その夜、神山のお母さんから電話がかかってきた。

「ごめんなさい! ごめんなさい! 従姉妹の家で携帯壊しちゃって、やっと修理できて……」

「いえ、あの、大丈夫ですので……」

「本当に、ごめんなさい。大変な時に助けられないなんて……情けない……」

 神山のお母さんにそこまで謝られると、逆に申し訳なくなる。昨日まで何も言わなかった、俺が悪いのに。

「あの、本当にもう大丈夫なんで……」

「それで、ちょっと詳しく教えてくれない? その鳥、どこの何なの?」

「えっ?」

 本当に解決したのかどうか確認も兼ねて話すつもりでいたけど、こんな風に詳しく聞かれると心配になる。もしかして、まだ終わってない?

「ごんちゃんが、うるさくてね……」

「ごんちゃんが?」

「悟が何かにかじられてたって、どこのどいつがかじったんだって、憤慨してて」

「神山がかじられてた!? どこを!?」

「かじられたって言うか、ほんのちょっと霊力を取られてたらしくて。私には、全然分からない程度。なのに、ごんちゃんが『私が守ってる神山家の人間に手を出す輩は、どこのどいつよ!』て、うるさくて……」

「はあ……」

 守り神のプライドみたいなもんだろうか?

 昼休みに頭に流れ込んできた映像からそこに行くことになった経緯、それに小神池公園で見たモノまで、全部を話した。

「なるほど……かじられたんじゃなくて、自分から霊力を与えたのね。悟は無意識だろうけど」

「あれ? 神山って、霊力がないんじゃないんですか?」

 あれだけいろいろある家に住みながら何も感じない神山には、霊力が全くないと思ってた。

「誰にだって、多少はあるものよ。感じたり見たり出来るほど強くないってだけ。悟にも日山くんにもちゃんとある」

 日山も霊力を取られてたから、あんなに眠そうだったんだ。そう思うと、もっと早く相談すればよかったと、何度目かになるか分からない後悔が沸き上がる。

「省エネモードでがんばっても、その鳥、かなり弱ってたんでしょうね。見えないし感じもしないくせに、あの子、変なところで勘がいいから」

「そうですか……」

 森に戻った途端大きくなったあの姿が、あの鳥の本当の姿だったんだ。ヒナ鳥の姿でいることで、ずっと耐えてたんだ。そして、ずっと俺に助けを求めてた。見える人間が俺しかいないから。なのに俺は……

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