2、「.....まま」

この世界は本当に簡単に足で踏まれて花が萎れる世界だと思う。

花が萎れるってのはつまり生き辛い世界と言っている。

その為の栄養剤も効かない様な、である。

枯れた花には修復しようにも何も効かない。

それと同じだ。


俺はこの世界も生きている事も全部が嫌いだと思っている。

交通事故で俺だけが生き残ってから、だ。

だけど児童養護施設の前田さんに出会ってから。

この世界は少しだけ色付いている、と。

そう感じれた気がした。


だけど18歳になろうとしている今。

俺はまた.....希望を見失いそうになっている。

その矢先の事である。

俺は.....美少女3姉妹の居る少しだけお金持ちの家に引き取られた。

だけど結局は何も変わらないと思えるけど。


「.....何だお前は」


「何ですか?アハハ」


「.....いや。何をしているのかと聞いている。何故俺の部屋で寛いでいる」


「私の家ですよ?此処。だったら斉藤さんの家も当然.....私の部屋です」


部屋で小説を読んでジッと椅子に座って考え事をしていると。

何故か知らないが三女?の七色が俺の部屋に無理矢理、居候し始めた。

正確には俺用に用意されたベッドで漫画を読んで寛いでいる。

確かにそう言われると納得せざるを得ないが.....。

だが.....この様な状態では邪魔だ。

石膏の石像が置いてあるぐらいに。


「.....分からなくもないが.....寛ぐのが何故俺の部屋なんだ」


「もー。固い事を言わないで下さいよ。私みたいな美少女が居るんですよ?少しぐらいは何か思わないんですか」


「.....何も思わない。欲情でもしろというのか?.....すまないがその様な気も無いし馴れ合う気はないのだが」


「もー!!!!!何でですか!固いですね!」


漫画をバサっと置いてから。

俺を頬を膨らませて可愛らしく見上げる七色。

じゃあ聞きますけど何で貴方はこの場所に居るんですか!?、と言ってくる。


それは簡単だな。

前田さんの面子を叩き潰す訳にはいかない。

簡単に帰ってしまって、である。

それだけだ。

だからそれ以外ならどうでも良い。


「俺は親の面子を壊す訳にはいかないと思っている。ただそれだけだ。だから経験値を積み上げる気は無い。今までが壊されてばかりだったからな。逆に聞くがお前達と仲良くしてそれはプラスになると言えるのか」


「.....難しいですねぇ。.....プラス?.....カッタいなぁ」


「そういう事だ。今直ぐに.....」


「出て行きませんよ?」


「.....」


そもそも14歳の女の子がこの場所に居るんです。

何もする気が起きないと?

それはムカつきますねぇ逆に。

とニヤッとしてスカートをヒラヒラさせる七色。

その首元を掴んだ。

まるでデータで邪魔な物をゴミ箱にインストールするかの様に。


「何するんですか!思った以上に怪力ですねしかも!」


「何だお前は。重たいのか。太っているのか」


「失礼ですねぇ!!!!!!!!!?」


「.....じゃあ今直ぐにでも出て行ってくれ。俺は申し訳ないが.....」


「本当にムカつきますね。.....あ。そうだ〜?私がこの場所に居る目的を知っていますか〜?」


口元に手を添えてニヤニヤしながら俺を見てくる七色。

何だコイツは。

はらわたが煮えくる訳じゃないが腹が立ってくるな。

この様な言い方をずっとされると。

考えながら見ていると。


「.....噂によると私達は貴方のお嫁さん候補らしいですよぉ?.....まあ父様の話を盗み聞きしただけですが〜」


「.....噂だろ。.....下らない。.....そもそも跡継ぎに俺が選ばれる訳が無い。.....出て行け」


「もー!!!!!」


そしてそのまま煩い七色を追い出した。

それから俺は本を読み始める。

参考書などを、だ。

因みに俺だが。


一応、人を助ける仕事に就きたいと思っている。

何故かと言えば簡単そうだから。

それ以外に.....は。

何でか分からない。


下らないのにな、と思いながら。

人を助ける、か。

あの医者は輸血の時に妹を助けなかった癖にそんな職業に就きたいとはな。

俺は考えながら.....自嘲気味に笑う。


「下らない。最高に.....」


そうしていると。

カーテンで隠れているバルコニーから音がしてきた。

コンコンコンコンとかなりしつこく、だ。

鳥にしては煩過ぎる。

今は4月なのに木でも穿っているのか?


何だ一体、と思いながら俺は苛立ち混じりに悪態を吐きながらカーテンを開ける。

そして驚愕する。

何故かと言えば.....そこに。

ムスッとした様な顔の七色が居たから、だ。

何だコイツ.....何処から来たんだ。


「開けて下さい。そもそも卑怯ですよ。ドアに鍵とか掛けるなんて」


「.....お前は何がしたい。煩いんだが」


「私がそもそも貴方の側に居るの.....何故か知っていますか♡」


「.....知らない。.....じゃあな」


俺はそのままカーテンを閉めて鍵を改めてかけた。

だがコンコンコンコンと窓に対してノックをしてくる七色。

何だかふざけているのだろうけどイライラし始めた。

あまりにもしつこい。


だが気持ちを抑える為に深呼吸してそのまま小説に没頭する。

そして30分が経って気が付いたが。

そういえばしつこいノックの音が消えたな。

俺は考えながら本を静かに閉じてからそのままカーテンを開ける。

開け放つとは言わないが少しだけ荒く、だ。


「.....?!」


「スースー」


バルコニー。

そこには.....丸まってスヤスヤと寝ている七色が居た。

俺は眉を顰めながら盛大に溜息を吐いてそのままカーテンと窓を閉める。

のだが.....。

このまま風邪を引かれて冨樫さんに迷惑を掛けるのもな、と思い。


俺は七色を抱えてからそのままベッドに寝せた。

何で俺がこんな面倒臭い事をしなくてはならない。

と思いつつ七色を睨んでいると。

七色は一筋の涙を流した。

それからこう寝言だろうが言う。


「.....まま」


と。

俺は見開きながら.....その顔を暫く眺めていた。

そういえばコイツらの母親はどうしたんだ、と思いつつ。

俺は顎に手を添えて考えた。

聞いてないんだが.....。

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