一緒に住んでいいですか?

「う、うぅ」

朝日の光で目が覚めた僕は、床から起き上がり、カーテンを全開にした。

「もう朝か」

呟くと後頭部の方から激しい痛みを感じた。

僕は後頭部を手で抑えてみたら、血はでてなかった。

ホッとしたけど何故僕はスーツ姿で床に寝ていたんだ?

昨日の事が思い出せない。確か仕事帰りにビデオ屋でホラー映画を借りてコンビニでビールとおつまみを買ってマンションに帰って行って、それから...それから...。

昨日の事を必死に思い出そうとしていると、台所の方からパンを焼く匂いが辺りを嗅がわせた。

僕は台所の方へ行ってみると、そこには昨日襲われて、僕に一目惚れをした女性が2人分の手料理を作っていた。

「あ、おはようございます。もうすぐで出来ますので座っていてください」

女性はにっこりと笑みをうかべて、僕は料理が出されるのを待って席に座った。

なんであの人まだここにおるだろう?気絶してたんだから逃げる時間はあったはずなのに、なんで逃げなかったんだろう。

そういえば、うちに無いはずの食材があったな、もしかして朝一に買ってきたのか?何考えてるんだこの人。

僕がそう思っていると女性は鼻歌を歌いながらお盆の上に、手料理とコーヒーの入ったコップを持ちながら、こっちに持ってきた。

「どうぞ、食べてください」

「あ、ああ、いただきます」

僕は料理に箸を運ぼうとしようとしたが、料理を掴むのを辞めた。

「どうかしましたか?」

「い、いやどうしたもこうしたもないよ。君は僕の命を狙ってるんでしょ、毒とか盛られてる可能性だってあるのに、警戒心も無しに食べたりしないよ」

そう伝えると彼女は僕の席に置かれた料理を小さく1口ずつ咀嚼し飲み込んだ。

そして彼女自身の料理も小さく1口ずつ咀嚼し飲み込んだ。

約5分後彼女は僕の席に置かれた料理を僕の席に戻した。

「これで疑いは無くなりましたか?」

彼女は微笑みながらそう言った。

「毒味...か...?」

っと僕が質問すると彼女はコクリと頷いた。

「そうです。私が貴方を殺しはしないと証明するために、毒味をしました。私は貴方に一目惚れしたので、少しでも信頼を得るために行動しました」

「そうなのか...」

「はい、なのでもう一度言います」

彼女はさっきより真剣な眼差しを向けた。

「私は貴方を殺しはしません」

僕は彼女の目の奥を真っ直ぐと見た。

嘘は言ってない、本当に思っている目をしている。

「そうか分かった」

彼女は少し驚き、嬉しそうな笑みを浮かべ、座りながらお辞儀をした。

「ありがとうございます。料理覚めてしまったのでレンジで温めてきます」

彼女は立ち上がり、料理が入ってる皿を持とうとした時、思い出したような表情を僕に向けた。

「もしもまだ疑ってるのでしたら、一緒にレンジまで来てください」

彼女はそういいレンジの方に向かった。僕は彼女の言葉を信じ、レンジの方に向かわず席に座った。

料理を待ってる間コーヒーを啜っていると、思ったよりも早く料理を持ってきた。

「どうぞお待たせしました」

彼女はお盆から2人分の料理を出し、一緒に手を合わせて合掌をして、料理を1口食べた。

僕は思わず目を見開いた。なぜなら彼女の料理があまりにも美味すぎて、フォークを持つ手が休まず、次々と頬張った。

「ふふ、そんなに美味しいのですか?」

彼女は微笑みながらそう聞いてきた。

僕は口の中の料理を咀嚼して飲み込んだ。

「とっても美味しいよ。今まで食べたことないほどの美味しさだよ」

そう伝えると彼女は嬉しそに喜びガッツポーズをした。

なんだか少し子供っぽいところあるんだな。

彼女は嬉しそうな笑みを浮かべて料理を取ろうとした時、思い出したかのような表情を浮かべた。

「あ、そういえば伝え忘れていました。貴方が寝ていた間、本部に貴方を殺したと報告しましたよ」

「そうなのか、ありがとう」

「い、いえ当然のことをしたまでですよ」

彼女は顔を赤くして手で口元を抑えた。

そういえば、暗闇で見えなかったけどこの人とても美人で凛とした顔つきの人だな、結構好みかも。

「あ、あの...」

料理に手をつけようとした時、彼女が話しかけてきて、僕は料理をつける手を止めた。

「どうしたんだい?」

「1つお願いを聞いてくれますか?」

「お願い?どんなお願いなの?」

僕が質問すると、少し言いずらそうな感じをしていた。彼女は深呼吸をして心を落ち着かせて、言葉を発した。

「私をこの部屋で同居していいですか?」

「え?同居ってあの一緒に暮らすって事?」

彼女は少し顔を赤らめてこくりと頷いた。

「いいですか...?」

「ちょっと考えさせてくれ」

同居か...メリットを考えたら自分のやる家事が減らせる。デメリットを考えると隣人からの目だなっと言っても、別に隣人とは仲良くはないからいっか別に。

「分かったいいよ」

「本当ですか!」

彼女は机をバンッと叩きつけた。

「あ、ああ、本当だよ」

「やった!ありがとうございます!」

彼女は立ち上がり、喜びを表した踊りをし始めた。

「お、おい、踊りはやめてくれ、隣人から苦情が言われる」

そう言うと彼女はピタリと踊りを止めた。

僕はやっていないことがあったな。

「そういえば自己紹介してなかったよね」

「そう言われてみれば、そうですね。それでは私からしますね」

彼女はコホンっと咳を漏らした。

「春川静海です。これからよろしくお願いします」

「天川春水です。こちらこそこれからよろしくお願いします春川さん」

「はい、よろしくお願いします天川さん」

僕は彼女の前に手を伸ばすと、彼女は笑顔でその手を取り、握手した。

「さぁ、また冷めないうちに食べましょう」

「ああ、そうだな」

僕は彼女の手を離してフォークを取り、料理に手を伸ばした。

「一緒に暮らす事を祝って、食べて終わりましたら、ベットの運動しましょう」

いきなり春川さんが変な事を言い、料理に喉が詰まり、むせてしまった。

「へ、変なことを言うなっと言うかダメだ、そんなことは」

そう言うと彼女は右手の人差し指と親指で円を作り口に当てて、腕を左右に振り舌を出した。

「では口にくわえるだけでも」

「ダメだ」

「先っぽだけでもお願いします」

「ダメなものはダメだ!」

僕が少し大声で言うと、しょぼんと落ち込んだ。

この人顔は清楚なのにやることがビッチだな...やっぱり同居は無かったことにしようかな...?

僕はそう思いながら料理を口に運んだ。

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