第15話 二つの月と比翼ノ鳥

「こちら00メビウス、目標座標に到達。

 堕種 ツクヨミの捜索及び、トラップの設置を

 開始する。」

今回の作戦内容は、いたってシンプルだった。

対抗陣地を天岩戸の付近に作れないなら、遠い所からの

火力支援の可能な兵器を配置した、キルゾーンを設置し

そこに目覚めた後のイザナミをおびき出し

その有利な状況下で戦えばいい。

一言で纏めてしまえば、罠を使った誘き寄せ戦術だ。

神宮いわく

『そういや、何故かイザナミの指揮下にある

 デモンズって、人にしか反応しないんだよね。』

だから、今回の兵器設置と

敵に堕ちてしまった仲間の介錯を任されたわけだが

「レミエル、お前は大丈夫なのか?」

「大丈夫、って言いたいけど

 やっぱり少し、ショックかな。」

まぁ、そうなるのも仕方ないか。

人間を守ることを存在意義として与えられ、生まれ出た

命である天使にとって、人間の敵になる。

そんな行為は、あってはならないことだからな。

「、、、中途半端な迷いを持ったまま戦うなら

 俺はお前を置いて行くしかなくなる。

 残酷だとは思うが、俺についてくるなら

 覚悟を決めろ。」

昔は、味方だった。

そんなもの、この世界では何の役にも立たない。

何かを守る為には、何かを必ず奪わなければいない。

自身の思いを貫き通すなら、相手の思いや正義を

踏みにじってでも、という覚悟がなければ

いつか、進むことすらできなくなる。

「もう一度忠告する。

 思いで鈍った刃は、お前を殺す武器になるぞ。」

そのメビウスの言葉に、レミエルは反応する。

「私は、刃じゃなくていい。

 あなたを支える杖でいい。

 、、、だから、覚悟は決まってる。」

過去と記憶を取り戻し、使命を思い出して

数週間もたたないのに、よく成長したもんだ。

「分かった。

 それじゃぁ、一仕事やってやりますか。」


=作戦開始から2時間経過=

「ビャクヤのバイタルが消えた場所か。

 ここは見るからに奇襲は出来る地形じゃない

 ってことは文字通り、想定外の出来事ってことか。」

ビャクヤが死んだその場所に降り立ち、周りを見回す。

「ホントにここで合ってるの?

 血は、確かにそこらにあるけど

 戦闘した痕跡なんか見当たらないよ?

 それに、何よりその死体がないし。」

レミエルの疑問ももっともだ。

エンドタウンは、かつて人類の生存域であったが

デモンズの度重なる侵攻によって、捨てざるを得なかった。

そんな場所だ。

だから、当時こちら側とデモンズが争った痕跡

即ち、血の一つや二つあってもおかしくはない。

だだ、おかしい所があるとすれば

「死体も、戦闘した痕跡すらもない、と。

 どうなってやがる?」

ビャクヤは、正直特異体質無しの状態の俺相手なら

勝てるだけの実力を持った奴だった。

それに他の実力者と同じく、人としての限界まで

自身を鍛え、幾度と死線を超えてきた。

だからこそ第六感、または直感

それが常人のソレを逸脱した領域まで到達していた筈。

だからこそ

「なんで、ツクヨミの攻撃を読めなかった?

 敵意が一ミリでもあったなら

 ビャクヤは気づける筈だったのに。」

可能性を潰していくと、一つの結論にたどり着く。

不意打ちによる一撃での死亡。

だからこそ、おかしい。

不意打ちなら絶対にビャクヤは気づけていた筈。

、、、ちょっと待て、もし殺意が一ミリもない状態の

不意打ちなら、どうなった?

「抜剣 大蛇 月影」

聞き覚えのある声と共に、空間が切り裂かれる。

「っ!?

 レミエル、戦闘態勢!」

地面を転がり、すれすれの所でその斬撃を回避する。

すると、目線の先には

この前倒したはずのデモンズと

全く同一の個体が、あろうことか

ビャクヤの武装、『月影』を持っていた。

「あれ、避けられたんだ。

 今度こそは、めんどくさいのは嫌だったんだけど。」

六腕の鬼、確かにあの時殺した奴だ。

でも、今此処に居るってことは、、、

イザナギの重要戦力として、蘇ったってことか。

「レミエル、合わせろ!」

「分かった、メビウス!」

「「エンゲージ!」」

その言葉と共にレミエル、メビウスの両者が

散開し、レミエルは空から援護射撃

メビウスは障害物の隙間を縫い、急速に接近した。

「開け 白の頁」

攻撃は、右の刀と少し遅れて左上の薙刀か!

