第11話 幕開け
「今日もいい天気だ。
だけど、こんな日に起こることってのは
大体相場が決まって、、、っと
意外と早かったね。」
まるで語り手のように口から紡がれた言葉が
一人だけの部屋に虚しく木霊する。
「さてさて、未来の彼は一体何を伝えたいのかな?」
そう言い、突如どこからともなく
目の前に出現した紙の破片を手に取り
それを開き、中身を見る。
「あれま。
未来の彼は、どうやら芳しくないみたいだ。」
その紙には、所々血が付着していた。
そして、それ以上に不気味なのは
その血がまだ乾ききっていなかったことだった。
血で汚れたその紙にはこう書いてあった。
2075年01月01日13時13分
2074年12月13日10時20分
失敗した。
全て■■の前に倒れた。
何を失敗したか?
何も失敗していない。
ただ、何もかも足りなかった。
だから今回も、■■に託す。
■■にとってのジョーカーを絶対に■り抜け。
■用の装備を、仲間を、全てを極限まで整え
その時に■えろ。
人■■■の計画を絶対に成功させろ。
■が守ろうとしているモノは
何があっても■対に■なせるな。
もし、それを■なせてしまったら
■は■■のジョーカーたり得なくなる。
怒りで前が見えず、彼女に■される。
不味い■。
もう書く■■すらも■してくれなさそうだ。
、、、最■に三つ。
彼女■身が動き出すのは、20■5年■1月0■日00■00分
■■は、■■ドタ■■に■■した■■戸だ。
コレの■も、必要なら■■せ。
そして、これが■■大事なことだ。
これの結果が、■■■■■だろうと
■■■■■だろうと。
■は■■。
「しっかりしてほしいものだなあ。
一番大事なとこが、血で見えないじゃないか。
ったく、どんなお粗末な書き方をしたんだか。」
そんな愚痴を吐きながら、その紙を丸め
ごみ箱に捨てる。
「まぁでも、あらかた予想はついてるし、、、いっか。」
そう言い、椅子をクルリと回しそこに座った後
「未来の彼の言う通りになるとしても
それを、何とか捻じ曲げるのが
この席の仕事だから、頑張っちゃうか!
んじゃま、早速だけど始めるとしよう。
仮想スクリーン展開。」
数多のスクリーンが空中に投影され
人の頭では処理しきれないような膨大な情報が
展開される。
通常なら、その情報量を見ただけで
頭を抱えるくらいだが
彼は、不敵な笑みを浮かべて
自身を鼓舞するようにこう言った。
「さてさて、残酷な残酷な運命君。
この脇役である僕を、敵に回したことを
ほんのちょっとばかりだけど
後悔してもらおうかな。」
あれから、もう一週間たった。
まだメビウス君は目覚めない。
治療の記録を無理言って見せてもらったけど
どこかが悪いわけでもないのに、何故かメビウス君は
眠ったままだ。
「どうしちゃったのかな。」
私と、ヴァルキリー達が気絶した後に
彼が戦ってくれたことだけは覚えてる。
そして、その時の彼が
人知を超えた力を発揮していたことも。
ただ、その後の事を知らないから
何で彼が目覚めないのかだけは私には分からない。
神宮さんの話によると、メビウス君が起きないのは
固有の能力の反動、らしい。
「やぁやぁ。
気分はどうだい?」
そんな時だった。
神宮がこの部屋に姿を現したのは。
「どうって、いい気分なわけないですよ。」
この人は、確かに私たちの味方だけど
やること自体は信用できない。
今回はどんなろくでもない話を引っさげてきたんだろう。
「なんで? って顔だね。
んまぁ、説明するとややこしくなるから
今回は珍しく、本題からいこう。」
「本題?」
その言葉と共に、神宮の顔が少し険しくなる。
「A&Hの象徴であり、最高峰の実力を誇る
ナンバーズである五人がいるのは知ってるよね?」
「人数までは知ってなかったけれど、、、」
「まぁ、今それはいいとして。
メビウス君が欠けてしまった今
それをチャンスと思ったのか、侵略者共の
動きが最近活発化してきているんだ。」
侵略者、、、?
あ、デモンズの事かな?
「、、、ん? ちょっと待って。
メビウス君が、ナンバーズ?」
「あぁ、知らなかったのかい?
