蘇った死神に愛された者に祝福を
「殺せ殺せ!」
鹿山の部下達が向かってきて、手に持っていた鎖鎌で先陣を切っている人達を回し切った。
「ギャァァァ!」
鹿山の部下達が怯んだ隙を私は見過ごすこと無く、目の前の部下達を切り裂いた。
敵を殺していく内に鹿山と轟の姿が見えてきた。
1番近い轟に向かって鎌を飛ばし、首元の後ろまで行き、鎖を引いたが轟は素早く避けた。
私は舌打ちをして、敵のナイフを取り、轟に向かって投げたが、部下を盾にして防いだ。
「どうやらゲスは抜けてみたいだね」
吐き捨てるようにそう言うと轟は鼻で笑った。
「人を殺して飯を食う奴がゲスとは言われたくねぇな」
「確かにそうだね」
私は鎌を握りしめて、向かってきた部下達を切っていった。
轟や鹿山に攻撃をしようとしても部下達が邪魔をしてきて、全然攻撃ができない。
もし逃げられたりしたら、また同じような、いや、それ以上になってしまうかもしれない。
そう思ってると、いつの間にか囲まれていて、私はポケットから煙玉を出し、床に叩きつけた。
「前が見えねぇぞクソが!」
部下達は混乱している中、私は部下達を後回しにして、轟との距離を縮めて首に鎌を振った時、「バンッ」っと銃弾が響いた。
銃弾が響いたと同時に私の左腕が撃たれた。
私は叫ぶのを歯で食いしばって我慢し、距離をとった。
「ハァハァ、油断したよ」
私は銃弾が飛んだ方向を睨みながらそう言った。
「油断は良くないな」
鹿山は銃を手で回しながらそう言い、笑みを浮かべた。
私は右手にある鎌を握りしめ、攻撃をしようとした時、鹿山が天川さんに銃口を向けて私は動きを止めた。
「動いたらこいつをあの世に送る」
その言葉を聞き、私は歯を食いしばり鎖鎌を握りしめた。
「後ろ貰った!」
鹿山の部下が、私の後ろにおり鉄パイプを振りかざしてきた。私は防ごうでしたが、鹿山の言葉を思い出し、抵抗する事なく鉄パイプが頭に当たり、私は床に倒れた。
天川春水視点
顔を布で縛られ体をロープで縛られて身動きが取れなかった。
すると誰かが布を解いてくれた。
目を開けるとそこには、頭から血が流れていた春川さんが倒れていた。
「は、春川さぁぁぁぁぁぁん!」
嘘だ、こんなの嘘だ。春川さんがそんな、そんな有り得ない。早く助けないと!
そう思ってると、体を動かすと体は椅子と一緒に床に倒れた。
鹿山屈んで僕の髪を掴み、目を合わせた。
「辛いか?悲しいか?苦しいか?だがな、お前が思ってるように俺もお前の事が憎いんだよ。だからお前にも俺と同じ奪われた側の気持ちを味あわせてやるよ」
「奪われる側?どういうことだ?」
「そうだったな...」
鹿山はそう呟き、僕の髪を離した。
「記憶を無くしてたんだな、忘れてたよ」
薄笑いをしながら、僕から離れた。
「そんな事僕にとってはどうでもいい!とっとと解け!早く春川さんを助けないと!」
「春川さん、春川さんって随分と大切にしてるらしいな?」
鹿山は嘲笑うように笑い見下す目で見てきた。
「何が言いたいんだお前?」
「はん、殺し屋同士が互いを思いあうとは反吐が出るってことだ」
「殺し屋同士...だと?」
「そうだ。お前は元殺し屋なんだよ」
「なん...だと...!何を根拠に!」
「それはだな」
鹿山はストップを脱ぎ、背中を見せた。
その背中は刃物で切られた大きな傷があった。
「見ろこの傷を...この傷は3年前にお前が俺につけた傷だ」
「僕が...お前に...?」
「嗚呼、そうだ。そしてお前は3年前に俺の仲間達をその手で殺したんだ」
鹿山は睨みながらそう言った。
僕は鹿山の言葉を疑った。僕が殺し屋であいつの仲間達を殺しただと?そんな言葉信じられない。声を出そうとした瞬間、身に覚えのない記憶がフラッシュバックした。
その記憶は複数の人が血塗れで倒れていて、僕の手には血がついた刀を持っていた。
なんなんだこの記憶は?一体いつ僕はこの光景にいたのだ?
