13、貴方が好きなんです
春が不良に絡まれたが。
これに対して不良を前田さんが倒して.....俺達は無事に帰って来た。
すると背後の春が俺に向いてくる。
赤くなりながら、だ。
林檎の様に赤い。
「今日は.....有難う。その。付き合ってくれて」
「.....別に構わない。.....すまないな。色々な事に巻き込んで」
「何でアンタが謝るのよ。これは私が悪いのよ。.....そ、それに私は.....嬉しかったんだから。格好良かったし.....」
「途中から何を言っているのか声が小さくて聞き取れない。.....春。何を言ったんだ」
「何でもない!!!!!」
それから春は直ぐに家に入って行った。
俺はその姿を見ながら?を浮かべつつ歩いてドアを開けてリビングに入る。
水を少し貰おうかと思ったのだ。
するとそこに.....宝珠がコップで何かを飲みながら居た。
俺を見ながら眉を顰めている。
その姿を見ながら、宝珠、と声を掛けてみた。
「.....何かしら」
「.....すまない。邪魔だったらこの場から去る」
「.....別に構わない。私は貴方の存在を意識して無い」
「.....そうか。それは良かった」
そして宝珠はコップを置いてから去ろうとする。
その宝珠とすれ違った時。
俺は声を掛けなくても良いのにこう言ってしまった。
宝珠。お前は春たちと関わらないのか、と。
俺は一体何を考えているのかしらないが。
「.....他人の貴方には何も分からない」
「.....そうなのか。.....俺は.....お前と春と七色で一セットと思っているが」
「.....私はいい。私は.....災いを呼ぶから」
「.....それはどういう意味だ」
「.....私が母親を殺したも同然だから。.....それ以上は無いけど」
俺は見開く。
そして宝珠に向くが。
宝珠はつまらない物を見た、的な感じで去って行った。
後には俺と謎だけが不条理に残されてしまう。
宝珠は何が起こったのか。
それをふと考えてしまった。
だが答えは浮かばない。
「.....色々あるんだな。宝珠も」
考えながら顎に手を添えると。
リビングのドアがまた開く。
それから頬を真っ赤に膨らませた七色が入って来る。
俺にづかづかと近付いて来る。
何だ?、と思いながら居ると七色が俺を見上げてきた。
「でーとしたんですね?春お姉ちゃんと」
「.....デートではない。.....参考書を買いに行ったんだ」
「フーン.....かなり春お姉ちゃん嬉しそうだったんですけど」
「.....それは参考書を持っているからだろう」
「違うと思うんですけど」
七色は更に頬を膨らませた。
ハリセンボンの様だな。
しかし何でそんなに怒っているのだ。
訳が分からないのだが。
考えながら七色を見つめる。
「七色。何でそんなに怒っている」
「べっつに!?怒ってませんが?ふーんだ」
「.....全く意味が分からない。何故怒っている?」
女子という生き物は皆こんな感じか。
扱いづらいから嫌いなのだが。
考えながら.....七色を改めて見る。
その姿は外出用の服装でポシェットを持っている。
何だ?何処か行くのか。
俺は七色を不思議そうに見る。
「七色。何処か行くのか」
「.....鈍いですね。.....こんな格好をして一真さんの前に現れるなら用件は一つしかないですよね」
「.....?.....どういう事だ」
そ。それも言わせるんですか?
と七色は恥じらう。
それから.....俺を潤んだ目の上目遣いで見てから。
目を逸らして唇を噛んでから。
また見上げる。
「で、デートして下さい!」
と言って.....何?
俺は眉を顰めて見つめる。
七色は、私はでーとがしたいです!、と胸の前で両方の拳を握る。
それから期待の眼差しで俺を見てくる。
まるで何か焦っている様に見えるが.....何だろうか。
この様な有様で断る.....のも申し訳無いか。
「.....忙しいが.....分かった。デートしようか」
「あ、有難うです!だから私は....一真さん.....に」
「.....?.....聞き取れない」
「乙女に追及は禁止です!行きますよ!」
「.....?」
訳が分からないのだが.....。
こうして俺は何故か2回も外に駆り出される事になった。
外に出るのが億劫というか面倒な俺にとっては苦痛でしかないのだが。
何故こんな事をしなくてはいけないのか。
面倒臭いなどもあるのだが。
しかしこの様にウルウルと目を潤ませて言われては仕方が無い。
困ったものだな.....。
最近の女子はみんなあざといのか?