メビウスは、滑り込むように超至近距離まで接近すると

自身の右から振るわれた刃は、ナイフでいなし

左上の腕から繰り出される薙刀の柄を折った。

「この至近距離なら、、、

 喰らえ、バーストファイア!」

首筋に、目いっぱいの弾丸を打ち込む。

「後は任せた、レミエル!」

そう言い、急速にメビウスは離脱すると

「了解! 

 照準ロック、電磁加速機構、最大出力。

 放て、レールカノン!」

一発の雷の様な弾丸が、ソレを貫く。

いや、正確には『貫いたように見えた』だけだった。

「、、、で、それだけ?」

爆煙の中から、人影が現れる。

首筋に無数の弾丸を打ち込まれ、それに続けざまに

雷そのモノと言ってもいいほどの、破壊力に

貫かれたはずのソレは、何事もなかったかのように

そこに立っていた。

「なっ、、、レミエル、離脱するぞ!」

ダメージを与えた筈なのに、ダメージになっていない。

つまるところ、今は手が出せない!

「分かった、早く掴まって!」

メビウスはレミエルに近寄り、その手を取ろうとするが

目の前に突如として現れた金色の閃光が

レミエルの翼を焼き、翼を失ったレミエルは

力なく、自由落下していった。

咄嗟に、レミエルの体を受け止める。

「おい、大丈夫か?!」

呼吸はある、負傷も、、、致命傷レベルではない

でも、翼だけは完全に焼失している。

離脱の妨害の為だけの攻撃、、、?

「月光、貫いて。」

その声のと共に、金色の閃光がまた宙を駆ける。

「っぶねぇ!」

見た瞬間に分かる、当たったら間違いなく

内臓も骨も関係なく貫かれて、体に大穴が空き

死に至るモノだと。

そして、俺はこの力を知っている。

金色の光、『月光』を操り

数多のデモンズを殺してきた天使。

そして、その手で相棒を殺した天使。

「ツクヨミ、昔のお前じゃ

 ないんだな。」

分かってはいた。

でも、どこかで本当は違ったんじゃないか。

そう思いたかった。

でも、その姿を見た時に、その声を聴いたときに

そんな淡い希望は消えた。

「きっと、喜んでくれる。

 こいつらを、殺したら、褒めてくれる。

 そうだよね? ビャクヤ。」

紫色の着物は、返り血でどす黒い赤に染まり

彼女の手の中には、ビャクヤだったものが

大事そうに抱きかかえられていた。

「意味の分かんねぇ鬼一匹相手ならまだしも

 ナンバーズ候補の天使まで追加とか、流石に

 シャレになってねぇぞ。」

挙句の果てにこっちは、飛べなくなった天使を

庇わなくちゃならない。

撤退は不可能、交渉も不可能

なら、殺すしかない。

「エンゲージ解除。

 ウェポンラック三番射出!」

盾でレミエルを庇い、ツクヨミの攻撃には

当たらないように、廃墟の間を駆け巡る。

「記せ 白の頁

 照準ロック バーストファイア!」

廃墟の縫い目を通過する一瞬の間に

その鬼に対してありったけの銃弾を撃ち込む。

未来を固定され、まともに銃弾を全部喰らった

鬼が無事でいるわけなかった。

それなのに、全く持って

ダメージすら負わせられていなかった。

前と何が違う?

装備も何もかもこっち側は全部同じ

、、、となると、あの個体自体のパワーが上がった?

いや、それにしてはあまりに強すぎる。

ダメージを負わせても突破できないならまだしも

ダメージすらなかったことになっているような

今の状況は、あまりにも説明がつかなさすぎる。

「だから、痛いなぁ!」

無作為に、斬撃が全方向に放たれる。

流石にこれは、、、回避しきれない!

そう判断したメビウスは、盾の後ろに無理やり

レミエルを隠した後、ナイフを使い

その斬撃をいくらか打ち消すが、絶えずに繰り出される

その斬撃全てを打ち消すことなどできるわけがなく。

たちまち、切り傷だらけになり、壁に体が打ち付けられる。

そして、そこに間髪入れずに

金色の閃光が撃ち込まれる。

まずい、、、アレを使うか?!

