「だから、怒るのは筋違い! 焼き払うとか、滅ぼすとか物騒なこと言わないの!」

「えっ? 今なんの話を……」

「ああ、ごめんなさいね。ごんちゃんがなかなか怒りを収めないから……」

 つまり、俺と電話しながら、ごんちゃんに言い聞かせてたんだ。

「じゃああの鳥は、もう……」

「無事帰せたから大丈夫よ。すごいわね、よくがんばったわ」

「全然すごくなんか……」

「本当にすごいわよ。1人で解決出来たんだから」

「1人じゃないです。神山とあっくんと、ハチもいたから、なんとか辿り着けただけで……」

「すごいわ。ちゃんと他の人の助けを借りられた」

「えっ?」

「私も霊能者の端くれだけど、自分1人の力で解決できたことなんか、ほとんどないのよ。大体がごんちゃんの力。後は、同業者とか友人知人に協力を仰いで、なんとかって感じ。みんなそうよ。誰だって、自分1人で何とか出来たりしない。本当は、私が助けなきゃいけない立場なのに、不甲斐ないわ……本当にごめんなさいね」

「そんな……俺の方こそもっと早くに相談していたら……」

「悟が私の代わりに、山口くんを助けたってことで……いい加減に納得しなさい!」

 ごんちゃん、まだ怒ってるんだ。意外としつこい。

「あ、そうそう。少し落ち込んでるみたいな山口くんに、いいこと教えてあげる」

 俺を慰めるように、お母さんが明るい声を出す。

「今回のことで、その森の鳥と繋がりができたはず。何か困った時に、助力を頼めるはずよ」

「困った時って、どんな時ですか?」

「さあ。なければないで、その方がいいけどね。でもこういう繋がりは、多ければ多いほど、君の力になる」

 あの森の、たくさんの琥珀色の目を思い出す。今日は仲間を連れて行ったから助けてくれたけど、そうでない時も助けてくれるのかな?

「大変だったけど、悪いことばかりじゃないってことを覚えておいて。それじゃあ、おやすみなさい。遅くまでごめんなさいね」



 通話を終えても、俺はスマホを持ったまま呆然と考えていた。すごく歩き回って疲れているはずなのに、全然疲れてない。きっと森で注がれた光が、俺の体力を回復させてくれたんだ。

 終わった実感と安心が胸に満ちた途端、現実的な問題を思い出し、急いでメッセージを打ち込んだ。

『ごめん。午後の授業のノート、明日写させて』

 あっくんからはすぐに『OK』の返事が来た。

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