10、一真のその過去と
久し振りに人に認められた気がした。
昔は違ったのだが。
その昔というのは小学校時代。
丁度.....親を失って妹を失った頃。
俺は散々、親が居ない、と人に馬鹿にされた挙句。
テストでいくら点を取っても良い事をしても認められなかった。
それのせいかな。
俺がここまで捻じ曲がってしまったのは.....だ。
「七色。どうして俺をそんなに求める」
「え?それは簡単ですよ?.....一真さん以外に考えられないからです」
俺は自室に戻ってから勉強をしている中。
横で漫画を読みながらベッドで寝転んでいる七色に聞いた。
何故コイツは自室の様に馴染んでいるのだ。
この場所は仮にも俺のテリトリーなのだが.....。
額に手を添えながら考える。
するとまたニコニコしながら起き上がる七色。
「一真さん。貴方は他の人には無い魅力があります。.....きっと私達もみんなも助けてくれます。太陽が照らす様に。.....だから失いたくなかったんです」
「.....俺は太陽では無くその影しか無いと思うが」
「.....そういう一真さんですけど。.....でも魅力は有ります。私も春お姉ちゃんも宝珠お姉ちゃんもそれは認めていますよ。絶対に」
「.....そうか」
そんな七色の話を聞きながら.....俺は思い出す。
ふと、お見合い、という言葉を。
俺は顎に手を添える。
そこら辺の話は聞いてない様だが.....どうやら七色と春と宝珠。
俺はいずれかと結ばれる運命の様だ。
決まった運命はあまり好きでは無いが仕方が無い。
「.....七色」
「.....はい?」
「.....お前は俺が好きか。お見合いすると言ったらするか」
「.....ふあ?」
目をパチクリした。
それから頬を真っ赤に染める七色。
そして頬に手を添える。
両頬に、だ。
まるで恥じらっている様に見えるが?
冗談で言ったのだが.....何だこの予想外の反応は。
思いつつ七色を見る。
「.....七色?どうした」
「.....わ、私.....は.....別に気にしないでしゅよ?お、お見合い」
「.....噛んでいるが。.....もしするならお前は喜ぶって事か」
「ち、違いますから!私は....!!!!!」
それから漫画を持ってから。
そのまま立ち去って行った七色。
そそくさと、だ。
俺は?を浮かべつつ考える。
しかし答えは浮かばなかった。
七色は俺を好いているのか?
だとすれば有り得ないのだが.....。
人の感情は良く分からないな。
プルルルル
「電話?.....前田さん?.....もしもし」
『上手くやってるか?!一真!アッハッハ』
「.....はい。その節はお元気そうで」
前田千佐子(まえだちさこ)。
30代の女性だ。
児童養護施設の施設の長をしている。
容姿としては茶髪のポニテロングに。
煙草を吸っていた。
それも有りクールな容姿をしている。
何時もジーパンばかり履いている。
つまり.....スカートが似合わない人だが.....根っから良い人だ。
「.....相変わらずですね。本当にいきなり電話とか」
『当たり前よ。.....私はアンタの事を気にしているんだから』
「.....そうですか」
『一番気にしているんだからね。.....それなりにはその家に懐きなさいよ』
「.....はい。.....この家の人達はかなり良い人ばかりです。.....嬉しい限りですよ」
俺は少しだけ笑みながらそう答える。
実際は馴染んでいるか分からないが.....。
まだ未熟な面も有るしな。
考えつつ.....前田さんに話した。
本当に変わらず.....この人こそ太陽と言えるような人に。
『正直言って君は何処に行っても馴染まなかったからね。良かったよ本当に』
「俺は粗大ゴミですか?その言い方だと」
『まあそうとも言えるけど.....大変だったからねぇ』
「相変わらず直球ですね。オブラートもクソも無い」
『そんなものに包む様な人間と思っているか?私を。.....まあでも元気そうで何よりだよ』
そんな前田さんに。
俺は聞いた。
冨樫さんの病気の事を知っていたのか、とである。
すると前田さんは、それは承知だったよ、と答えた。
それから頭を下げる様な言葉を告げてくる。
『君を幸せにしたかった。.....婿として施設から出したかったんだ。冨樫さんとは古くからの知り合いでもあったしね』
「.....相変わらずハチャメチャですね。それで馴染まなかったらどうする気だったんですか」
『.....それは無いさ。君は.....他の人とは違う魅力があるからね』
「前田さん.....」
『前の奴らはみんなクソだったけど。ゴメンね。そこだけは見抜けなくて』
「俺も悪いと思いますから。.....それは気にしないで下さい」
アイツらに虐められた君が.....本当に.....、と前田さんは切り出す。
そんな前田さんに、大丈夫です、と俺は声を掛けた。
それから、今が上手くいっていますから、と柔和に声を掛ける。
優し気な風の様に、だ。
それから窓から外を見る。
「俺はこの場所に来て学んでいます。.....昔は昔ですよ。.....どうでも良いです」
『君からそんな言葉を聞ける日が来るなんてね。.....一真。.....良かった』
「.....はい」
それから、じゃあちょっと用事があるから、と電話から聞こえ。
俺も、はい、と言ってから電話を切った。
それから天井を見上げる。
学ぶと咄嗟に言ったが。
本当に学んでいるのか俺は?、と思いつつ天井を見つめていると。
コンコン
「.....?.....はい」
俺の部屋にノックがあった。
そう答えると.....ドアがゆっくり開き。
そして春が顔を見せた。
どうした、と言ってみると。
春はモジモジしながら俺を紅潮の顔と目で見てくる。
「参考書を買いに行きたい.....んだけど」
「.....それがどうした?」
「.....一緒に付き合ってくれない?」
「.....は?」
俺は目を点.....というか目を丸くする。
それから春を見ていると。
春は、私は実は親友が余り居なくて.....医学を語り合う仲間もなかなか居なくて.....だからアンタに!、と向いてくる。
泣きそうな顔で、だ。
「.....そうか。なら分かった。.....行こう。しかし何時行くんだ」
「.....え?あ、有難う.....というか今日は無理だから明日行こうかなって思う。丁度3連休だしね」
「.....確かにな。.....しかし良く分からないがデートになる訳か?これは」
「で!?!?!は!?!!?」
耳まで真っ赤になる春。
そんな訳ないでしょ!!!!!、とガルルルルと歯を見せて警戒する。
ん?違うのか?
良く分からないな.....。
俺はしっかり考えながら顎に手を添えた。
本当に女心は良く分からないな。
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