第5話 星

 愛ちゃんとダイニングに行き、ミルクティーを2つ入れて、開拓作業の画面を見た。


「愛ちゃん、この★印がついてあるのはこの家かな?」

「うん。そうだよ」


 マップには、大きな大陸の他に大小4つの島があった。1番大きな島だけ草原になっていて、それ以外はまだ開拓していないみたい。


 1番大きな島は大陸西の北にある円形の島。2番目に大きな島はここから北にある菱形ひしがたの島。3番目の島は、大陸西の南に浮かぶ三日月の形をした島。最後に1番小さな丸い島はここから東に行った所にある。


 初めての作業で、『空・海・大陸』をゲーム内の時間設定を①ゲーム設定(現実の3倍速)にして作業したそうです。その間に、イベントツリーの項目を考えたんだって。増やす順番や何のアイテムを作れるようにするかを……私は、その辺りも忘れてしまっている。


「ママ。このゲームはね、ママの為に作られたんだ。ママの世界なんだよ。フフ」


「愛ちゃん……嬉しいことを言ってくれるのね。ありがとう」


 私の為に作ったゲームってことは、私の家族が作ってくれたのかな? 忘れてしまって申し訳ないです。そうね……せっかく生まれ変わったんだから、楽しもうかな。愛ちゃんと一緒にね。


「ねね、愛ちゃん。③の作業を他の項目にしようと思うんだけど、オススメあるかな?」


「ママ、小さな動物とかは? 草原があるから、草を食べる動物なら繁殖するよ」


「それ良いわね。そうするわ」


 愛ちゃんのアドバイスを聞いて、イベントツリーの『大地』から、動物の種類限定で……う~ん、どれにしようかと悩んだ結果、ウサギと普通のネズミは抵抗があるからハムスターにした。ゲームだから良いよね。よし、作業の設定が出来た。


 あっ、星空が見たかったんだった……次回、作業を変更する時の為にメモでもしておこうかな。部屋の机の上にメモ用紙があったはず、後で忘れずに書いておこう。


 ◇◇◇

【開拓作業①森を育てる:指定エリア45% ②海の生物を育てる:アジ4・タイ4・ヒラメ4・カニ4・タコ2・イカ2・エビ2・鮭2・イルカ2 ③動物を育てる:ウサギ2・ハムスター2】


 動物の作業をセットしてから2日目、開拓作業を見てみると、2種類ともペアーが出来たので、他にも作りたいのがあるから外した。


「ねえ、愛ちゃん。星空を作りたいんだけど、③を『星』にしたら時間掛かるかな?」


「ママが『雲』を作業した時はね、3日位でセットから外していたよ」


 どれ位の星空にしたいのか、日数を調節すれば良いんだって。後から追加作業することも出来るから、夜空を見上げて調節すれば良いと教えてもらった。


「そっか、分かったわ。ありがとう」


「ママ、星空が楽しみだね。フフ」


 ◇◇

 『イルカ』がやっと4頭になったので、②を作業から外して、『月』を作ることにした。隣で愛ちゃんがニコニコと笑っている。


「愛ちゃん、私が可笑しなことをしようとしたら教えてね?」


「好きにしたら良いんだよ。失敗したらリセットすれば良いからね。フフ」


 えっ、リセット……せっかく時間を掛けて作ったのに、勿体ないじゃない。時間も戻るのかな? 愛ちゃんに聞いてみたら、時間を戻すんじゃなくて、作ったモノが消えるんだって。それは、勿体ないな。


 『森』の作業に、かなり時間が掛かっている。1日5%しか上がらない。一旦作業から外したくなるけど、きっと意味があるから①にセットしているんだと思うのよね~。我慢しないとね。


