4、歩み出すその先に
七色。
そして春。
それから.....まだ見てない1人。
2人にはそれぞれ.....重い過去が有るのだろう。
だけど俺にとってはどうでも良い話だ。
これ以上に関わってしまえば.....また面倒な事になる。
そう思いながら家の中を見ていた。
まるで.....そうだな。
何かに思い耽る様に。
「.....しかしデカイ家だな。やはり」
リビングと台所の大きさも半端じゃないが。
この家はやはりデカイと思う。
俺は思いながら.....顎に手を添える。
やはり運が良かったのだろうな俺は。
最後の時になって、である。
最悪なものだ。
今になって.....運を使い果たすとは。
馬鹿なものだな相変わらず。
「斉藤さん♪」
「.....何だまたお前か。何の用だ」
「もー。ひっどいですね。窓の外に乙女を締め出した挙句に.....。でも見直しました。私を父様に引き渡してくれたんですね」
「.....まあ.....邪魔だったからな」
「邪魔とは失礼ですね」
「邪魔なものは邪魔だ」
そう言いながら俺は頬を膨らませてムッとしている七色を見る。
先程と服装が違う様だが。
何か目的でも有るのだろうか。
それとも金持ちってのはこうやって着替えるのか?何時も何時も。
考えつつ七色を目線で見る。
すると七色から予想外の言葉が出てきた。
「ね。斉藤さん。お礼にお家内デートしてあげます。それで着替えました」
「.....何を下らない事を。.....俺はそんな事はしない。この家の構造を見ていただけだ。そんな事はする暇は無い」
「そんな事言わないで下さいよー」
「.....しないって。面倒臭いのだから」
む。じゃあ言いますよ。
私.....斉藤さんにえっちな事をされたって叫びますから。
と胸を張る少女。
このクソガキ。
俺は額に手を添えながら.....盛大に溜息を吐いた。
竜巻でも起きそうな溜息を。
それから俺は七色を睨む。
「分かりましたか?だからデートする理由があります。貴方に」
「.....お前は悪女なのか。それとも何か。.....ただの邪魔者か」
「私はどっちでも無いです。.....正義人です!」
「.....?.....意味が分からない」
「まあつまり私は貴方の敵じゃ無いって事です!」
「.....随分と滅茶苦茶な結論だな。.....だがすまないが俺はお前を敵では無いと見れない。.....今までの事があるしな。人を信頼するのはそう簡単じゃ無いんだ」
ムー.....、と眉を顰めながらジト目で俺を見てくる七色。
コイツは何なんだ本当に。
俺の心にドンドンと土足で踏み込んで来ようとする。
この様なやり方は俺にとっては気に食わないのだが.....。
考えながら居ると七色は、まあどっちでも良いですけどデートしますよ、と俺の手をそのまま握ってくる。
うわ。何をする。
「ちょっと待て。勝手に握るな手を」
「美少女が握っているんですよ!もっと盛り上がって下さいよ」
「良い加減にしろ!」
俺は言葉を荒げて手を振り解く。
それから.....七色を見る。
七色は少しだけショックを受けた様な。
目をパチクリして複雑な顔をしながら俺を見てくる。
そんな七色を目を細めて見ながら。
盛大に溜息を吐いた。
「.....お前は俺の何なんだ。嫌な事は嫌って言っているだろう。.....そんなに親しい仲ではない。.....なのに何故、俺に構う?.....その気力に付き合う程の人間じゃないんだぞ俺は.....」
「.....何で.....」
「.....?」
「少し.....ぐらい良いじゃないですか!私は嬉しかったんですよ!貴方が来るって決まってから嬉しかったんですよ!お兄ちゃんが出来たって思って!だったら少しだけでも甘えて良いじゃないですか!.....何でそんなに嫌うんですか!?これだけ必死にやっているのに!」
いきなりの大声。
まさかの絶叫だった。
俺はビックリしながら響き渡る声を聞きつつ七色を見る。
七色は涙を浮かべて目の前で手を組みながら。
祈りを捧げる様に俺を見てくる。
それから.....手でグスグス涙を拭いながら言う。
「私は仲良くが良いです。みんな望んでいます。だから.....仲良くして下さい。私と」
「.....それは.....」
「斉藤さんの過去は来る前から知っています。.....それなりですが。.....でもだからと言って斉藤さんを一人ぼっちにする理由にならないです。この家はこの家ですから。だから私の提案には従ってもらいます」
「.....七色.....」
「.....初めて名前で呼んでくれたんじゃないですかね。.....一真さん」
「.....」
七色は、え。えへへ、と嬉しそうにはにかむ。
正直言って。
俺は.....コイツらを本気で敵と思っていた。
それどころか邪魔だとも。
だけど何か少しだけでも違う目で見ても良いのかもしれない。
そんな感じだった。
それで複雑な顔を浮かべていると七色は俺の手を改めて握ってくる。
それからニコニコと笑顔を浮かべた。
「.....だからデートして下さい」
「.....デートとはいかないが。.....まあそれなりには付き合う。.....お前に根負けした」
「.....それで良いです。有難う御座います」
七色がこんな絶叫を上げれるとは思わなかった。
俺は考えながら.....目線だけ窓から外の景色に向ける。
そして溜息を吐きながらそのまま俺は七色に手を引かれた。
まあたまには良いかもしれない。
下らない事に付き合うのも。
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