第12話 メタリック・スカウター

 ホモ・サピエンスが、科学技術の発展とともに繁栄してきたのは、君も知っての通り。でも、その歴史の中には、現代では再現できない高度な技術を使って作られた道具や建築物が、少なからず存在しているの。今の言葉で表現すると、ロストテクノロジーって言うのかな?そういった失われた技術の詳細を解析して、現代に復活させるために完成したのが、これ、メタリック・スカウター。実は、このメタリック・スカウターも、君が持っているものと同様、ホモ・テクスという新人類の、さらなる可能性を調査する過程で、開発されたテクノロジーなんだよ。


 これは、今までのテクノロジーと違って、体の好きな場所に取り入れて使うことが出来るの。1番多いのは、腕や足の中に埋め込んで使う埋め込み型だけど、シャッター・アイのようなテクノロジーに憧れて、眼球型を選ぶ人もいるみたい。そして、メタリック・スカウターの特徴を一言でまとめると、金属の成分検査。メリットは何といっても、金属でできた物体を壊すことなく、その成分を特定できること。もちろん、地球で使われている金属でなくても、ある程度の情報を提供してくれるから、ロストテクノロジーの解明に、大いに役立っていると言ってもいいと思う。


 でもやっぱり、使いようによってはデメリットの方が大きいんじゃないかと、この前の経験でつくづく実感したわ。あの時は、古代文明の遺跡から発掘された大量の装飾品を調査していたんだけど、その中には、当時はもちろん、今の技術でも作れないだろう高い技術によって作られた道具が幾つかあったの。私は、それが金属でできた物体だと信じて疑わず、どんな金属成分がどれくらいの割合で使用されているのか、調べようとしてしまった。メタリック・スカウターは、金属の成分検査が可能な半面、金属以外で作られた物体を調査しようとするたび、テクノロジーとしての精度が落ちていくというデメリットを知っていたはずなのに。


 そうして、無理に成分検査を繰り返そうとした結果、私のテクノロジーは故障し、エラーという文字が表示されたまま、動かなくなってしまった。ね、言ったとおり、全く動かないでしょ?壊れたら、新しい飲み交換すればいいって思うかもしれないけど、ホモ・テクスの場合、人体とテクノロジーが上手く融合しているから、テクノロジーの交換も、病院で行う手術並みに命懸けで、結構大変らしいのよね。

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