でも、あれは、、、

「クッソ、一か八かだ!」

その時だった。

「今、アマサギの名を借り

 ここに、誓う。

 私はあなたの盾となり、剣となり

 そして、翼となりましょう。」

空を切り裂きながら、自身の目の前に

白い翼のようなモノを纏った、何かが着地したのは。


「やぁやぁ、元気にしてるかい?

 籠鳥くん。」

元気なわけがない。

私の人を傷つけたくない、そんな願いは

叶ったけど、自分が徐々に壊れていくこの感覚を

味わいながら、生きてるなんて

そんな状況で、元気になれるわけがない。

「まぁ、元気なわけないよね!

 だって君、このままじゃ死ぬってわかってるんだろ?

 それとも、彼に会えないのが

 そんなに寂しいのかい?」

目の前の男は、私の心の中をまるで見透かしたかのように

そう語る。

「私は、こうなる筈だった。

 だから、もう、いいの。」

本心だった。

本当は、あの温かい人に

私は殺されて、それで終わりの筈だった。

それでよかった。

今まで、私が求めていた

本当の温かさを持っている人を、最後の最後に

見つけて、愛すことすらも許してもらえたから。

「君は、死ぬからっていうどうでもいい理由で

 死神君、いや、新宮 友也を諦めるのか?

 ん~、それじゃぁ僕は困っちゃうな~。」

死ぬからって、どうでもいい理由?

そして、諦める?

本当は、私だって、、、あの人の

温もりが、欲しかった。

でも、もう、、、全部遅いのに。

「ん~、やっぱその反応を見る限り

 もしかしてと思ったけど

 『君は、全部手遅れとでも思ってるの?』」

つい、声が漏れる。

「え、?」

「お、やっと話をまともに聞いてくれた。

 さてさて、そんな君に二つお知らせがあります。

 聞きたいかい?

 まぁ、聞きたくなくても言うんだけどね。」

その男は、とびっきりの邪悪な笑みで

そう言う。

「ひとーつ。 

 このままだと、君の愛する友也、、、メビウス君は

 死ぬよ?」

嘘だと思いたかった。

でも、生まれついたときから、人の心を感じれる私には

その言葉が、嘘には見えなかった。

「一つ目のニュースで絶望するのはまだ早いよ?

 ふたーつ。

 君には、彼を救う方法がある。

 ついでに、君が延命して

 友也の願いを叶えることもできる。」

「、、、それって?」

なんで、あの人『トモヤ』を守ろうとしているのかは

私にも、あまり分からない。

でも、一つ確実に言えるのは

あの温かい人を、あの心を、失いたくなかった。

他の温かい人じゃダメ、他の心じゃダメ

どうしても、あの人と、あのココロがいい。

「おお! 食いつきがいいね。 

 いいよいいよ、そういうのは。

 さてさて、話すとするか。

 まず君の魂は、ふしーぎなことに

 デモンズから、天使のソレへと性質を徐々にだが

 変えていってる。

 だから、僕たちが作ったいわば『人造天使』の

 中に、魂を移し替えて

 君は、天使として生まれ変わることができる。」

「私が、天使に?」

神宮は、コクコクと頷く。

「そもそも、デモンズと天使の魂なんて

 そんなに違わないんだよ。

 一つ違うところは、誕生した時に初めて知った感情が

 負の感情か、正の感情か。

 ただそれだけだった。

 だからこそ今、正の感情に傾いて

 新宮 友也という人間を守る。

 そんな天使の存在意義に近い決意を

 抱き始めている君の魂は、天使のソレに

 近い特性に変化している。」

私が、人を守る?

「私は、人を、殺してきた。

 守ろうとしたことなんて、ない。」

私が直々に手を下さなくても

私が殺したも同然の人たち。

そして、私は、、、誰も守ろうとしてない。

「ありゃりゃ、おかしいな。

 友也君を、愛してるのに

 守ろうとはしてない、と?」

愛してる、愛してる、、、だから

失いたくない。

失いたくないなら、どうすればいいの?