勘弁してほしい。
☆
「着きました」
「.....何処だ此処は」
「見て分かりませんか?遊園地です」
「.....遊園地.....」
七色と共に家にあった黒い外車に乗って20分掛けてやって来た場所。
遊園地など15年ぶりぐらいに来た気がする。
俺は考えながら目の前の騒がしい場所を見つめる。
色とりどりの輝きの先に。
様々な遊具がある。
俺はそれを見つつ.....盛大に溜息を吐いた。
それからまた七色を見る。
七色は期待の眼差しで俺を見ていた。
「.....正直。お前が何故ここまでするのか良く分からないんだが.....」
「まだ分かりませんか?なら分からせてあげます。今日一日で」
「.....?」
俺は首を傾げる。
すると七色は俺の手を握った。
それから駆け出して行く。
ちょっと待て。
走るのは嫌なのだが。
ともつれる足で思いながら連れて来られた場所は.....観覧車。
俺は困惑しながら観覧車のチケットを買う七色を見る。
そして七色はそのまま俺の手をまた握った。
「さあ。乗りますよ。一真さん」
「.....いや。何故俺が.....ちょっと待ってくれ」
「の・り・ま・す・よ」
「.....ハァ.....」
それから強制的に七色は俺を観覧車に乗せた。
まるで母親が子供を学校に引き連れて行くような。
その様に思いつつ目の前の椅子に腰掛ける俺。
そして観覧車は動き出し七色が対面に赤くなりながら腰掛ける。
何がしたいんだコイツは。
「.....七色。そろそろ話して貰って良いか。何がしたい」
「.....一真さんへの愛の告白です」
「.....告白か.....な、何.....?告白?」
俺は全身が固まる。
それはまるで急速冷凍されたぐらいに。
そして目の前の七色を見る。
七色は俺を見据えた。
どういう事だ.....。
「.....一真さんが好きです」
「.....ちょっと待て.....嘘だろう」
「.....嘘で告白する人は最低ですよ。.....でも私は今は違います。.....一真さんが優しいから好きです。本気の告白です」
「.....すまない。俺なんかを好きになっても仕方が無いぞ七色。.....他を当たってほしい。同級生とか」
「嫌です。私は一真さんが好きです」
七色は真剣な顔で赤い顔で俺を見据える。
俺は七色を驚愕しながら見る。
何故俺なんかを好きになるのだ。
意味が分からないのだが。
「.....私は.....一真さんだから告白したんです。負けたく無いんです」
「.....負けたくないの意味が分からない。他に俺を好きなヤツが居るのか」
「.....いえ。それは言えないです。でも別の女の子に取られるかもしれないなら。今告白するべきだと思いました」
「.....」
俺は額に手を添える。
悩んでしまうが。
しかし.....答えは当然決まっている。
ノーだ。
俺は七色を見つめる。
そして首を振った。
それから話す。
受け入れられない、と。
そうしてから七色を新しい様な眼差しで見る。
七色は、ですね、と苦笑する。
「.....はい。知っています。だから.....」
それは蝶の様に舞った。
いきなりの事で対処が出来なかった。
そして俺の唇がいきなり唇で塞がれる。
俺は驚愕しながら.....七色を一点の曇りも無く見据えた。
それから七色は唇を離してそのまま身体を離す。
俺をジッと見つめる七色。
「.....これだけは受け取って下さい。大好きな証です。ファーストキスです」
そう言いながら、だ。
俺は流石に.....少しだけ赤面せざるを得なかった。
ここまでやられると、だ。
流石の俺もそこら辺に転がっている石とかではない。
生き物なのだ。
しかし困ったな.....。
ここまで七色が俺を.....。
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