「思い出したか?」
鹿山は僕との目線を合わせて聞いてきた。
「その表情、少しは思い出したようだな」
「...」
「無言か、まぁいい。思い出そうが思い出さなくても別にいい。お前とあの女を殺す事には変わりはない」
「ま、待て!」
鹿山は拳銃を持ち、春川さんに銃口を向けた。
「や、やめてくれ...お願いだ...やめてくれ!」
「無駄だ、お前は俺の仲間を殺した。同じ苦痛と憎しみを噛み締め死ね」
鹿山は引き金を引こうとしたその時、けたたましい爆発音が辺りを響かせた。
「見つけましたよ春川さん!」
声がした方を見ると、そこには4人の男女がスーツ姿をして立っていた。
「チャン静を返してもらうよ!」
ギャルの女性が笑みを浮かべて鹿山の方に向かい、続けて他の人達が向かった。
スーツ姿をした男女が次々と鹿山の部下を倒して行った。凄い、百もいた敵が次々と倒れていった。
「どうします鹿山さん?」
「どうするもこうするも殺すしかないだろ。どの道あいつらを殺すのだから」
鹿山の近くにいた仲間がスーツ姿のした小柄の女性が銃でその男の頭を撃ち抜いた。
「そこをどきなさい!」
小柄の女性は発砲しながら、春川さんの方に向かった。
「大丈夫ですか!?春川さん!」
小柄の女性は涙目になりながら春川さんの頭にハンカチを抑えて、首元に手を置いた。
安堵した表情を浮かべて、拘束された僕のロープをナイフで切った。
「そこの人、私が通路を開けますので春川さんをお願いします」
「わ、分かったありがとう」
僕は春川さんを抱えて、小柄の女性の後ろに歩いて工場から出た。
工場から出て数分、森の中に歩いていた。
どうやらあの工場は山の中にあったらしい。
「あま...かわさん...?」
「春川さん意識が戻ったんですね良かった」
「...ださい」
僕が安堵していると春川さんは何か呟いていた。僕のその言葉に耳をかけた。
「私をここに置いて逃げてください...」
その言葉を聞いた時、僕は目を見張った。
「どうしてだ、このまま一緒に逃げよう」
すると春川さんは首を振った。
「だめ...私達の後から...複数の足音が...こちらに向かって...来るのです...だから...貴方だけでも逃げて...」
「ダメだ!そんな事!何か策があるはずだから!だから...」
「貴方に何が出来るのですか...?」
春川さんは僕の体を突き放した。
「貴方如きが何が出来るの!」
春川さんの声は怒気がはらんでいた。
「無力の貴方が何が出来るの!戦力にならない足手纏が策があるなど戯言を言うんじゃない!とっとと行け!」
春川さんは怒気をはらんだ声で僕を睨んでいた。
「分かったよ...」
僕は春川さんに背中を向けて、最後の言葉を口に出した。
「春川さん、今までありがとう。とても楽しかったよ」
僕はそう言い森の中に走っていった。
春川静海視点
嗚呼最後の最後に何してるんだろう私。最後くらいキスやお礼の言葉1つも言わず暴言を言ってしまうなんて、今までの努力が水の泡だよ。けどいいか、どうせ死ぬんだ。私の事嫌いになって他の人を好きになってくれれば、それで良い。そう思ってると頬に暖かい何かを感じた。
「あれ?なんでだろう?涙が出てくるよ」
頬についた涙を手で拭うと、奥から鹿山と轟と数十人の部下達が現れた。
「天川はどこだ?」
「さぁね、私を置いてどこかに行ったよ」
「そうかまぁいい、後で殺せばいいか」
鹿山は指を鳴らした時、部下達が襲いかかった。私は決意を決めて鎖鎌を出した時、背後からナイフが飛んできて、部下に当たった。後ろを見るとそこには天川さんがいた。