「失いたくないものなら、守るはずだよ、ね?」

そう言い、その男は

私の顔を覗き込む。

最初から分かっていたのかもしれない。

気づいていなかっただけで。

、、、結論は出た、弱音もはいた。

でも、罪は清算できてない。

それでも、彼だけは失いたくない。

だから

「お願い。

 トモヤを、守るだけの力を

 私に、ちょうだい。」


『やぁやぁ死神くん。

 そこいる人造天使、その識別名は【アマサギ】

 中身は、籠鳥君なんだけどね。

 君を助けたいって言うんで、天使として

 生まれ変わった籠鳥君なんだけど

 僕からちょっとしたプレゼントとして

 籠鳥なんてしけた名前じゃなくて、別の名前に

 いじらせてもらったよ。

 その名も【湖鳥】、湖を羽ばたく鳥。

 どうだい、美しい名前だろ?

 んまぁ、長々と話しちゃったけど

 僕は、約束を果たしたからあとよろしく~

 あ、そういえば。

 その子に、虎の子の武装の【蒼月】を持たせてあるから

 上手く使うように。』

自身の目を疑う。

耳を疑う。

でも、目の前にいる彼女は

間違いなく、【籠鳥】、、、であって

そうではなかった。

白い紙の様な羽根で作り上げられた、

仮初の一対の翼を持ち、瑠璃色の服と

黒い髪と深紅の瞳を持った天使。

容姿は所々違うが

その声は、間違いなく

「トモヤ、あなたを守りに、もどってきた。」

【籠鳥】のものだった。

ただ、一つ違う事があるとすれば

籠の中の鳥ではなく、湖を羽ばたく鳥として

生まれ変わっていた事だろう。

「、、、湖鳥、後ろからくるぞ!」

だが、こちらの事情など知った事かと、金色の閃光と

無数の斬撃が襲い掛かる。

「白鶴(シロヅル)展開

 守って。」

白い紙の様な見た目をした、鋭利なひし形の羽根が

仮初の翼から一枚一枚分離し、全ての斬撃と

金色の閃光からこちらを守る、盾へと姿を変える。

「私は、あなたと、あなたの心が

 多分、好きなんだと思う。

 だから、これからも、愛させてくれますか?」

自身と同じ境遇、辛くても断ち切れない運命

それを断ち切ったのは俺だ。

なら、最後までとことん付き合ってやるのも

俺の責任、か?

「もちろん。

 と、言いたいところだが。」

意を決し、自分の体と心を奮い立たせる。

『そうそう、今思い出したんだけど君の戦ってるソレは

 【酒呑童子】っていう名前らしくてね。

 前に戦った時は、不完全体だったらしいけど

 今は本来の能力である

 配下と四天王の計五つ分の魂にダメージを

 肩代わりさせる能力が使えるらしいよ。

 だから、計六回殺さなきゃならないけど

 頑張ってね~。』

そんな大事な時に、意外と重要な情報を持った奴が

茶々を入れてきた気がするが気のせいだろう。

「とりあえず、目の前のこいつらを片づけるぞ!」

「命令、了解。」

今だけはまだ、死ぬわけにはいかない。

それに、助けに来てくれたのに

目の前で死にました、とか。

そんな無様な死に方は出来ないからな。

「合わせられるか?」

「ん、もちろん。」

二人の声が重なる。

「「エンゲージ。」」

感情や、記憶が流れ込んでくる。

辛い、辛い、運命に縛られていた時の。

でも、今はそんなものは消え去っていて

ただ何かを切望している。

そんな思いが伝わってくる。

「これが、エンゲージ。

 心のつながり。

 、、、やっぱり、温かい。」

誰よりもバケモノに近く、誰よりも冷酷だから

死神と呼ばれた俺の心が、温かいなんて

そんなことを言われる日が来るとはな。

まぁいい。

「何か自分の中に力が形成されていくのを

 感じるか?

 もし、それがあるなら

 頭の中の言葉を並べて、その力に形を与えてやれ。」

その言葉に、湖鳥はコクリと頷く。

『私は鳥。

 籠の中しか知らなかった、小さな鳥。』

詠唱が始まった、ってことはあたりか!

