5、3人目の娘との出会い

恋愛とは何だろうと考えた事がある。

今のこの状態が恋愛なのか、と考える事もある。

とは言っても何かが違う気がするが。


考えながら目の前の通路を手を引いて歩く七色を見る。

そうしていると見知らぬ少女に出会った。

俺と同級生ぐらいの少女だ。


黒髪のロングでかなりの美少女であり。

そして.....スタイルもかなり良く。

ジーパンなどを履いている。

だがその顔はかなり険しい目つきをしている。


どうもこれが.....最後の1人の様だ。

3姉妹の、だ。

まるで本当に色とりどりの宝石だな。

七色、春、そして.....この子。

すると七色が嬉しそうに七色に駆け寄った。


「宝珠お姉ちゃん♪」


「.....何をしているの。七色」


「.....え?分からない?この男の人だよ。新しい同居人!」


俺は礼儀として頭を下げる。

そして見つめるが。

その顔は春より厳しい。

俺を邪魔者としか扱ってない様な顔だ。


それでか。

会いたくなかったのは。

俺もここまで嫌われると何も言えない。

考えながら.....宝珠という少女を見る。

かなり凛としているな。


「私は宝珠。.....じゃあ」


「ま、待って!?宝珠お姉ちゃん!」


「何を待つの。七色。私は忙しいんだから」


「えっと.....えっと.....そんな自己紹介なんてないよ。もうちょっと丁寧に.....」


「.....何故?」


何故と言われても.....。

と目線を泳がせて困惑する七色。

それからオドオドする。


俺は七色に、どうするんだ、という感じの目線を送る。

そのまま宝珠とやらは去って行ってしまった。

うー.....、という感じで見る七色。


「.....宝珠お姉ちゃんは株取引をしているの。.....学校に行ってないんだ」


「.....それは凄いな。それでやっていけるなら相当に儲かっているんじゃないのか」


「資産5億円.....だって」


「.....それは凄いな。5億か」


「.....でもお姉ちゃんは遊んでくれないから寂しい」


それから悲しげな顔をする七色。

俺は.....その顔を見ながら真顔で、そうか、と言う。

逆に言えばそれは良いじゃないか。


一人になれるって事だ。

何処が悪いのか分からない。

それは俺だから、かもしれないが。

過去も過去だったしな。

俺は9歳ごろまでは明るかったかもしれないが。


「.....七色。気を落とすな」


「.....!.....一真さん?」


「.....正直に言って。.....俺には何がそれで迷惑なのか分からない。だが.....お前が言うなら悲しいのだろう。.....俺はこの様な様だからな。すまない。頑張ってみてはどうだろうか」


「うん。一真さんがそう言うなら.....」


「.....」


俺はニコニコする七色を見る。

そして歩き出した。

何で俺はこんな事を言うのだろうか。

あてられてしまったか俺は.....。

人に流されるつもりは無いんだがな。


「有難う。一真さん」


「.....俺は何もしてない。.....ただアドバイスをしただけだ。それを実行するかしないかはおま.....」


「一真さん」


「.....何だ」


ニコッとする七色。

そして胸に手を添える。

そんな難しい事を言わないで下さい。


一真さんはもうちょっと気楽で良いんです、と柔和になる。

それから七色は俺の手を握ってくる。

本当に可愛い子だな、と思う。

そして心優しい子だな。


「.....お前は何でそんなにニコニコしているんだ。何時も何時も」


「.....私は強く居たいから.....居たいから。みんなと仲良くしたい。それだけです。だから.....ニコニコしています」


「.....それは母親の言いつけか何かか」


「.....え?.....え。何故それを.....」


「.....ママって言っていた。.....俺は.....寝ているお前の寝言を聞いた。すまない」


少しだけ肩を震わせる七色。

俺はその姿を見ながら.....目線をずらして答える。

両親を失った俺には。


その気持ちは.....分からなくも無い。

たまにふと思い出すからな。

考えつつ.....俺は改めて七色を見る。


「.....お前は母親に会いたいのか」


「.....あい.....会いたいですよそれは。当たり前じゃないですか。だって.....ママが.....一番.....私は好きだから」


「.....そうか。.....すまない。思い出させてしまったな」


「.....いいえ。.....大丈夫です。私は.....強いんですから」


『.....まま.....』


それはないな。

強い、か。

人間は誰もが弱いから。


弱点があるから。

強いってのは有り得ないと思う。

特に七色は弱いと思う。

それはまるで.....茎を傷付けられた花の様に弱い。


「.....七色。無理はするな。.....俺はこの調子だが。.....お前から話は聞ける。それぐらいは出来るから」


「.....一真さん.....」


「.....すまないが俺は臨床心理士でも無いから。専門でアドバイスは何も分からないが。.....相談擬きは出来るつもりだ。それ関係の勉強をしているからな」


「.....え?そうなんですか?.....それは.....大きな夢ですね!」


「.....ただ勉強しているだけだ。大きな夢にするつもりはない」


でも一真さんらしいですね。

やっぱり心優しい、と満面の花咲く笑顔を浮かべる七色。

そんな筈はない。


俺は.....心優しい訳が無いが。

ただやるべき事をやっている、こなしているだけだ。

でもそう言うなら受け取っておこう。

その様な気持ちを七色が思うのなら、だ。


「一真さん。やっぱり良い人ですね」


「.....買い被りすぎだ」


「.....でも春お姉ちゃんも実際は期待して心を寄せていますよ」


「.....アイツが?.....そうか」


「そうです。一真さんは自信を持つべきです」


じゃあまだ案内してない場所があるので、と笑顔を浮かべて俺の手を取る七色。

相変わらずの.....お節介だが。

嫌気は差さないな。


前よりかは、だ。

少しだけ認めたと言う事だろう。

俺は。

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