死神君はナンバーズの頂点だって。」
「頂点って?」
「ん。
文字通りの一番の実力者って意味さ。
ま、それは今置いといて。
それで活発化してるデモンズの動きを
抑えたり、動きを把握するために
君にも出撃してもらいたい、ってわけさ。
それによって潰れた休暇を保証できるほど
ここは優良企業じゃないけどね。」
でも、メビウス君を放っておくのは、、、
私がそう思っていると、いつも通りというかなんというか
その私の考えを見透かしたかのように神宮は続ける。
「死神君は多分もう起きてるよ、アレ。
動けないし、話すことも
今は出来ないだろうけど。」
その言葉に、私は首をかしげる。
「まぁ、とりあえず
死神君が復帰するまでの代打でいいから
君だけでも、動いてほしいってことさ。
君にそこまで期待してるわけでもないし
適当に偵察してもらえれば、って感じ。
あ、因みに
君が出ないとなると、死神君を
無理やり起こすっていう
僕も望んでないことが起きるから、よろしくね。」
私は、無言で神宮を睨みつけながら
メビウス君の病室から出ていこうとする、と。
「あ、そうそう。
君たちへのプレゼントが
そのドアを出た左にあるから
何があっても絶対に持っていくように。」
そう言われ、病室を出た後に左を見てみると
ウェポンラックと、新しいライフルのような物が
目に入ってきた。
「武器があって困ることはないけど
何でこんなものを、、、?」
私はそんな疑問を持ちつつも
あって困る物ではないと、それを判断し
神宮の指示通りに、装備していくことにした。
「さーて、彼女にはああ言ったけど。
ちょっと起きてもらおうか。」
そう言い、神宮はメビウスに投与されている
点滴を引っこ抜く。
そしてしばらくすると
「、、、またアレを投与してたのか?」
明らかに不機嫌な様子のメビウスが
体を起こし、そう言ってくる。
「まぁまぁ。
君は、限定的電気信号遮断くらいして無理やりにでも
休ませないと、不完全な状態で
戦場に出ちゃうだろ?」
「だからと言って、実力不足のレミエル一人で
偵察に行かせるのは、自殺行為だって
分かってるだろ?
平常時ならまだしも、アイツが目覚めようとしてる
こんな時に。」
うんうん。
全く持ってその通り。
「その方が都合がいいだろう?」
神宮のその言葉にメビウスは、眉をしかめる。
「、、、お前まさか。」
「そう、その通り。
囮として、ちょっとばかり活躍してもらおうかな?
ってね。」
その途端、メビウスから本能的な恐怖すら感じるような
力が、解き放たれる。
「ちょっと落ち着きなって。
君が万全な状態まで回復したのを見た上で
尚且つ、君が助けに行ける状況で
囮を出した。
だから、そんなに怒るのはお門違いじゃないのかい?
彼女を殺す気なら、もう彼女は死んでるし。
君に助けさせる気がないなら、僕だって
こんなことはしないし。」
その言葉を聞いて、メビウスの様子が一人の人間が
纏っている空気のソレに戻る。
「、、、で、何をさせたいんだ? 今度は。」
「うんうん、感情で暴走しなくて助かったよ。
今回の作戦目標は
君の力の残り香を纏った彼女、レミエルを囮として
君が、倒さなければいけない相手、まぁもしくは
その相手に繋がるデモンズ。
それを見つけて、奴が完全に覚醒する前に
少しでも、能力なり正体なりを
突き止める。
まぁ、言ってしまえば
強硬偵察だね。」
その言葉を聞き、メビウスはため息をつきながらも
ベットの傍に置いてある自身の装備を点検し
出撃の準備を始める。
「次からは、もっと平和な手段で
相手の合意を取ってから
やってほしいもんだな。
、、、これは?」
そう言い、メビウスはコートの内部に取り付けられている
何かのチップのような物を指さす。
「あぁ、それはね。
君の戦闘のクセ、をもう一回把握しておきたくて
そのデータを取るための記録チップさ。」
本当はそれだけじゃないけど、まぁ説明する必要もないか。
「、、、悪用だけはしないと信じておくぞ。」
そう言い、メビウスは病室のドアに手をかける。
と、同時に何かを思い出したかのように
「籠鳥は、どうなってる?」
そう言ってきた。
「君は知ってるだろう?
僕はペテン師で、人を騙し
味方を欺きすらするけど、約束だけは守るって。」
その神宮の、薄っぺらいような
それでいて力強いような言葉をを聞くと
「、、、信じるぞ。」
その一言だけ残し、メビウスは
レミエルの後を追って出撃するのであった。
「さーて
偵察作戦と、レミエル君の戦闘経験蓄積。
そして大本命の、死神君との連携と
共鳴能力の発現のしかた。
それを覚えてくれればありがたいんだけど
どうなるか、ね。」
それ以外にも、新しい装備の製造を
ちょっと急がせないとな。
「んじゃぁ、もうひと頑張りしますか!」
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