 寝る前に空を見上げたけど、星が見えない。この世界に2個だから大陸の反対側だったら見えないか。


◇◇

 『はこにわ』に来て9日目の朝、『はこにわ・オープン』

【開拓作業①森を育てる:指定エリア75% ②月を作る:1 ③星を作る:16】


 『月』が出来たね。『星』は1→2→4→8→16と倍に増えている。ダイニングで、愛ちゃんに次は何を作ろうかと相談する。


「ママ、雨とかはどうかな? 森も育って来たし動物もいるからね」


「そうね、植物には雨が必要よね」


 豪雨は嫌だと言うと、育ち過ぎないように日数を調節すれば良いと教えてもらった。こういうのを失敗したら、リセットをお願いすれば良いよね。


 ◇◇

 次の日、雨の表示が『小雨』次の日が『弱雨』になった。『星』は32個→64個、明日128個になるはず。今夜の夜空を見て作業を中止するか決めよう。


 夕方、お風呂に入る為に脱衣所に行く。1週間ほど前から入っているんだけど、洗面所に全自動洗濯機があるんですよ。着替えがないから、脱いだ服を洗濯機に入れて回しておく。そして、お風呂にゆっくり入るの。


 洗面台に鏡があって、初めて自分の顔を見た時はビックリした。肩に届かない長さのサラサラの黒髪。フワッとしていて、ドライヤーでセットしたみたいなの。目はクッキリ二重でまつ毛が長~い。プックリした唇がピンク色で、可愛い……幼い女の子……!? 


 愛ちゃんは、DNA情報から作ったって言っていたよね? 自分の顔さえ覚えていないけど、私はこんな顔しているんだ……5~6歳位かな。いや、これは……ゲームキャラとして可愛く作っているんだと理解したわ。ゲームのキャラが魅力的じゃないと、誰も遊ばないもんね。


 お風呂に行くと、蛇口からお湯が出て湯船に溜めるようになっている。愛ちゃんは入らないんだって。予備のキャラを、十分に作っていないから止めておくと言っていた。私はお風呂に入っても大丈夫らしい。


 お風呂場は広くて、湯船も広い。子どもだと余計に広く感じるのかな……お風呂が気持ち良くて……ウトウトしてきた……


 ザブン!


 はっ! 湯船で寝てしまった。身体が小さいから、湯船に全身が滑り込んでしまって……ちょっと、お湯を飲んじゃったし。


 お風呂から出たら、なぜか愛ちゃんが腕を組んで仁王立ちしていた。


「ママ……気を付けてね」

「えっ? う、うん……」


 怒られた。ウトウトして湯船に滑り落ちたことを言っているのよね? 愛ちゃん……どうして知っているの?


 ◇◇

 今朝もミルクティーを入れてダイニングで飲む。愛ちゃんも一緒です。


 朝起きたら、ダイニングでミルクティーを飲むのが日課になりました。のんびりとした一日の始まりを感じるんだけど……こんなにのんびりしても良いの? って、思ってしまう。食事も作らないし……調味料は豊富にあるんだけど、まだ食材が無いからね。


 開拓作業を確認すると、

【開拓作業①森を育てる:指定エリア90% ②雨を作る:雨 ③星を作る:128】


 昨夜の星空は綺麗だったよ。今夜は、倍に増えているから終わりにする。夜空を見て星が少ないと思ったら、また作れば良いしね


 ②の『雨』も、豪雨とか強雨とかはイヤなので、別の作業に変更することにした。開拓作業から外すと、『虹』と『天の川』が派生した。『流れ星』もある。


「愛ちゃん、イベントツリーにステキな項目が増えたわ」


「ああ、それはママが開拓項目に入れたいって言ったんだよ」


 そうなんだ、前の私と好きな物は変わらないのね。


「ねえ、愛ちゃん。1つはね『虹』の開発にするけど、後1つは何にしようかな?」


「ママ、雨も降るようになったから、植物を育ててみる?」


「それは良いね」


 『◇植物』をタップしたら、色々と出て来た。そのまま収穫して食べられるのがいいな~。


「愛ちゃん、果物の木にするわ」

「ママ、楽しみだね。フフ」


 『◇植物』の項目は、植える場所を指定出来たので、部屋の窓から見える東側にりんごの木、ダイニングから見える所にみかんの木を植えることにする。




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