なら、邪魔させるわけにはいかねぇな。

メビウスは、湖鳥が降り立った場所に突き刺さる

蒼い剣、【蒼月】を引き抜き、構える。

『私に近づく人は緋色の海に沈み

 それ故に人は、私を恐れた。』

突如、メビウスの指から湖鳥に赤い糸が伸び

徐々に、湖鳥の背中に夕暮れ色の何かが形成されていく。

それと同時に、自身の血が吸われているのを感じる。

「代償系能力か。

 、、、いいだろう。

 ありったけもってけ!」

そう吠え、迫りくる斬撃を切り伏せ

金色の閃光は、内部機構を展開し

障壁で防ぐ。

『それでも、私を籠の外に連れ出してくれるなら

 あなたと共に、飛び立ちましょう。』

背中の赤い何かが、もう一対の翼の形を取り始める。

白鶴の操り方が、頭に徐々に流れ込んでくる。

『あなたを連れて、遙か遠い遠い空まで。

 羽ばたけ、空ヲ望ム比翼!』

最後の一説が完成された時

夕暮れ色をした半透明の翼は完成し

メビウスの指先から伸びる糸は

まるで血がしみ込んでいるかのように赤く滲む。

ただ、不思議と痛みはない。

不安もない。

ただ一つ変わったことがあるとすれば

湖鳥が白鶴と呼んでいたソレの扱い方が

自身の体の一部のように直感的に

分かるようになったことだけだろうか。

「こうだったか?

 白鶴 展開」

その俺の言葉に呼応し、羽が宙を舞う。

「私は、この翼があるから、白鶴は自由に使って。」

「分かった、じゃぁ、一気に畳みかけるぞ!」

湖鳥の、夕暮れ色の翼から、無数の赤い糸が

射出され、ツクヨミと、その鬼を縛る。

その隙に、鬼に急接近したメビウスが

青い剣で、その体を両断する。

「痛い、痛いなぁ!」

拘束されているとはいえ、酒呑童子も全く

反撃できないわけではないらしく。

両断した次の瞬間に

拘束を脱し、嵐のような斬撃を繰り出す。

「行け! 白鶴、相殺しろ!」

それが見えた瞬間、離脱と共に

白鶴を展開し、それを全て相殺する。

湖鳥が抑えてくれてるとはいえ、ツクヨミが

いつまで大人しくしてるかは分からない。

そして、今まで蓄積したダメージは

こいつを間違いなく三回は殺しているはず、、、なら!

「湖鳥! こいつはいいから、ツクヨミを

 抑えててくれ!」

「ん、了解。」

姿勢を低くし、蒼月を自身と並行に構え

壁を蹴り、地面スレスレを滑空し

自身の間合いに持ち込む。

「舐めないでもらえるかなぁ!?」

拘束が解かれた酒呑童子は、両手に持った二つの刀と

背中から伸びる四つの腕で薙刀を振りかざす。

「言い損ねてたが、月影は

 ビャクヤのモノだ。

 お前ごときが持ってていいモノじゃない。

 身の程をわきまえろ、三流が。」

腕を両断し、ビャクヤの剣『月影』を

奪い取る。

「白鶴、切り裂け!」

離脱と共に、白鶴を真上から降り注がせる。

それは、小さな刃の雨のように

酒呑童子の体をズタズタに切り裂く。

「これで最後だ!」

白鶴の攻撃で怯んだ一瞬に、視界から姿を消し

月影と蒼月の二振りを構え、すれ違いざまに

その体ごと真っ二つに切り裂く。

「よし、あとは、、、」

そう言い、メビウスはツクヨミの方に振り返る。

「ツクヨミ、せめて安らかに。」

月影を手に握りしめ、ツクヨミの胸を貫く。

ツクヨミは、徐々にその息を小さくし

そして、力尽きた。

「やっと、終わったな。」

「そう、だね。」

「レミエルは気絶したまんま、か。

 まぁ、いい。

 とりあえずはいったん終わったからな。

 トラップの設置は、こっから離れて

 ちょっと休んだ後にしよう。」

「トモヤの、望むままに。」

クラクラする。

流石に無理しすぎたか。

「人のこと言っといて何だが、悪い

 俺も限界が近い、かも。

 ちょっと寝るから、起きるまで

 頼めるか?」

その俺の問いに、湖鳥は微笑みを浮かべ頷く。

「じゃぁ、頼んだ、、、ぞ。」



データファイル 人造天使。

人造天使は、文字通り人間の手によって

作られた天使である。

だが、体に定着できる魂を作り出すことが不可能なために

計画は頓挫していたが、デモンズであって

デモンズではなく。

天使ではなくとも、特定の人間の味方をするという

特異性を持った魂の持ち主である【籠鳥】の

出現により、計画が完成し

人造天使【アマサギ】が完成した。

※【アマサギ】は、天使としての識別名であり

  本当の名前は【湖鳥】である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る