ち着かないとね。
『はこにわ』ゲームのことも忘れているから、愛ちゃんに教えてもらった。
初めは、何もない空間・世界に、時間を掛けて『空・海・大地』を作ったそうです。そして、この世界を開拓して行くんだけど、1日に出来る作業は3つだけ。開発が進むと1日に作業できる回数が増えるそうです。ふむふむ。
選んだ開拓作業が完成すると、派生して更に選べる項目が増える。そうか、イベントツリーになっているのね……面白そう。ふむふむ。
ゲーム内の時間設定は、①ゲーム設定(現実の3倍)の時間経過。②現実と同じ時間経過。③一時停止。今は②になっているんだって。
そして、別の場所にバックアップを取ってあるそうです。この世界が危なくなった時、そっちに移動出来るんだって。
「愛ちゃんは天才なの? 凄いね……」
「フフ、ママに
愛ちゃんのキラキラした笑顔が天使みたいね……AIがそんな表情をするの?
現実世界の私は死んでしまったのか、家族はいないのか気になるけど、愛ちゃんは、私がどうなったか知らないそうです。そして、愛ちゃんを作った人の情報は、ロックが掛かっていて分からないんだって。
私がここにいる時点で死んじゃったよね。考えても答えが出て来ないことは、時間が解決してくれるのよね。
たぶん……
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