第13話 サウンド・ウェーブ・リスナー

 通常、人間というのは限られた音の範囲しか聴くことが出来ません。これを可聴域と呼ぶのですが、ホモ・サピエンスはそれもあってか、他の生き物のコミュニケーションを理解することが出来ませんでした。そこで私が考えたのが、サウンド・ウェーブ・リスナーです。このテクノロジーは、ホモ・サピエンスでは聴くことが不可能な超音波を、ホモ・テクスの技術力で聴くことを可能にしています。


 そうして、サウンド・ウェーブ・リスナーの効果を調べるため、考案者である私、ウェイビスが、このテクノロジーを取り入れることで、ホモ・テクスになった最初の人間になりました。もちろん、見た目は、ホモ・サピエンスだった時と、何ら変わっていません。


 しかし、効果を確かめる機会は、私の住む場所にはありませんでした。大都会過ぎて、他の生物を野生で見かけることが無いのです。そのため、私は生物学の研究をしているという知り合いのモノルに頼み込み、野生生物が暮らす森の奥深くまで、一緒に連れて行ってもらいました。


 そして私は、森の中で生物が発する、多様な超音波を耳にしたのです。そうか、この音か。この音を生物たちが出しているんだ。それが分かって、私はひどく興奮しましたよ。ええ、今でもあの感覚は忘れられません。


 ですが同時に、サウンド・ウェーブ・リスナーの悪い側面にも気づき始めました。なんだか分かりますか?ホモ・テクスの特徴は、ホモ・サピエンスにはなかったものを新しく付け加えることです。私はそれにより、常に音に悩まされる状態に変化していたのです。


 つまり、どういうことか。例えるなら、絶えず何種類もの音楽を聴かされているといった感じでしょうか。したがって、生物の出す超音波を聴くことはできても、その超音波を出す生物や、コミュニケーションの意味を特定する行為に至っては、現状、とても難しいという結論になりました。


 しかし、私が諦めることはまだあり得ません。なぜなら、改良版サウンド・ウェーブ・リスナーが完成されたことに伴い、私も、自身が持つホモ・テクスの機能を最新のものに移行したからです。私を含む多くのサウンド・ウェーブ・リスナーが実験的に生物学への研究に協力しているので先にはなりますが、直にいい知らせをお聞かせることが出来るでしょう。

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