山口智暁という男

 俺にとってともは、ちょっと変な行動をする普通の奴。ちょっとどんくさくて、放って置けなくて、もう1人の弟って感じ。

「あっくんは、すごいね」

 真っ直ぐな尊敬の目でそう言われるたび、その通りだと思ったし、もっとそう言ってもらえる事をしようと思った。俺は、単純で頭の悪い子供だった。



 あれは、4年の時。俺とともは、初めてサマーキャンプに参加した。人見知りするともは、知らない子がたくさんいるキャンプにすごく緊張してたけど、俺が一緒にいてやると、だんだんと楽しむようになった。

 ともの様子がおかしくなったのは、1日目の晩。みんなで作ったカレーを食べながら、ともは何度もその人達を見ていた。俺達より少し上、多分6年生の3人組。なんか偉そうな感じで、仲良くしたいと思わない人達。それなのに、ともはその人達を、何度もチラチラ見る。どこか困ったように、怯えたように。

「とも、どうかしたのか?」

「あっくん……」

「あの人達に、何かされたのか?」

 ふるふると首を振る。

 ずっと一緒にいたから、何かされたなんてことある訳がない。それでもまだ、ちらちらとあの人達を見る。

「とも。困ってることがあるなら俺に言え。俺が助けてやるからさ」

 小さい弟に言い聞かせるのと同じように言ってやると、ともはぱっと顔を明るくして、その後すぐ、真剣な顔でこう言った。

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