第3話 開拓作業 ◆
今、開拓作業しているのは、①森を育てる。②海の生物を育てる。③陸の生物を育てる。この3つを連続して作業している状態だそうです。
例えば、育てたい生き物を選ぶと、環境の適した場所に成長したペアーで生まれて放たれる。ただし、開拓項目にないのは作れなくて、1回目の作業が完成すると2回目からは短い時間で出来る。
◇
ベッドから出て、部屋の窓から外をみると……広い草原があって川も見える。遠くには茶色い山々が見える。
「愛ちゃん。もしかして、人間のキャラって愛ちゃんと私だけ?」
「うん。今はそうだよ~。ママ、ブーツを履いてね」
今は……増やせるんだ。
あっ、ベッドの下にシンプルなショートブーツが置いてあった。ブーツを履きながら愛ちゃんの話を聞くと、愛ちゃんも私も食べなくても大丈夫でお腹が空かないそうです。ゲームならそうなのかな。
愛ちゃんに、開拓作業の画面を開いて、今作業している内容を見ることが出来ると教えてもらった。『はこにわ・オープン』と心の中で言うらしい……画面を見ると、
【開拓作業①森を育てる:指定エリア35% ②海の生物を育てる:アジ2・タイ2・ヒラメ2・カニ2・タコ2・イカ2・エビ2・鮭2・イルカ:未 ③陸の生物を育てる:スズメ4・ハト4・鴨4・白鳥4・フクロウ2・ワシ2】
記憶を失う前の私、欲張って育てているわね~。魚とかは、私の好きなのばかりね。あっ、好きな物は覚えている。食べた覚えはあるけど、誰と食べたのかが思い出せない……
初めに育てられる生物は、日本にいる野生動物や家で飼われているペットの動物で、色々作って行くと動物園にいる動物や珍しい動物を育てられるようになるそうです。ペンギンとか作りたいな……
作業内容を変更したい時は、番号に触れると出来るのか、①と②はこのままでも良いけど、③のフクロウ・ワシの
「愛ちゃん、③を一旦止めて小さい動物を作るわね」
「ママ、もしかしてエサがいると思っているの?」
「あっ、そうか……」
私と同じで食べなくても死なないそうです。そして、餌を食べると繁殖していくんだって。
私が苦手な生き物を作らなくて良いのが嬉しいな。あっ、でもワシはスズメを食べてしまうよね? ワシが、4羽になったら作業を終わらせよう。仲間が2羽だと寂しいだろうから4羽。
「虫を作らなくていいのね。愛ちゃん、凄いわ!」
「ママに褒められた。フフ」
部屋から出ようとしたら、ドアの位置が高い……顔の高さだし。あぁ、私が子どもだから、余計にこの部屋が広く感じるのかな?
部屋を出ると廊下があって、私の部屋が端っこで、右隣が愛ちゃんの部屋。愛ちゃんの部屋の前を進んで行くと、正面にダイニングと右側に広々としたリビングルームがある。
左手に玄関。玄関とダイニングの間のコーナーにキッチンがある。私たちの部屋から廊下を挟んで向かい側、玄関の左がお風呂とトイレになっている。ゆったり広くて、贅沢な作り。平屋の一軒家です。
「ママがね、こんな家に住んでみたいって考えていた家を、ボクが作ったんだよ。フフフ」
「そうなんだ。愛ちゃん、ありがとう」
「ママ、どういたしまして? フフ」
愛ちゃんは嬉しそうにモジモジしている。AIには見えないよ。会話も普通に人間みたいに対応して話せる……凄いね。
キッチンに行くと、作業台は大理石で出来ていて高級感がある。冷蔵庫も電化製品も揃っていて、食器棚には木のお皿やコップもある。
冷蔵庫を開けてみると、マヨネーズにケチャップ、ソースにバター、味噌に牛乳まであるよ。普通の家にある調味料は揃っているので料理も頑張れそうね。あっ、食べなくても良いんだったわね。
キッチンの作業スペースにミキサーやコーヒーメーカー・紅茶用のポットまである。インスタントコーヒーや紅茶のパックもあって、至れり尽くせりね。
この家には、電気・ガス・水道も通っているそうです。私には、サバイバル・アウトドアは向いていないって……愛ちゃん、ありがとう!
「ママがそう言っていたんだよ。『憧れるけど、出来ない』ってね。フフフ」
「そ、そうなのね……」
家の中を案内してもらった後、外に出てみることにした。
◆ ◆ ◆(AI)
ママが危ないと聞いた時、あの時の感情はなんだったんだろう。ママが消えてしまう? それは凄く嫌だったんだ。
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