天川春水視点
僕はひたすら走った。あいつらから逃げる為に。春川さんの言う通り僕は無力だ。何も出来ない、力になれない、だから逃げた。策もないのにあると言うとか馬鹿もいい所だ。
そう思ってると、僕の肩に何かが刺さった。
「グァァァァァ!」
熱い痛い痛い、なんだこの痛さは。そう思いながら肩に刺さった物を抜いた。
すると目の前に武器を持った2人がいた。
「やっと見つけたぜ」
「手間掛けさせやがって」
赤髪の男は僕の腹部を数回蹴った。
「おい、やりすぎんなよ。俺のも残しとけよ」
「分かってるよっと、さて少し遊ぼうかお兄さん」
赤髪の男はナイフを取り出し僕に向けた。
殺されると思った時、月の反射で光が目に当たった。
その瞬間全てが思い出した。3年前の記憶全てが蘇った。
「おい、何ぼけっとしてるんだよ!」
男はナイフを先を向けて刺そうとした時、俺は男のナイフを持った手首を掴んだ。
「すまんが遊んでる暇ないんだ」
手首を強く掴むとナイフを離し、そのナイフを持ち男の首を切り、もう1人の男にナイフを頭に投げ飛ばした。
「早く向かわないと」
そう呟き、ナイフを持ち春川の方に向かった。
来た道を走っていくとそこに春川を襲う奴らがいて、そいつらに向かってナイフを投げたて即死させた。
「待たせたな春川」
「天川...さん...」
春川は驚いた表情をしながら俺の顔を見た。
「どうして、ここにおるの...」
「お前を助けに来たのと鹿山を殺すために来た」
俺は鹿山を睨みつけた。すると、鹿山は笑みを浮かばせた。
「嬉しいねぇ、もう一度お前と殺し合いできるとはなぁ。血海の死神よ」
「血海の死神...?」
「気にするな。どこかの馬鹿がつけた名だ」
春川はこくりと頷いた。
「さて、一瞬で終わりにするか」
「おいおい、一瞬とか言うなよ。ゆっくりとー」
鹿山が話している途中に俺は春川が持っていた鎖鎌を盗み、鹿山の首を切った。
そして首の無い鹿山は倒れていった。
それを見た鹿山の横にいた筋肉質の男が銃を出そうとした時、鎖鎌で首を切った。
続いて部下共を鎖鎌を飛ばして殺した。
「これで終わった」
そう呟いたと同時に俺は地面に倒れた。久々にあんなに動いたから疲れた。そう思ってると春川が何か叫んでいた。言葉を聞く前に意識が遠くなっていった。
あれからどのくらい寝たのだろう?目覚めたらベットの上にいた。起き上がるとそこには春川が座りながら寝ていた。
見ていると春川は急に起き上がった。
「お、おはようございます天川さん」
「嗚呼おはよう春川」
春川はどこか不思議そうな顔をしていた。
「どうした?」
「いえ、天川さんいつもと雰囲気が違う気がして」
「気づいてたのか、その通りだ。俺は3年前の記憶が蘇ったのだ」
「そうなのですね」
俺は頷いた。
「春川、お前に頼みがあるのだが」
「は、はいなんでしょう?」
春川は真剣な眼差しを俺を見た。深く深呼吸をして春川に伝えた。
「春川、俺と共に生きてくれないか?」
そう告げると春川は顔を赤くした。
「そ、それってつまり付き合うって事ですか?」
「そうだ」
春川は恥ずかしそうに手で顔を隠した。数秒後春川は手をどけた。
「天川さん、その、これからも宜しくお願いします」
「嗚呼、宜しくな」
お互い笑みを浮かばせて、唇を重ねた。熱い誓のキスをした。
殺し屋に一目惚れされました 月葡萄 @Isabi
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